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 ホンダがこのほどヒューマノイド・ロボット「アシモ」について、大阪大学と共同でパートナーロボットとしての研究に取り組むとのニュースを読んだ。なるほどヒューマノイドロボットとしては、人間のパートナーという役割はうってつけだ。盲点だったな、と思った。以前ホンダの広報に、アシモにはどういう活用が見込まれるのか尋ねたことがある。答えは「展示会やデパートの受付係やアトラクション、それから夜警もあるかな」とのことだった。どうしても人間の生理上、夜間勤務は効率が落ちる。こういう役こそロボットが担うべきフィールドだろう、と。ホンダは次世代のモビリティーとしてロボット開発に着手しただけに、そのころは「人間の足がわりになる用途」を重点的に模索していたのかもしれない。

 アシモの名前は、作家アイザック・アシモフ博士に由来する。氏にはロボットの登場する著書が多く、作品の中でかの「ロボット3原則」を打ち立てた。その1、人間に危害を加えるべからず。その2、人間の命令に服従すべし。その3、以上の原則に反しない限りにおいて、ロボットは自己を守るべし。著作「われはロボット」は"I,Robot"として映画化されているが、このうち第3の原則により、地球を滅亡へと導きつつある人間から自身を守り、人間に代わり世界を動かそうと企図するロボットのストーリーである。ロボット嫌いのデル・スプーナー刑事(ウィル・スミス)がU.S.ロボティクス社のラニング博士の謎の死から新世代ロボットの関与を疑い、追いかけるというサスペンス&アクション仕立てとなっている。もしロボットが自律的に判断し行動できたら…物語は、3原則に縛られない進化したロボットの無気味さを描いた。

 さて現在、市場にはセラピーロボットやホビーロボット、ヒューマノイドロボット、ホームセキュリティロボット、コミュニケーションロボット、介護用ロボット、産業用ロボットと多くのロボットが投入されているが、開発者はいずれも3原則を意識しているようだ。ロボットが転倒して人間にケガをさせることのないよう、メカとセンサー技術による転倒防止機構があり、それ以前にガンダムみたいに背の高いもの、巨大なものは作らない。企業の社会的責任や安全保証ということはもちろんあるだろうが、宇宙飛行士がアーサー・C・クラーク氏を崇拝しているように、ロボット開発者にとってアシモフ博士の作った3原則は、遵守すべきバイブル、アンタッチャブルな聖域なのだろう。