三菱重工業( http://www.mhi.co.jp )は、3次元集積化LSI(大規模集積回路)が製造できる8インチ対応の全自動常温ウェーハ接合装置を開発した。常温接合による8インチウェーハの立体的積層を可能にした装置の製品化は世界で初めてだという。エネルギーレベルが高い原子ビームを採用することにより金属材料も効率よく接合できるようにしたもので、微細化の限界に直面しいるLSIの大容量化や高性能化に貢献していく。
3次元集積化に対応した全自動常温ウェーハ接合装置は、接合表面を活性化するための照射ビーム源として、既存の常温接合装置に搭載しているイオンガンに代えてFAB(Fast Atom Beam)ガンを採用した。イオンガンではアルゴンイオンビームが照射されるのに対し、FABガンではアルゴンの中性原子ビームが照射される。FABガンはイオンガンに比べて1粒子当たりのエネルギーが約20倍と大きく、常温接合の妨げとなる金属表面を覆った酸化膜も強力に除去できる。
また、指向性の強いFABガンを用いても8インチウェーハの全域を均一に活性化できるビーム照射技術を開発。3次元集積化LSIに不可欠な金属電極でも強固な接合を実現した。
同装置は、8インチウェーハ20枚を格納するカセットを装備。ウェーハの搬送、アライメント(接合するウェーハ同士の位置合わせ)もすべて自動で行える。さらに、それぞれの接合ウェーハに対して、あらかじめ接合条件を個別設定できることから、多品種少量生産にも容易に対応することが可能。
常温ウェーハ接合装置は、イオンビームや原子ビームを真空中で材料表面に照射することにより、従来は加熱して接合していたシリコンなどの原子同士を室温で接合、熱ストレスやひずみを排除して、強固で信頼性の高い結合を作り出すことができる。加熱とそれに伴う冷却の時間が不要になることに加え、アライメントなどの自動化により、大幅な工程の短縮と高い歩留まりの確保によるデバイス製造コストの低減を実現。同社は2006年の発売以来、シリコン系材料や酸化物、誘電体材料を中心とした分野で普及してきた。
LSIの大容量化や高性能化が現状の製造方法では限界を迎えつつあるという。そのため、3次元集積化LSI技術は、電子機器で進む小型化・高機能化をサポートする有力な選択肢として、メモリーやイメージセンサーの分野をはじめ各種デバイスへの応用が期待されている。同LSIは、積層されるウェーハ間で信号を授受する貫通電極の形成技術と電極同士を高い信頼性で接合する技術がポイントとなる。
同社は、加熱接合に比べ高いアライメント精度を確保でき、積層を繰り返しても熱ストレスを与えることがない常温ウェーハ接合技術を3次元集積化LSI製造分野で普及させるため、12インチウェーハ対応機種の投入も視野に、提案型アプローチを積極化していく