三菱マテリアルは、今後大幅な増加が見込まれるレアアース磁石のリサイクル需要に対応するため、レアアース回収精製技術を開発した。今後パイロット試験を実施し、将来的な事業化を検討していく。
この技術は、乾式処理と湿式処理を組み合わせた工程を持つことによって、廃家電から回収されるモーター内のローター(回転子)から高効率にレアアースを回収精製できるようになった。
従前のプロセスではローターから磁石を取り出すために消磁作業が必要だったが、今回開発した技術ではローターのままで処理が可能にったという。また、フラックスとしてケイ酸ソーダを用いることで、大気中でも鉄合金が酸化することなく、レアアースと鉄をほぼ完全に分離可能となった。さらに、レアアース含有スラグは水に溶けやすいため、湿式工程でレアアースの全量を濃縮して回収することが可能となった。
小型化、省エネルギー化が進む家電製品では、レアアース磁石を使った高性能、高効率のモーターの搭載比率が年々上昇している。自動車分野でも、レアアース磁石を使った大型のモーターが搭載されたハイブリッド自動車等の普及が進んでおり、今後リサイクル需要が大幅に増加する見込み。そのため、三菱マテリアルグループの家電リサイクル事業で回収できるレアアース磁石は、10年後には年間数十トンとなる見込み。そのレアアース磁石には、重量で約30%のNd (ネオジム)、Pr (プラセオジム)、Dy (ジスプロシウム)、Tb (テルビウム)などが含まれている。特に重希土類元素といわれるDy、Tbは、資源の偏在が著しく、採掘量が少ない希少金属。レアアース磁石の回収・リサイクルは、そうした希少資源の有効活用につながる。