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産総研、絶縁体基板表面へのグラフェンの吸着機構を理論的に解明

 産業技術総合研究所( http://www.aist.go.jp )は、シリコン材料に代わる素材として注目されている炭素原子のシート「グラフェン」と絶縁体の基板として使われる「酸化シリコン」基板の相互作用を詳細に調べ、特定の電子構造を持つ酸化シリコン表面上において、グラフェンが非常に強く基板に吸着されることを発見した。

 グラフェンは炭素原子が蜂の巣状に6角形のネットワークを形成したシートで、原子一層からなる究極の薄さと、そのシート上に高移動度の電子が存在することから、世界的に注目されている新材料で、現在、高品質かつ大面積のグラフェン生成方法の開発が行われている。多くの生成方法の中で、剥離法によるグラフェン生成は、小スケール高品質グラフェン生成の代表的な方法。剥離法は、固体グラファイトから数層グラフェン薄膜を粘着テープにより剥離し、酸化シリコン表面上に転写する。この転写過程において、単層グラフェンが酸化シリコン表面上に生成される機構はいまだ明らかになっていない。

 同研究所は、酸化シリコン基板の表面として、特定の電子構造を持った表面を用いると、グラフェンと酸化シリコン表面の間の相互作用が、グラフェン-グラフェン層間相互作用よりも強くなることを理論的に発見した。これにより、これまで未解明であった、剥離法による酸化シリコン表面上でのグラフェン生成機構の一部が明らかになった。このことは、絶縁体基板の表面構造を制御して電子状態を変えることにより、グラフェンを基板上の任意の位置、サイズで生成することが可能であることを示しているという。また同時に、様々な吸着構造のグラフェンを作成できると考えられ、今後のグラフェンデバイス実現、設計において重要な知見となることが期待される。