三菱重工業( http://www.mhi.co.jp )は、フロアタイプの横中ぐりフライス盤の新シリーズ「MAF-C」を開発し、中ぐり主軸径150mmの「MAF150C」および180mmの「MAF180C」を製品化した。構造体の剛性と主軸出力を大幅に高めるとともに、独自のテンションバー式バランス機構を採用することで、強さ・速さ・精度ともにクラス最高レベルの切削力を実現した。
同リーズは、従来機MAF-RSシリーズのフルモデルチェンジ機として開発された。両機種とも、主軸を支えて2段方式で繰り出されるラム※1は420mm角とコンパクトで、狭い空間の中ぐり加工は奥行き2250mm(ラム:Z軸1250mm+主軸:W軸1000mm)まで可能。主軸最大出力は連続55kWと従来機比1.8倍強で、ワークが高さ(サドル上下:Y軸)5000mm(オプション)の位置でも、ハイパワーで安定的に加工できる。
主要構造体はすべて鋳物化し、全摺動面に静圧案内面を採用。特にラムはダクタイル鋳鉄製※2とし、静圧案内面で4面拘束※3している。また、コラムは2重壁方式により強度を高めた。これらの結果、静剛性・動剛性(振動しにくさ)ともに従来機比1.5倍超を達成。Y軸の高い位置での加工能力を向上させた。
高精度の裏付けとなる「新完全バランスシステム」は、コラムには垂直、ラムには水平にそれぞれテンションバーが組み込まれ、サドル吊り力補正機構も搭載されている。これらの仕組みにより、コラムの曲がり、ラムのたわみ、サドルの傾きをきめ細かく補正することで、どの位置で切削する場合でも高い精度および加工面品質を確保することができる。
高速性でも、クラス最高となるラム・主軸左右15m/分、コラム前後(X軸)・サドル上下20m/分の早送り、最大2500回転/分の主軸回転速度を実現。自動工具交換は30秒、自動アタッチメント交換は60秒と、いずれも従来比半分以下に短縮した。
同シリーズは、プレス機械や建設機械など産業機械の製造現場や、発電設備などの先端製造現場でも需要を見込む。同社は、国内や米欧地域だけでなく、中国、インドなどの新興諸国でも積極的な営業活動を展開していく。
※1 往復運動をする中空四角柱の送り台。
※2 球状黒鉛鋳鉄製。組織中の黒鉛を球状にすることで、通常のねずみ鋳鉄製に比べ強度や延性が改良されている。
※3 四角柱状であるラムの外側4側面が案内面(互いに接しながら相対運動する2つの部品の運動の基準となる面)となっている構造。