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表面設計コンソーシアム、設立講演会を開催

10ヶ月 ago
表面設計コンソーシアム、設立講演会を開催

 表面設計コンソーシアム(https://surfacedesignconsortium.com/)は11月15日、神奈川県海老名市の神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)海老名本部で催された「Innovation Hub 2023」の1フォーラムとして、「表面設計コンソーシアム 設立講演会~神奈川から世界へ、ものづくり中小企業による産学公地域連携の新しいカタチ~」を開催した。

開催の様子

 

 表面設計コンソーシアムは、複雑な表面課題にソリューションを提供しつつ、今後求められる表面課題に対応する複合処理の技術開発をする目的で設立された。創設メンバーは、微粒子投射技術を有する不二WPC(https://www.fujiwpc.co.jp/)と、多様なコーティング技術を持つ日本電子工業(http://www.ndkinc.co.jp/)、熱処理技術を提供する武藤工業(https://www.mt-k.com/)、金型の設計・製造を手掛ける昭和精工(https://www.showa-seiko.co.jp/)に加えて、豊富な分析評価技術を保有するKISTEC、理論構築を担う横浜国立大学。

 当日はまずKISTEC理事長の北森武彦氏が挨拶に立ち、「例えば、自転車のベアリングを変えるという表面設計だけでも、動力伝達の改善に寄与できたという経験がある。脱炭素社会において最適な表面設計を提供し企業の課題解決を図るとともに、部材のエネルギー効率を高め企業と社会の脱炭素にワンストップソリューションで貢献する本コンソーシアムの活動の意義は大きい。この活動において中小企業支援に務めるKISTECとしては、強みとする表面解析・分析で積極的に寄与していきたい」と述べた。

挨拶する北森氏


 続いて本講演会の司会も務めるKISTEC 川崎技術支援部長の髙木 眞一氏が、「KISTECのものづくり中小企業支援と表面設計コンソーシアム」と題して講演した。表面に優れた機能を与えるには、ベース素材の材料設計技術や表面改質技術、その上に被覆する薄膜制御技術、さらには最表面のテクスチャ制御技術までをトータルに高度なレベルで協調させる「設計」が必要であるとする表面設計の考え方について説明。現象が複雑・動的でメカニズム解明が容易でないといった表面技術分野において、KISTECなど公設試は分析・評価技術に強みはあるものの、生産技術に関わる企業にニーズ・オーダーに対して1機関で表面設計ソリューションを開発・提供することは難しい。これに対し表面設計のスペシャリスト集団である表面設計コンソーシアムは、情報が分散しがちで目標が不明瞭になりがちといった、ものづくり企業を取り巻く環境の変化や課題に対して、ワンストップで情報を集約・統合し目標の明確化と技術の統合を図り技術の高付加価値化につなげることのできる、産官公地域連携の新しい形である、と総括した。

講演する髙木氏


 また、横浜国立大学大学院 工学研究院長の梅澤 修氏が、「擦り合わせ技術の複合化によるシステムソリューションを目指す」と題して講演。大量生産・大量消費・大量廃棄社会からグリーン循環社会へとパラダイム変化する中で量の価値観から質の価値観へと変化してきている一方で、特に中小企業では低コスト競争で失われた人材能力(現場技術)や広い視野で本質をとらえる人材育成(研究開発)が課題となっている。中小企業では擦り合わせ技術に強みがある一方で、核心技術への理解不足、Designing力の欠如、ユーザーからの情報開示がなくソリューションにフィードバックできない、といった問題を抱えている。これに対し産学公連携の新しい形である企業主体の本コンソーシアムには、産業社会に対しては技術蓄積と競争力を生かし、人材を育成するとともに、課題とそのソリューションに関する情報を整理・共有するための懸け橋となってもらい、また中小企業に対しては核心技術を理解させて擦り合わせ技術をつなぐための、垂直連携による情報とソリューションの高度化を図るための役割を担ってほしい、と応援した。

講演する梅澤氏


 さらに、不二WPC 取締役 技術開発部長の熊谷正夫氏が「企業連携で目指すもの-新たなビジネスモデルと複合技術によるイノベーション」と題して講演。日本はもはや技術的にも先進国ではなく、技術開発の主体は大企業から中小企業へと移っている。こうした日本の生き残る道は「製品・技術の付加価値を高め、かつ内需を増やす(高く売って賃金に反映させる)」ことで、産学公連携による複合技術によって最適な表面設計を実現することで、ユーザーにコストプライスではなくバリュープライスを認めてもらうことが重要。バリューを評価してもらうための中心的なスペースとして、不二WPC内に新設した「ソリューションラボ」を、ユーザーとともに実際の不具合品を見ながら故障解析を行い複合技術による最適化提案を行うほか、これから必要となる技術開発のための単体試験・実証試験が行え複合技術による技術提案ができる場と紹介。また、単一技術では要求特性に対し十分な効果が得られない場合に、(学術的な知見や製造技術を踏まえて総合的に協調させる)表面設計的な複合技術が有効である事例を示した。

講演する熊谷氏

 

 その後、コンソーシアムメンバー各社の得意技術紹介が以下のとおり行われた。

 不二WPC 技術開発部 主任研究員の斎藤邦夫氏は、弾性変形がメインのショットピーニングに対し塑性変形がメインのWPC処理は表面組織の微細化による疲労強度向上や、残留応力の付与といった、さまざまな特長を持つことを説明したほか、機械部品の破壊の8割を占めるとされる疲労破壊のWPCによる対策事例などを紹介。さらに食品分野で採用実績の多いFDA取得のDLCとWPCの複合処理の提供が可能とアピールした。

齋藤氏


 日本電子工業 相模原工場長の池永 薫氏は、同社が①高周波焼入れ・焼戻し、②プラズマ窒化、③セラミックコーティング・DLCなどの硬質被膜と言う各種表面改質処理を、ユーザーニーズに合わせて提供できることを紹介。プラズマ窒化処理層の上にSi含有DLC膜を組み合わせたハイブリッド処理では、DLCで通常必要なCr系中間層が不要でダイレクトに成膜でき、さらに同ハイブリッド処理を一つの炉で連続処理できるという強みをアピールした。

池永氏


 武藤工業 企画開発部長の中村正美氏は、真空熱処理、ソルト焼入れ、油焼入れ、サブゼロ処理など同社が手掛ける幅広い処理について、特長や処理事例を紹介。また、同社HPでは熱処理研究等に関して直感的に理解できる「お役立ち資料」がダウンロードできることをアピールした。熱処理は機械的特性を高めるが、材料を硬くした時のコーティングへの影響やワイヤーカットへの影響を考慮する必要があるとして、コーティングや切削技術のスペシャリストを抱えるコンソーシアムとの協調で最善の方法を提案していきたいを述べた。

中村氏


 昭和精工 代表取締役の木田成人氏は、金属プレス用金型と金型を使用した設備に強みがあること、近年では新分野としてリチウムイオン電池用金型の受注が伸びていることなどを紹介。国内最大市場シェアを持つ飲料・食品アルミ容器金型に関するトピックスとして、SDGsの観点からペットボトルに代わり需要が増してきているリサイクル率94%のアルミ缶における新しい成形の話題などについて紹介した。また、新しい試みであるキャンプ製品の開発・販売やSNSを利用したウェブマーケティングなどについて紹介した。

木田氏


 KISTEC 川崎技術支援部長の髙木眞一氏は、ソリューションラボの保有する試験・分析設備で主だった解析は十分可能だが、より詳細な分析が必要とされる際にはKISTECの分析・評価設備が利用できることを紹介。微粒子ピーニングによる浸炭焼入れの鋼表面のナノ結晶化や、ファインブランキング用金型の耐久性向上などの分析・評価事例を紹介しつつ、集束イオンビーム(FIB)と透過電子顕微鏡(TEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)などKISTECの保有する微細構造解析や成分分析機器などを駆使して、表面にまつわる不具合原因解明や新技術開発の支援が可能なことをアピールした。

髙木氏

 

kat 2023年11月20日 (月曜日)
kat

NTN、軸受の新生産拠点・和歌山製作所が本格稼働開始

10ヶ月 ago
NTN、軸受の新生産拠点・和歌山製作所が本格稼働開始kat 2023年11日20日(月) in

 NTNがベアリングの新たな生産拠点として和歌山県橋本市に設立した和歌山製作所が、本格的に稼働を開始した。今後は、国内におけるボールベアリングとベアリングユニットの主力工場の一つとして、高付加価値商品の生産を通じて需要の増加が見込まれるEV(電気自動車)に対応するとともに、供給力の強化による補修事業の販売拡大に取り組んでいく。

和歌山製作所


 10月12日に開催した落成式には、和歌山県の下 宏副知事、橋本市の平木哲朗市長をはじめ、地元関係者が出席し、テープカットを行った。下副知事から「従業員の(橋本市などへの)移住や関連企業の誘致による地域への経済効果に期待している」との挨拶がなされたほか、同社執行役社長の鵜飼英一氏が「世界中のNTNグループの生産拠点の模範として、当社の未来、そして和歌山県や橋本市への地域貢献につながる工場にしていく」と意気込みを語った。

 和歌山製作所は、同社が目指すスマートファクトリのコンセプトを基に「NTN STAR WORKS WAKAYAMA」と愛称を付けており、今後はスマートファクトリの実践工場として、「整流化」「自動化・自律化」「ハイレスポンス」の実現を目指していく。現在は、在庫など各種データの「見える化」や無人搬送車などによる工程間搬送の自動化、自動倉庫からの出庫データを用いた生産計画の自動生成など省人化や自動化により、生産効率の向上に取り組んでいる。「STAR」には、同社が目指すスマートファクトリの以下のコンセプトが込められている。

・「ST」…「Streamlining:整流化」:モノの流れを見直して自社工場だけではなくサプライチェーン全体の整流化を目指す

・「A」…「Autonomous:自動化・自律化」:人による作業の自動化・自律化により、生産効率化とコスト低減を図る

・「R」…「High Response」:変化の激しい市場環境に素早く対応する

 「STAR」という言葉にはまた、事業分野における頂点(スター)を目指すという思いも込められている。

 同社ではさらに、環境にも優しい工場としてCO2フリー電力を100%採用するほか、電熱式熱処理の採用、敷地内に設置した「N3エヌキューブ」や「NTNグリーンパワーステーション」による太陽光パネルや風車から発電した再生可能エネルギーの活用など、積極的にCO2削減の取り組みも進めている。

kat