物質・材料研究機構(NIMS)環境・エネルギー材料部門 ナノフロンティア材料グループ 高野義彦グループリーダーの研究グループと愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター (GRC) 入舩徹男センター長の研究グループは、金属のように電気を通す超伝導ダイヤモンドを、世界で一番硬く割れにくいナノ多結晶ダイヤモンド (ヒメダイヤ) 上に電極として微細加工することにより、新しいダイヤモンドアンビルセル (DAC) を開発した。
この開発によって、数十μmの小さなサンプルに4本の電極をつけるという熟練を要する技術が必要なくなり超高圧下での電気抵抗測定がとても容易になった。さらに、電極もダイヤモンドにすることで繰り返し利用が可能となり、高圧下物性測定の作業効率や経済性が格段に向上した。
一般的なDACは対向する二つのダイヤモンドのキュレット面を押しつけることにより高圧力を発生させる装置。より高い圧力を発生させるためには、より小さなキュレットをもつダイヤモンドを用いる必要がある。数十万気圧の超高圧を発生させるためには、直径400μm程度の小さなキュレットを用いる。このため、サンプルの大きさは100μm程度となり、作業は非常に難しくなる。百万気圧以上の高い圧力発生ともなれば、サンプルサイズもさらに小さくなり、もはや電極を手で取り付けるのは困難を極める。
そこで、超伝導ダイヤモンド電極を電子線リソグラフィー法5を用いてアンビル上に微細加工した。リソグラフィーを用いて電極を作製するためには、平板状のダイヤモンドが好都合であるため、平板状のダイヤモンドとキュレットを備えたダイヤモンドとを組み合わせ、新しい形状のダイヤモンドアンビルセルを考案した。
ダイヤモンドアンビルの構造。新しいDACは下側アンビルにヒメダイヤを用い、その上に超伝導ダイヤモンドで電極を加工した。従来型は2つのとがったキュレット部分を押し当て圧力を発生させるが、電極は別途キュレットとガスケットの間に差し込む必要がある。