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日本粉末冶金工業会、新年賀詞交歓会を開催
日本粉末冶金工業会(JPMA)は1月19日、東京都港区のインターコンチネンタル東京ベイで、「令和5年 新年賀詞交歓会」を開催した。
当日はまず伊井 浩JPMA会長(ダイヤメット社長)が挨拶に立ち、「粉末冶金業界は自動車産業の成長とともに安定した成長を遂げ、自動車1台あたりの粉末冶金製品の使用量は20年前に比べると1.35倍と拡大している。しかし近年は、電気自動車の市場拡大など、粉末冶金業界の主要市場のエンジンが失速していくという、100年に一度の大変革の真っ只中にある。その厳しい現実を直視して粉末冶金の活躍できる、新たな市場、新たなアプリケーションを開拓するのが、粉末冶金の喫緊の課題。粉末冶金が有するニアネットシェイプや大量生産性、金属粉末の配合を自由に組み合わせられることなどの基本的な特性に加え、工程が比較的シンプルなため原料やエネルギーを抑えることができる環境にやさしい工法といった唯一無二の特性を見つめ直しその長所をさらに磨くことで、粉末冶金の可能性を広げ、新たな製品の創出、新たな市場の開拓が実現できると確信している。来年10月に粉末冶金国際会議「PM2024」が横浜で開催されるため、今年はその準備の1年となる。アジア地区での開催は前回横浜での開催以来12年ぶりで、アジア地域はもちろん、世界中から粉末冶金に携わる多くの方々が来日し、粉末冶金の将来の可能性、未来について議論し情報を共有できる良い機会となる。そのような場を提供する責務を感じつつ、PM2024の成功に向けて各位の協力をお願いしたい。本年は経産省に支援いただいている取引適正化の活動をさらに強化して継続するほか、カーボンニュートラルに関する共通課題への業界としての取組みなど重要課題に対して一定の成果をあげられるよう、活動を加速させたい。経産省においては、DX、GX実現のための具体的政策の立案が進展していると聞く。引き続き素形材産業質の支援・指導をお願いしたい。今年は兎年。卯の刻は午前5~7時、まさに日の出とともに1日が始まる時間。夜が明けて新しい1日、1年が始まることを示す。粉末冶金業界も今までとは違った価値を創造することで新たな市場へと踏み出す一歩となるような1年にしたい」と力強く挨拶した。
挨拶する伊井JPMA会長
粉体粉末冶金協会(JSPM)の園田修三会長(福田金属箔粉工業 社長)は、「粉末冶金製品の取引先である自動車業界はCASE革命、100年に一度の大変革期を迎えまた昨今の半導体不足や部品不足などから減産を余儀なくされるなど、過酷な状況が続いている。そうした一方で粉末冶金製品には一層高い性能が要求されてきている。ニーズとしては特性や省エネ、SDGsに貢献できること、など多岐にわたるが、こうしたことを実現する上では、少子化にあっても粉末冶金の未来を担う人材の獲得、育成への取組みが不可欠。今まで以上にJPMAとJSPMという粉末冶金製品を支える両輪の連携強化のもとで研究開発・技術深化に取り組んで、国際競争力のある技術・製品を生み出していく。今こそ日本の粉末冶金の研究力や製造力という我々の底力を世界に知らしめたい。コロナ禍や景気後退など暗いニュースが多いが、頑張って前を向いて明るく進んでいこう」と述べた。
乾杯の挨拶に立った井上洋一JPMA常任理事(ファインシンター社長)は、「今一度、われわれ粉末冶金業界の知恵と力を結集して、業界発展のために頑張っていこう」と述べた。
第33回 変速機のトライボロジー研究会が開催
日本トライボロジー学会の会員提案研究会である「変速機のトライボロジー研究会」(主査:日産自動車・村木一雄氏)が1月23日、静岡県富士市のジヤトコで「第33回研究会」を開催した。
当日は、ジヤトコが世界シェア55%のトップシェアを占める無段変速機(CVT)の工場見学を実施、鍛造加工や切削加工、熱処理、洗浄、組み立て、試験評価などのラインを視察した後、以下の話題提供がなされた。
幹事でジヤトコ イノベーション技術開発部(KF0) 猪上 佳子氏は「KF0 F-Lab.の紹介」と題して講演。世界初の商品・技術の先行開発から企画、設計、実験まで一気通貫で担う開発拠点である「未来技術センター(F-Lab.)」の概要や機能について説明した。未来技術センターは変速機の製造などで培ったコア技術を応用した世界初の商品・技術の開発を担う。サプライヤーや他業種と連携する「コネクトルーム」、部署の垣根を越え社内連携を促しアイデアを生み出す「クリエイトエリア」、アイデアを実行する「シサクエリア」の3エリアで構成。開発のスピードを重視して、施設にはイノベーションを生み出す「ひらめき」を得るための発散(ラテラルシンキング)と集中(ロジカルシンキング)がそれぞれ可能な場所や、五感を集中して新たなひらめきが得られる場所を設けている。F-Labでe-Axleを試作した事例では、MR(複合現実)で構造設計し3Dプリンターで生産性・組付性などを確認した後、実部品ユニットを試作するといった流れで、EV向け製品開発期間の短縮が図れることを検証している。
また、ジヤトコ イノベーション技術開発部 松尾道憲氏が、「バイオミメティクス(生物模倣)を活用した湿式クラッチ『カエギリクラッチ』」と題して話題提供を行った。カエギリクラッチは、カエルとキリギリス、2種類の生物の足裏に配列された六角形模様の微細構造をヒントに、クラッチのスチールプレートの表面に排油性能を高める特殊加工を施したもので、これにより摩擦特性の安定性や耐久性を大幅に向上できる。キリギリスの足には接触面とのスティックスリップ現象を抑制し滑らかな摩擦を作り出す機能、カエルには濡れた接触面をグリップする機能があると考えられているが、この両者に共通する六角形の形状をクラッチのスチールプレート側に加工することで、低温時の伝達安定性やクラッチの耐久性を高めた。なお、開発初期から量産工法の採用を前提としており、量産向けマイクロプレス加工技術の開発を進めている。これまでクラッチの性能向上は主にフェーシングプレート側の摩擦材の性能向上に主眼が置かれてきたが、表面加工をスチールプレート側に施すことで、クラッチの性能を高めることが可能となる。社内試験で耐久性、摩擦特性ともに大幅に改善することが確認されている。始動後に捨てる熱が少ないことからは、EVへの貢献も期待できる、とした。
次回活動は、5月29日~31日に東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催される「トライボロジー会議 2023 春 東京」におけるシンポジウムセッション「自動車用動力伝達系のトライボロジー」として実施、自動車の電動化を支える動力伝達系の潤滑/冷却機構、機械要素に焦点をあて、電動化によってもたらされたトライボロジー技術への新たな要求、課題、解決への取組みについて論議する予定。
研究会開催のようす:ジヤトコ ウェルカムセンターで