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ナノコート・ティーエス、EMC・ノイズ対策技術展で電磁波シールドPVDコーティングなどを披露

2年 1ヶ月 ago
ナノコート・ティーエス、EMC・ノイズ対策技術展で電磁波シールドPVDコーティングなどを披露

 ナノコート・ティーエス( https://www.nanocoat-ts.com/ )は7月26日~28日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された「TECHNO-FRONTIER 2023」の構成展示会の一つである「第36回 EMC・ノイズ対策技術展」に出展した。

ブースのようす

 今回は、同社石川事業所ですでに受託加工を開始している、自動車電装機器の樹脂製筐体への電磁波シールド物理蒸着(PVD)コーティング「PROCEM™」を紹介。自動車電装機器の電磁波シールド仕様を十分にクリアしているほか耐食性が良好で、電磁波シールドめっきと比較した場合の利点として、①めっき処理が可能な樹脂基材に制約があるのに対し、PROCEM膜では、ABS・PC・ポリアミド(PA)・ポリメチルメタクリレート(PMMA)・ポリアリルアミン(PAA)・ポリイミド(PI)・ガラス繊維など、ほとんどの樹脂基材およびコンポジット基材に対して、密着性が極めて高い電磁波シールド被膜をダイレクトに成膜できること、②環境負荷が極めて小さいドライコーティングであること、③めっき皮膜では電磁波シールド性を付与するのに数十μmと厚膜にする必要があるのに対して、PROCEM膜は膜厚1~2μmの薄膜で電磁波シールド機能を付与できるため、樹脂製筐体への成膜前後の寸法変化・重量変化がないこと、といった多くの特徴を有する。

 ブースではレーシングマシンの樹脂製ボディー全面にPROCEM膜を処理した模型を展示。複雑形状に均一・平滑に成膜でき漏れのない電磁波シールド特性を付与できるイメージを表現した。

ボディー全面にPROCEM膜を処理したレーシングマシンの模型
(製作:石川事業所 所長 安田直史氏)

 ブースではまた、PROCEM膜により得られる電磁波減衰効果のデモンストレーションを実施、電磁波/電磁場放射テスターによる計測の結果、PROCEM膜を処理したキャップで覆うことで著しい電磁波減衰効果が得られていることが示された。

PROCEM膜により得られる電磁波減衰効果の実演
上が電磁波シールド前、下が電磁波シールド後

 そのほか、PROCEM膜の最表面に耐摩耗性など高耐久性を付与でき、センサー類の高い動作信頼性を実現できるダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティング「CERTESS」の導電性タイプなども紹介された。

 さらに近年対応が急がれている有機フッ素化合物(PFAS)対策として、シリコンゴムにDLCコーティングを施し滑り性を向上、フッ素樹脂コーティングの代替とする技術も提示された。

PFAS対策:滑り性を向上させるゴムへのDLCコーティング

 

kat 2023年7月31日 (月曜日)
kat

高機能トライボ表面プロセス部会、第5回合同研究会を開催、ドライコーティング研究会は今回で解散

2年 1ヶ月 ago
高機能トライボ表面プロセス部会、第5回合同研究会を開催、ドライコーティング研究会は今回で解散

 表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会(代表幹事:岐阜大学 上坂裕之氏)とドライコーティング研究会(事務局:近畿高エネルギー加工技術研究所(AMPI))は6月30日、兵庫県姫路市の姫路・西はりま地場産業センター(じばさんびる)で第5回目となる合同研究会を開催した。前者は第21回例会となる。後者は第63回研究会となるが、今回で解散することが発表された。

開催のようす

 高機能トライボ表面プロセス部会は、自動車の低燃費化・高性能化などへの高機能トライボ表面の寄与が増してきていることを背景に、自動車関連・コーティング関連企業や、大学・研究機関などが参加しての分野横断的な議論を通じ、低摩擦/高摩擦、耐摩耗性などに優れた高機能トライボ表面のためのプロセス革新に向けた検討を行う場として、2014年に設立された。

 また、AMPIでは所有する各種のレーザ装置やプラズマ装置を利用した加工技術や表面改質技術の研究開発、中小企業の技術支援、という二つのミッションを通じニーズとシーズを常に探っているが、ドライコーティング研究会はこうした観点からAMPIを母体にして、ドライコーティングなどの技術について研究会を開催することで、産官学問わず幅広い有識者の参加により、専門家の講演や保有技術の紹介など、活発な情報交換や勉強会の場を提供している。

 今回の合同研究会では、高機能トライボ表面プロセス部会の上坂氏の開会挨拶に続いて、以下のとおり講演が行われた。

挨拶する上坂氏

「 プラズマCVDを用いたダイヤモンド結晶成長技術開発の最前線 」山田英明氏(産業技術総合研究所関西センター)…近年、人工宝飾用ダイヤモンド市場においてCVD製の存在感が増してきている。産業利用を見据えたさらなる市場拡大には、CVDによる種結晶の大型化と高品質化を図る技術が必須。これに対し産総研では、ミリ単位でクラックフリー厚膜化を実現、モザイク基板ならばインチサイズまで拡大できている。CVD成長中に品質を改善する手法の開発も立ち上がりつつある。通常の半導体プロセスで利用される手法が網羅的に試されているわけでもなく、結晶成長メカニズムが完全に理解できているわけでもない。合成装置・加工技術開発に加え、真のデバイス優位性・特性を示すことが重要で、今後特性と結晶性との相関とともに優位性を着実に示していきたい、と総括した。

講演する山田氏

「AIP-iXによる成膜技術と皮膜特性」竹井良将氏(神戸製鋼所)…AIP(Arc Ion Plating)で形成した皮膜は緻密で密着力が高く硬質皮膜形成に適している。切削工具用途として代表的な皮膜である立方晶AlCrN皮膜は、一般的にAl含有率が高いほど機械的特性(硬さ/弾性率)や耐酸化性が向上する一方で、金属元素のうちAl含有率が70at%以上では皮膜の結晶構造が立方晶から六方晶へと変化してそれら性能が低下してしまうという課題があった。この課題に対し、コア技術であるアーク蒸発源とエッチングシステムを刷新することで、皮膜の金属元素のうちAl含有率70at%以上でも立方晶を維持し表面粗度も良好(ドロップレット低減)な硬質AlCrN皮膜の形成を可能とした新型PVDコーティング装置「AIP-iX」を紹介した。

講演する竹井氏

「GCIB(Gas Cluster Ion Beam)による高密度・低残留応力DLC膜の形成 」西山昭雄氏(野村鍍金)…ガスクラスターイオンビーム(GCIB)を用いた水素フリーダイヤモンドライクカーボン(DLC)を作製(GCIB-DLC)。GCIBの低エネルギーかつ高密度エネルギー照射効果を利用することにより、ta-Cと同程度の2.9g/cm3以上の高密度と1GPa程度という膜の低残留応力(ta-Cの半分以下で、はく離しにくい)のDLCが得られ、膜の脆弱性改善・密着強度の向上によって長寿命化を達成している。耐久試験結果では、はく離や膜破壊が生じにくいこと、摺動特性に優れ、チタンやアルミなどの比較的軟質な材料に対しても傷をつけにくいなど、異常摩耗を最小にできることなどが分かった。

講演する西山氏

「ホットチューブを用いたCVDによるダイヤモンド膜の合成」田中一平氏(兵庫県立大学)…三次元形状に成膜が可能、装置構造が簡単、厚膜化が可能という熱フィラメントCVDの、低成膜速度、温度分布、高基板温度、フィラメントの調整といった課題解決に向けて、効率的な加熱・分解、吹付効果、基板温度の低温化といった効果が想定されるホットチューブCVD法を紹介。ホットチューブCVDによるダイヤモンド合成において、チューブ(フィラメント)温度1500~1700℃で成膜速度が最大15.7μm/hのダイヤモンド膜が得られた。また、チューブ温度のさらなる高温化で高速成膜が期待できることから、ホットチューブCVDが新しいダイヤモンド成膜法として確立できるよう引き続き努めていく、と総括した。

講演する田中氏

 閉会の挨拶に立ったドライコーティング研究会の殖栗成夫氏(AMPI)は「大変遺憾ながら会の運営が難しく、今回第63回をもってドライコーティング研究会を解散する」と述べ、同研究会は2002年度以来20余年の歴史に幕を閉じた。

挨拶する殖栗氏

 また、高機能トライボ表面プロセス部会の上坂氏より、自身がセンター長を務める、プラズマを用いた新たな産業創出と現有技術を含めた県内企業など産業界へ展開するために2022年度に開設された、岐阜大学 プラズマ応用研究センターの概要が紹介された。“共同研究等により研究成果の社会実装および社会人教育を通じて、地域産業界の発展に貢献する”という同大学の地域連携に関する理念のもと設立された“ワンストップ・プラズマトライセンター”を掲げるプラズマ応用研究センターが保有する、MVP(Microwave sheath-Voltage combination Plasma)プロセス装置、マグネトロンスパッタリング装置(CVD複合化)、大気圧プラズマ装置、EBEP処理装置、HiPIMS(High Power Impulse Magnetron Sputtering)成膜装置など豊富な設備を紹介しつつ、各種保有設備を利用しての産学共同による研究を呼び掛けた。

kat 2023年7月31日 (月曜日)
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イグス、無潤滑ボールベアリング用の耐薬品性・高温耐性の新材質を開発

2年 1ヶ月 ago
イグス、無潤滑ボールベアリング用の耐薬品性・高温耐性の新材質を開発kat 2023年07日31日(月) in

 イグスは、無潤滑ボールベアリング「クシロス A500製ラジアル深溝ボールベアリング」の材質として、酸化ジルコニウム製セラミックボールとクシロデュールF500ケージ(保持器)材質の二つの新材質を追加した。

 

 化学産業や半導体産業では、ボールベアリングのような機械部品は頻繁に交換され、システムのダウンタイムのリスクが常に存在する。耐久性に対するユーザーからの要望を受け同社では、クシロスA500ポリマー製ボールベアリングに今回、二つの素材を新しく採用した。新素材を使用した無潤滑ボールベアリングは、化学産業や自動車産業における半導体やバッテリーの製造で発生する、耐薬品性・非金属使用・高温耐性が求められる環境で真価を発揮する。用途に適したケージやボール素材を探すユーザーに対し、さらに多くの選択肢を提供できるようになる。

 今回新しく、ステンレスボールとガラスボールに加えて、酸化ジルコニウム製のセラミックボールを使ったラジアル深溝ボールベアリングの提供を開始する。ボールベアリングの内輪と外輪には、これまで同様、実績のあるクシロデュールA500高機能ポリマーを使用している。セラミックボールは高い強度と高い耐破壊性、低摩耗性、高い耐熱衝撃性を有し、高温耐性・耐薬品性が要求される環境で、ステンレスボールやガラスボールに比べよりも強い耐性を発揮する。

 また、高温用ケージ材としてクシロデュールF500を新しく選択できるようになった。F500ケージは、すでに高い耐摩耗性が実証されているイグリデュールJ3ケージ材をベースに開発。同社ドイツ・ケルン本社にある試験施設では、クシロス ボールベアリングをさまざまな試験装置でテストしているが、強化されたクシロデュールF500ケージは、同等のA500ボールベアリングケージよりも最大50%の長寿命化を達成している。

 また、F500ケージの使用により、無潤滑ボールベアリングは150℃の高温での連続使用に長く耐えられるようになっただけでなく、多くの薬品に耐性を発揮する。

 クシロスシリーズは高機能ポリマー製であるため、従来のステンレス製ボールベアリングよりも最大50%軽量であるほか、ポリマーに組み込まれた固体潤滑剤により、メンテナンスと潤滑油を必要とせず、衛生的に低摩擦の無潤滑運転を可能にしている。また、今回開発した新素材のセラミックボールまたは新ケージ材質を使用したクシロス A500製ラジアル深溝ボールベアリングは、化学・半導体産業における過酷な高温環境でも確実に動作する高い信頼性を実現している。

kat