東京商工リサーチ、上場製造業従業員数の推移調査結果を発表ー全体的に減少傾向
東京商工リサーチは、2011年度決算時の上場製造業1086社における同年度の従業員数の推移を調べた結果を発表した。
資料によると、前年度より従業員数が減少したのは584社(構成比53.7%)で、2社に1社で従業員が減少した。従業員数が減少した企業では希望退職者募集を実施したケースが61社(判明分)あった。従業員数が増加した企業では、経営効率を高めるための関連会社合併による増員が多かった。従業員数の減少した業種では、自動車、電機関連の減少が目立った。
2011年度決算時(2011年4月期-2012年3月期)の上場製造業の総従業員数は、176万9353人(前年度比0.6%増)で、人数では1万787人増加した。個別企業では、前年度より従業員数が減少した企業が584社(構成比53.7%)と過半数を占めた。一方、従業員数が前年度より増加した企業は478社(同44.0%)で、前年度と同数が24社(同2.2%)だった。
2011年度単独決算ベースでの従業員数は、トヨタ自動車が6万9148人(前年度比0.03%増)で最多だった。次いで、パナソニックの5万1611人(同25.4%増) 、デンソーの3万8323人(同0.01%増) 、東芝の3万6754人(同5.9%増) 、日立製作所の3万2908人(同0.05%減) 、三菱重工業の3万2494人(同1.6%減)と、国内有数のメーカーが上位を占めた。
従業員数が1万人以上の上場製造業30社のうち、ほぼ半数の14社で従業員数が前年度より減少し、大手メーカーでも従業員数の抑制・削減が行われている実態が浮き彫りになった。
個別企業で従業員数が前年度より最も減少したのは、日産自動車の4163人減(2万8403→2万4240人、前年度比14.6%減)だった。主な要因は、日産自動車九州の設立に伴う転籍による。次いで、ルネサスエレクトロニクスの1098人減(1万4206→1万3108人、同7.7%減)、希望退職者募集や事業・生産構造対策が影響した。このほか、本田技研工業の785人減(2万5673→2万4888人、同3.0%減)、ダイハツ工業の722人減(1万2277→1万1555人、同5.8%減)と続き、自動車産業の減少が目立った。自動車産業は、東日本大震災発生でサプライチェーン寸断の影響などで、減産や生産調整を行ったことが影響したとみられる。
従業員数の減少率が最も高かったのは、マミヤ・オーピーの前年度比49.4%減(99→50人)だった。主な要因は、電子機器事業の開発に関する事業を吸収分割し、マミヤ・オーピー・ネクオスに承継させたことによる。次いで、リアルビジョンの同40.9%減(22→13人)、主に退職による減少による。高砂鉄工の同34.0%減(235→155人)、主にステンレス国内販売事業の譲渡による。積水工機製作所の同29.3%減(150→106人)、主に結城工場の操業停止に伴い、金型セグメントの従業員が退職したことによる。このほか、倉庫精練(前年度比27.3%減)、富士テクニカ宮津(同27.3%減)、サンコー(同27.0%減)は、希望退職者募集の実施が影響した。
従業員数が前年度より最も増加したのは、パナソニックの1万457人増(4万1,154→5万1,611人、前年度比25.4%増)だった。主な要因は、パナソニック電工と合併したことによる。次いで、JVCケンウッドの2938人増(1,328→4,266人、同221.2%増)、子会社のビクター、ケンウッド、J&Kカーエレクトロニクスを吸収合併したことによる。雪印メグミルクの2879人増(332→3211人、同867.1%増)、子会社の日本ミルクコミュニティと雪印乳業を吸収合併したため。
従業員数が増加した企業は、子会社との合併、合理化を目的とした事業統合や吸収分割による事業継承によるものが多かった。これらはグループ経営の効率を高めることが目的とみられる。
従業員数の増加率が最も高かったのは、経営の効率化を図るため子会社2社を吸収合併して経営が一体化した雪印メグミルクの867.1%増(332→3211人)。次いでマーベラスAQLの638.7%増(49→362人)、ゲーム業界を取り巻く環境変化に対応するためコンテンツ会社2社と経営統合したことによる。このほか、ハーバー研究所の313.9%増(93→385人)、受発注、管理業務および配送業務などの効率化を図るため連結子会社6社を吸収合併したことによる。このほか、ジーテクトの58.9%増(663→1,054人)、合併が主な要因など。
このように経営効率化を図るための経営資本の集中、一本化を目的とした吸収合併、経営統合を実施した会社で従業員増加率が高かった。
業種別では、24業種のうち11業種で前年度より従業員が減少した。減少数が最も多かったのは、自動車を含む輸送用機械器具製造(94社)の5823人減(43万6636→43万813人)だった。次いで、電子部品・デバイス・電子回路製造(50社)の1562人減(6万2471→6万909人)、印刷・同関連業(18社)の1429人減(3万1514→3万85人)、電気機械器具製造の(86社)の1230人減(14万517→13万9287人)の順だった。自動車、電機関連で減少が目立ち、高水準な円高の影響とグローバル経済の進展による国際競争の厳しさを反映した。
これに対し、増加数が最も多かったのは、情報通信機械器具製造(47社)の1万5011人増(25万2023→26万7034人)。次いで、食料品製造(67社)の2162人増(5万3890→5万6052人)、鉄鋼業(51社)の1350社増(7万2505→7万3855人)の順だった。
東京商工リサーチでは、経営の効率化や円高による生業拠点の海外移転、またデフレ経済の長期化とグローバル経済の進展などの影響が出ているものとみている。