日本精工(NSK、 http://www.jp.nsk.com )は、耐熱性に優れる高強度生分解性プラスチックを開発した。生分解性プラスチックはすでに日用品などに多用されているが、同社では今回、転がり軸受などの構造部材ヘの適用が可能なレベルに耐熱性・強度を向上させた、高強度生分解性プラスチックの開発に成功した。開発した生分解性プラスチックは、耐熱性に優れるポリビニルアルコール(PVA)系樹脂に、強度を向上させる繊維状補強材と柔軟性改良剤を配合した独自開発の材料。この柔軟性改良剤を配合することによって、適度な柔軟性が付与され、軸受に特有の組立性も改善されている。
開発材は、生分解性プラスチックとしてよく知られているポリ乳酸より引張強度、剛性がそれぞれ高くなっているほか、融点が約200℃で幅広いアプリケーションヘの適用を可能としている。生分解性プラスチックの従来材は、120℃では短時間で急速に劣化するか、あるいは溶融して形状が維持できなかったが、開発材では120℃で1,000時間放置しても、劣化がほとんど生じないレベルまで耐熱性を向上、構造部材として実用に耐えるレベルに達している。さらに開発材は、土壌中を想定した環境で、180日で60%以上生分解することが確認されている。
NSKでは、軸受の構成部品である保持器・シールをこの高強度生分解性プラスチック製に、内部に充填されるグリースを生分解性のエクセラグリーン R NS7グリース(エコマーク認定)とし、さらに内外輪を特殊形状とすることで、低トルク化による省エネルギーを実現した「ハイレベルな環境配慮型転がり軸受」を試作、評価を完了した。この軸受は、50%の低トルク化達成で省エネルギーに貢献することが期待できるほか、100℃、10,000回転、5,000時間の耐久試験で十分な耐久性が確認できたという。