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ダイセル・エボニック、PEEK樹脂が医療機器で相次いで採用

 ダイセル・エボニックの医療グレードのPEEK樹脂「ベスタキープ Care」が、日本ケミカルスクリューの医療機器向けねじと山田精工が開発中の高機能プラスチック製注射針に採用された。

 医薬品製造装置、分析機器、検査装置などをはじめとした医療機器・装置には金属製のねじが多用されているが、金属製のねじはイオン溶出による汚染リスクがあり検査結果への影響が懸念されていた。

 これに対し、PEEK樹脂「ベスタキープ Care」で成形したねじは、イオン溶出による汚染リスクの懸念がなく検査結果への影響がない。 また、ベスタキープ Care はUSPクラスⅥ試験に合格しているため、患者の体に短期的に接触する医療機器へも安心して使用することが可能となっている。

 さらに、優れた耐薬品性と耐オートクレーブ特性により、120℃を超える高温下での滅菌工程にも耐えうる信頼性の高い素材との評価から、日本ケミカルスクリューの医療機器向けねじへの採用が決まったもの。

 ダイセル・エボニックでは、ベスタキープⓇCareが機器や装置の製造工程で要求される絶縁特性も備えているため、医療用機器・装置そのものだけでなく、その製造工程での採用も見据えて展開していく考えだ。
PEEK樹脂製の医療機器向けねじPEEK樹脂製の医療機器向けねじ

 ベスタキープCareはまた、山田精工が開発中の高機能プラスチック製注射針にも採用された。

 PEEK樹脂の特長を活かして高い靭性を備えた注射針は、精密な金型加工技術と成形加工技術による極細注射針を実現しつつ、射出成形による高い生産性を実現。 また、デザインの自由度に優れるため複雑かつ様々な形状の生産が可能となり、多針化や、先端部の形状を調整することにより、穿刺時の「痛み」の緩和や薬液注入量のコントロール及び神経へダメージを与えにくいなどの利点を持つ。

 生体適合性を備えた医療用グレードのPEEK樹脂を使用することで、より信頼性の高い製品の開発につながるとともに、点滴用留置針やカテーテルなど短期的に体内に埋設する用途にも適用できる。

 PEEK樹脂製の針はまた、金属を全く使用しないため金属アレルギーを引き起こすことなく安全に使用できる。使用後はプラスチックごみとして廃棄できるため、金属針のように厳重な廃棄工程の管理を必要としない。また、非磁性であるポリマー製のため、今後普及が進むと見られるMRIなどの診断装置の使用時にも対応できる。

 同社ではまた、PEEK樹脂の持つ優れた耐薬品性と耐オートクレーブ特性により、120℃を超える高温下での滅菌工程にも耐えることから、超精密加工技術との組み合わせによって、その他の医療用機器・装置などへの展開も期待できると見ている。