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木村洋行、超薄型ボールベアリングの特長を生かし、半導体分野での適用を展開

1年 9ヶ月 ago
木村洋行、超薄型ボールベアリングの特長を生かし、半導体分野での適用を展開 in kat 2023年12日12日(火) in 超薄型ボールベアリングの特長

 木村洋行が日本総代理店を務める1941年創業のKAYDON(ケイドン)社は、1950年代に世界で初めて超薄型ボールベアリング「Reali-Slimシリーズ」(図1)を開発し量産を開始した唯一の専門メーカーである。現在はSKFグループ企業として、超薄型ボールベアリングを中心に、あらゆる用途に応じたカスタムベアリングの開発も手掛けている。ここでは木村洋行が進める、超薄型ボールベアリングの特長と、多くの特長を生かした半導体製造プロセスでの適用展開について紹介する。


 ケイドン超薄型ボールベアリングは内径25.4~1016mmまでのサイズをくまなくラインアップしている。最大の特長は、ベアリング断面が超薄型のため装置に占めるベアリングのスペースを最小化でき、装置全体の省スペース・軽量化が図れ、設計の自由度が向上する点だ。一般的なISO規格・JIS規格のベアリングでは内径が大きくなるのに比例して断面サイズも大きくなるのに対し、ケイドン超薄型ベアリングは断面サイズでシリーズ化されており、図1のとおり内径が大きくなっても同じシリーズ内であれば断面サイズは変わらない。

 

図1 内径が大きくなっても断面サイズが一定の
ケイドン超薄型ボールベアリング


 ケイドン超薄型ボールベアリングには、ラジアル荷重を受ける深溝型(Type-C)と通常は2列以上の複列で用いてラジアル荷重、アキシアル荷重とモーメント荷重の複合荷重を同時に支えることができるアンギュラコンタクト型(Type-A)、この複合荷重を単列のベアリングのみで受けられる4点接触型(Type-X)がある(図2)。
 
 

図1 内径が大きくなっても断面サイズが一定のケイドン超薄型ボールベアリング

 

 ケイドン超薄型ベアリングの中でも特に、複合荷重を受けられる4点接触型を使うことで大口径中空シャフトへの置き換えが可能になるだけでなく、単列仕様にできるため軸方向の長さをさらに短縮できる。気体・液体の配管類、あるいは電気配線やスリップリング等を中空シャフト内に収納できるなど、フレキシブルで効率的なデザインにできる。

 キングポストデザインのISO 7010組み合わせベアリングから4点接触型超薄型ベアリングで中空シャフトを用いた機構への置き換えではまた、内径寸法を大きくできるため耐モーメント荷重を50%程度向上させている。
回転軸に垂直に加わるラジアル荷重を支えるよう組み付けられたベアリングでは、例えばISO 6010深溝ボールベアリングでは下部約150°の範囲の転動体で荷重を分散支持しているが、ケイドン4点接触型では同じ荷重分布でラジアル荷重を支持しつつ、80%以上の軽量化・省スペース化を実現できる(図3)。
 

図3 典型的なラジアル荷重負荷分布での、ケイドン4点接触超薄型ベアリング(左)と
ISO 深溝ボールベアリング(右)との比較

 

半導体分野における軸受へのニーズ

 半導体製造プロセスにおいて軸受には、回転の高精度化を損なうことなく、真空~高真空への対応、電子部品や光学レンズに悪影響を及ぼすアウトガス対策やコンタミネーションの低減、コンタミネーション発生につながる摩擦・摩耗の低減、プロセス中で使用されるガス・薬剤による腐食への耐性、エッチングや化学蒸着(CVD)などのプロセスに対応した耐熱性などを持たせることが要求される。

 ケイドン超薄型ベアリングはそもそも、1960年代のアポロ計画の宇宙服のヘルメットリング向けに採用され、その後も米国航空宇宙局(NASA)の月面探査車向けなど、宇宙空間の厳しい仕様環境に耐えるベアリングとして、多くの採用実績を持つ。宇宙環境下では軽量・省スペース化が求められるとともに、真空環境、極低温~高温の幅広い温度領域で精密な動きを求められ、ベアリングにとって非常に過酷な環境での稼働と高い信頼性を求められる。そのため内外輪の材質だけでなく、ボールや保持器の材質、潤滑剤の選定などでケイドンの長年の経験が活かされている。

 こうした宇宙機器での実績からケイドン超薄型ボールベアリングは、同じく真空環境、広い温度領域で作動する半導体製造プロセスにおいて幅広く適用されている。独自軸受設計に加えて、長年の経験に基づく内外輪および保持器の材質や潤滑剤の選定・適用によって、潤滑剤が250℃以上の高温下にさらされる条件や10-5~10-8Torrレベルの超高真空下での運転を実現しつつ、希薄潤滑条件でのマイクロパーティクル発生の最小化や腐食性雰囲気への耐性、長寿命化を実現している。

 

半導体製造プロセスでの適用例

 ケイドン超薄型ボールベアリングの半導体製造プロセスに適したこれらの性能のほか、半導体製造装置の回転機構の小型・軽量・簡素化が図れる省スペース設計によって、半導体製造プロセスにおいてはウェハ搬送ロボットからウェハ研磨装置、露光装置、検査装置など、前工程から後工程までの広範な装置に適用されている。

 最も多用されているのがウェハ搬送ロボットで、ベアリングの薄さ軽さから装置をコンパクト化できるだけでなく、同じ内径サイズの一般的なISO規格・JIS規格のベアリングに比べて80%以上の軽量化が図れるためアームが伸び切った時のたわみ量を少なくでき、安定した正確な搬送を実現できる。他方で、ウェハ搬送ロボットを含む産業用ロボットでは複合荷重を受けることが可能なクロスローラーベアリングが多用されているが、4点接触型(Type-X)ケイドン超薄型ベアリングは、単列のベアリングのみで複合荷重を受けられるため省スペース化が図れるだけでなく、クロスローラーベアリングに比べて、より軽く安定した起動トルクと回転トルク、高い回転精度を実現できることも、ユーザーから高く評価されている。

 ケイドン超薄型ベアリングは1個単位でカスタマイズできることも大きな利点で、それぞれが特殊環境を伴う半導体製造装置ごとの要求に応じて、内外輪や保持器の材質や、内外輪の歯切りなど各種形状への追加工、潤滑を工夫したベアリングとして提供がなされている。

 ウェハ搬送ロボットの中でもチャンバー内にウェハを搬送するロボットでは、ベアリングの防錆油残渣などがチャンバー内で揮発しマイクロコンタミネーションを発生させることがあってはならない。こうした懸念に対しケイドン社では、宇宙分野から続く真空環境で高い信頼性をもって運転できるベアリングの材料技術・潤滑技術に関する豊富な知見とノウハウを備えており、クリーンルーム内でベアリング各部品を徹底的に洗浄し、組み立てを行い、ユーザーの仕様に最適なグリースを封入して納入する「クリーン・パック」を行うことで、清浄度の高いアプリケーションにも使用できるようにしている。

 さらに、ユーザーでも洗浄作業が容易なように、耐薬品性に強く耐食性が高いオールステンレス材質や、転動体と保持器、転動体と内外輪の接触部分での防錆油残渣などを洗浄しやすいデザインを採用している。

 一方で、オールステンレス製ベアリングは高価なことから、一般的な軸受鋼(SUJ2)を基材としつつ耐食性を付与できるコーティング「エンデュラコート」を施したベアリングも用意している。

SEMICON Japan 2023における展示の見どころ ケイドン超薄型ベアリング

 木村洋行は、本年12月13日〜15日に東京ビッグサイトで開催される半導体製造装置・材料の国際展示会「SEMICON Japan 2023」に出展するが、当社ブースではやはり、上述のとおり半導体製造プロセスで採用実績の多いケイドン超薄型ベアリングが展示のメインとなる。内径サイズが変わっても断面サイズが変わらない薄型に特化したベアリング(図4)であることをアピールするとともに、多様なアプリケーション、ニーズに対応が可能なカスタムベアリングであること(図5参照)も訴求していく。

 また、ラジアル荷重、アキシアル荷重、モーメント荷重の複合荷重を単列のベアリングのみで受けられる4点接触型(Type-X)ケイドン超薄型ボールベアリングを組み込みハンドルで回転させるデモ機(図6参照)を置いて、その軽くて安定した起動トルク・回転トルクを来場者に体感していただく予定だ。
 

図4 ケイドン超薄型ボールベアリングの、内径サイズが変わっても断面サイズが変わらない利点をアピール(SEMICON Japan 2022での展示例)
 

 

図5 カスタムベアリングの一例(SEMICON Japan 2022での展示例)

 
 

図6 4点接触型Type-Xを組み込んだデモ機の例(2019 国際ロボット展での展示例)
  スモーリー波状ばね

 ベアリングは運転中、わずかな隙間の状態で使われるが、アンギュラ玉軸受のように2列対向で使うベアリングでは、用途によりアキシアル方向に負の隙間を持たせた予圧状態で使用する。転動体と軌道輪との間で弾性接触の状態を保つことで、軸受剛性の向上、高速回転の実現、回転精度・位置決め精度の向上、振動・騒音の抑制、転動体のすべりに起因するスミアリングの防止、外部振動で発生するフレッチングの防止など、さまざまな効果が得られる。

 一般的には定圧予圧用のばねとリテーニングリングが組み合わされて使われるが、同じくアキシアル方向へのベアリング予圧用として配置できるスモーリー社の「ウェーブスプリング(波状ばね)」(図7)は、前者の組み合わせの半分以下のスペースで同様の定圧予圧を実現しつつ装置への組み込みが容易で、ベアリングの作動温度を下げ振動を低減、摩耗を最小限に抑制し静かで滑らかな性能を付与できる。

 カタログサイズになくとも自由なサイズに製作可能で、ケイドン超薄型ベアリングとセットで使用することで、半導体製造装置内でのさらなる省スペース化が図れる。
 

図7 省スペースでベアリングの定圧予圧が可能なスモーリー波状ばね

 

今後の展開

 2013年に世界第一位のベアリングメーカーであるSKFのグループとなっているケイドン社は、カスタムメイドという従来からのフットワークの軽さに加えて、SKFのノウハウ・知見を注入した基礎研究や生産技術を利用したものづくりを進めてきている。「超薄型」を謳う後発のメーカーも出てきているものの、SKF協力のもとでケイドンが実施した寿命試験結果(図8)を見ると、他社製ベアリングとの耐久性の差は明らかである。

 

図8 軸受の基本定格寿命(L10)の比較


 

 ケイドン超薄型ベアリングはとりわけ、軽くて安定した起動トルクと回転トルク、高い回転精度を実現できるといった利点を持つ。木村洋行では引き続き、上述した半導体製造プロセスでの適用のように、軽量・コンパクトで厳しい条件で使えるベアリングであることを訴求していく。

 ベアリングは半導体製造装置に限らず各種機械を安定稼働させるための主要な機械要素であるため、ベアリングの突然の故障に伴う機械・ラインの突発停止などがない、生産効率向上につながる信頼性の高いベアリングを選定してもらう取り組みを強化している。

 木村洋行では、顧客の現場のニーズに対して最適な提案を行うために、製品やアプリケーションに関するトレーニングを定期的に受け、製品の性能や利点に関する知見、適用の可能性などの情報と知識を常にアップグレードさせている。

 木村洋行では今後も、顧客の声に耳を傾けて顧客の利益となるフィールドでの新しい提案を行い、ケイドン社製品の特質を活かしつつ、顧客のさまざまな課題の解決につながるような用途開拓を進めていく考えだ。

kat

高機能トライボ表面プロセス部会、第22回例会を開催

1年 9ヶ月 ago
高機能トライボ表面プロセス部会、第22回例会を開催

 表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会(代表幹事:岐阜大学 上坂裕之氏)は12月7日、名古屋市天白区の名城大学で「第22回例会」を開催した。

開催の様子

 

 高機能トライボ表面プロセス部会は、自動車の低燃費化・高性能化などへの高機能トライボ表面の寄与が増してきていることを背景に、自動車関連・コーティング関連企業や、大学・研究機関などが参加しての分野横断的な議論を通じ、低摩擦/高摩擦、耐摩耗性などに優れた高機能トライボ表面のためのプロセス革新に向けた検討を行う場として、2014年に設立された。

 今回は上坂会長の開会の挨拶に続いて、以下のとおり講演が行われた。

・「反応性プラズマによる透明導電膜の正イオン蒸着技術および負イオン照射」北見尚久氏(住友重機械工業)…プラズマ成膜における反応性プラズマ蒸着(Reactive Plasma Deposition、RPD)の特長(成膜フラックスの高イオン化率や化学結合に適した成膜粒子エネルギーの制御が可能など)やRPDで得られるITO膜とGZO膜の特長について述べた。また、成膜粒子解析技術として基板への飛来粒子定量分析(中性粒子と正イオン)、RPDによる薄膜成長の機序解析(ITO膜の移動度と成膜レートのエネルギー依存性、GZO膜の成長促進因子と点欠陥制御)、酸化物成膜といったRPDの産業展開、酸素負イオン照射技術(Reactive Nion)の特長と酸化物への酸素負イオン照射効果について紹介した。

・「HiPIMSによるDLC硬質化の最先端」太田貴之氏(名城大学)…HiPIMSによるDLC成膜の方向性として高硬度化とドロップレットレス化(低摩擦係数)を掲げ、そのアプローチとしてパルス波形(大別してシングルパルスとダブルパルス)と希ガスを用いた手法を紹介した。シングルパルスHiPIMSによるDLC成膜(イオン(炭素、アルゴン)の挙動と硬度)やダブルパルスHiPIMSによるDLC成膜(パルス間隔の効果)について報告。パルス条件の調整によって成膜速度と硬度の向上が両立できると総括した。さらに、シングルパルスHiPIMSにおける希ガス(アルゴン、ネオン、キセノン)の効果について紹介した。イオンフラックスが少ないキセノンにおいて高硬度のDLC膜が得られた理由として、高質量キセノンのボンバード効果が高硬度化に寄与する可能性を示唆した。

・「地熱発電システムにおける低付着カーボンコーティングの開発」中島悠也氏(富士電機、Zoom講演)…地熱発電における出力低下要因となるシリカスケールの付着抑制に向け、化学的に析出付着するシリカに対してDLCによる低付着化を行った結果、シリカの析出付着モードに対して低付着なDLC化学構造を明確化、低sp2結合量、高水素含有量でシリカ付着量が低減した。また、DLCにおけるシリカ低付着モデルを解明、sp2減、水素含有向上によるシリカ付着力低減効果を明確化した。さらに、蒸気系統(タービン翼)から、熱水系統(管内)への展開を担い、DLC管内成膜プロセスを構築、蒸気/熱水系統ともにシリカの付着を劇的に抑制できることを確認。DLCは地熱発電で問題となっていたシリカスケールに対して抜本的かつ新しい解決手段で、地熱発電の事業性向上に寄与できると総括した。

 続いて、名城大学 太田研究室の見学会が実施された後、閉会した。

見学会の様子

 

kat 2023年12月12日 (火曜日)
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ナノ科学シンポジウム2023がハイブリッド開催

1年 9ヶ月 ago
ナノ科学シンポジウム2023がハイブリッド開催

 ナノテクノロジーと走査型プローブ顕微鏡(SPM)に特化した「ナノ科学シンポジウム(NanoScientific Symposium Japan 2023 : NSSJ2023)」が10月27日に東京都文京区の東京大学 浅野キャンパス 武田ホールで、対面参加とオンライン参加からなるハイブリッド形式で開催された。主催は関東学院大学材料・表面工学研究所とパーク・システムズ・ジャパンで、協賛はNanoScientificとヤマトマテリアル、Ark Station、後援は日刊工業新聞社とメカニカル・テック社。

参加者による記念撮影


 科学技術の革新によりナノ科学では材料、表面を計測・解析する方法も各種発展している。特に、SPMの登場により、 ナノレベルでの表面計測・解析の基礎技術としての重要性が日々増している。ナノ科学シンポジウム(NSSJ)は、走査型プローブ顕微鏡を用いた 材料科学、半導体およびライフサイエンス分野の最先端の研究情報を共有・交換するSPMユーザーシンポジウム。2020年から開催され4回目となる今回は、以下の登壇者による講演のほか、ポスター発表がなされた。

・特別講演「ナノテクノロジーとナノ原子(=水素)考察」西 和彦氏(日本先端工科大学(仮称))…注目される水素を作るナノテクノロジーの着想点として、粒子の大きさを小さくし総表面積(反応面積)を大きくする、反応温度を上げる、反応気圧を上げるという化学反応の加速や、究極の水素ビジネスである水を還元して水素にする還元剤の研究、水素を貯蔵・デリバリーするナノカプセルの生成のほか、常温核融合もどき、常温超電導の周辺、元素間融合など、ビジネスになる理論・実学の追求を目指し新設する日本先端工科大学(仮称)の研究分野の一端を紹介した。

特別講演を行う西氏


・「AFMナノインデンテーションによる1次元グラフェン歪み格子の作製」田中悟氏(九州大学)…グラフェンに歪み(勾配)を加えると発生する「擬磁場」は電子の運動を仮想的に表す「場」であるが、実際の電子はあたかも磁場下にあるような運動を行う。この擬磁場を周期的に形成することでランダウ量子化,無磁場の量子異常ホール効果の観察が期待されるが、そのためには1・2次元周期歪みグラフェンの形成が必要となる。ここでは1次元歪み格子の実現のため、AFMナノインデンテーションによるSiC表面への周期的ナノトレンチ構造の形成とグラフェン転写による歪みの導入を試みた結果を議論した。

・「SPM技術を用いた全固体電池の評価」富沢祥江氏(太陽誘電)…全固体電池のサイクル特性やレート特性などの性能向上を図る上で、効率的・効果的な解析技術が不可欠となる。全固体電池の詳細な動作解析を行う目的でSPM装置を導入した。SPM技術の中でもケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)による電位分布評価は、電池を駆動させながら(operando計測)、電極内部の電位変化を可視化できるため、不良箇所を特定したり、正負各極の動作メカニズムを詳細に解明したりできる強力な手法である。ここではKPFM以外にも、SPMを活用した材料物性の評価事例、全固体電池デバイスの解析事例を紹介した。

・「3D Heterogeneous Integrated System Chip Technology」G.P. Li 氏(カリフォルニア大学 )…ここでは、将来のエッジシステムとして、統合センシングやワイヤレス通信、AIデバイスを支える3Dヘテロジニアス集積システム(3D HIS)チップ技術を取り上げた。3D HISはムーアの法則を超える半導体のナノエレクトロニクスを実現する。提案された3D HISチップ技術の研究は、相対的な人認知機能を模倣する多機能3Dシステムの開発に注がれていると述べた。

・「薄膜デバイスにおける巨大磁気回転効果」能崎幸雄氏(慶應義塾大学)…マクロな回転運動から磁気を生み出す磁気回転効果は、約100年前にアインシュタイン、ドハース、バーネットによって発見された。しかし、キロヘルツオーダーの高速な回転運動でも地磁気程度の微弱な磁気しか生み出せなかったため、これまでその応用研究はほとんど行われてこなかった。講演者は、最新のナノテクノロジーを駆使することにより、薄膜デバイス内にギガヘルツオーダーの超高速な回転運動を生成し、巨大な磁気回転効果を生み出すことに成功した。当日は、磁気回転効果の基礎とその薄膜デバイス構造を概説し、磁気回転効果のデバイス応用についてその可能性を語る。

・「AFM Methodologies for Quality Assessment of Lithium-ion Battery Electrodes」Seong-Oh (Jake) Kim氏(Park Systems)…リチウムイオン電池 (LIBs) はスマートフォンやノートパソコン、EVなどのポータブル蓄電デバイスとして広く使われている。LIBs のnmスケールでの形態と電気特性との相互作用を理解することは、LIBs の性能と品質管理の進歩の上で極めて重要となる。ここでは、AFMを用いてLIBs の電極材料の分析を実施、LIBs のカソードとアノードの活材料の役割や、バッテリーの容量と電力に及ぼすそれらの影響を浮き彫りにした。

・「ダイヤモンド半導体デバイスの作製とインチ径ウェハの成長メカニズム」嘉数 誠氏(佐賀大学)…ダイヤモンドはバンドギャップが5.47eVのワイドギャップ半導体で、絶縁破壊電界、熱伝導率、キャリア移動度が高く、シリコン、シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)を超える大電力・高効率パワー半導体として期待されている。ここでは、サファイア基板とMgO基板を用いた場合を比較し、ダイヤモンドの初期成長表面をAFMで観察し、結晶品質を決める成長機構を調べた。

・「半導体光デバイスと通信・センサーへの応用」荒川太郎氏(横浜国立大学)…半導体レーザーをはじめとする半導体光デバイスは、光ファイバー通信、センシング、分光分析、加工、医療・バイオなどさまざまな分野に応用され、光エレクトロニクスと呼ばれる工学分野の中心を担っている。化合物半導体光デバイスは主にレーザーや発光ダイオード、光変調器、光スイッチなど能動素子として使用され、シリコン光デバイスも発光素子を除く能動・受動素子として使用されている。ここでは化合物半導体とシリコン光デバイスを中心に、それらの動作原理と光ファイバー通信やバイオセンサー・ガスセンサーへの応用例を紹介した。 

・「AFMによる粘弾性計測の最新の展開」中嶋 健氏(東京工業大学)…AFMを用いて粘弾性計測を行う試みにはいくつかの方法がある。ここでは、それらについて概観するとともに、特に貯蔵弾性率・損失弾性率などを画像化できるナノ粘弾性計測手法(nanoDMA)について、原理と最新の展開を紹介した。例えば、フィラーと高分子マトリックスからなるナノコンポジットの界面の粘弾性について、マトリックスがゴム状態にある場合とガラス状態にある場合で界面の振る舞いが異なっている。それを可視化した最近の論文について詳しく述べた。

 当日はまた、30件のポスター発表が実施され、選考委員により最優秀賞1名、優秀賞2名が以下のとおり選考された。

◆最優秀賞
・「分子応答型DNAナノポアを用いたATP計測技術の確立」赤井大夢氏(長岡技術科学大学)

◆優秀賞
・「原子層モアレ超格子直接観察用資料の作製」川瀬仁平氏(東京大学)

・「Mapping force inside living cells by AFM in response to environmentalstimli」王 洪欣氏(物質・材料研究機構)

ポスターセッション表彰式のようす

 

kat 2023年12月12日 (火曜日)
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トライボコーティング技術研究会、令和5年度第2回研究会を開催

1年 9ヶ月 ago
トライボコーティング技術研究会、令和5年度第2回研究会を開催

 トライボコーティング技術研究会(会長:理化学研究所 大森 整 主任研究員)は10月5日、東京都板橋区の板橋区立グリーンホールで「第148回研究会:令和5年度第2回研究会」を開催した。今回は、マイクロ加工シンポジウム「第51回 マイクロファブリケーション研究の最新動向」のトライボセッションとして開催された。「第10回板橋オプトフォーラム」も同時開催された。トライボセッションでは以下の発表があった。

会場の様子

・「株式会社オンワード技研の会社概要とコーティング技術について」川畠丈志氏(オンワード技研)…熟成してきた自社の強味として、1990年代から手がけているDLC技術の業界に対する認知度の高さや、T字型フィルタードアーク方式の装置など自社開発の装置(保有装置15台中自社開発装置が10台)があること、DLC膜一つをとっても各種製法による水素含有DLC(a-C:H)コーティングから水素フリーDLC(ta-C)コーティングまで顧客ニーズに合わせたさまざまな膜の提案ができること、年間140万点の受託加工において欠けなどのハンドリングミスが8点という、コーティングの前後処理から膜の試験測定評価までの徹底した品質管理体制などをアピールした。

講演する川畠氏

 当日は企業展示コーナーが併設され、トライボコーティング関連ではRtec-Instrumentsが多機能トライボメーター(摩擦摩耗試験機)や三円筒転がり疲労・耐ピッチング性評価試験機などのトライボロジー試験機を紹介したほか、オンワード技研が各種DLCとそれらを施した切削工具のサンプルを展示した。また、東京理科大学 佐々木信也研究室(主宰:佐々木信也教授)が充実した試験分析評価装置を保有し各種のトライボロジー試験が可能なトライボセンターについて、埼玉工業大学 長谷研究室(主宰:長谷亜蘭准教授)が光学・精密部品の生産技術に寄与するアコースティックエミッション(AE)センシングとトライボロジーについて紹介した。

Rtec-Instrumentsの展示ブース

 

kat 2023年12月12日 (火曜日)
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