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日本粉末冶金工業会、2026年度(第48回)日本粉末冶金工業会賞の受賞者を発表
日本粉末冶金工業会(JPMA、会長:菊池正史ポーライト社長)は、「2026年度(第48回)日本粉末冶金工業会賞」の受賞者を発表した。
この賞は、粉末冶金工業の振興、発展に顕著な業績を挙げた製品などを表彰し、粉末冶金業界の底辺拡大と一層の技術水準向上に役立てようとするもので、1979年度から実施されている。表彰の種類は、業界功労賞、新製品賞(デザイン部門、材質部門、製法開発部門)、原料賞、設備開発賞に区分されており、2003年度からは、新製品賞、原料賞、設備開発賞の中から最も優れた案件に「工業会大賞」を授与している。また、上記賞以外に奨励賞が設定されている。
今回、工業会賞大賞と原料賞は該当なしで、その他受賞の概要は以下のとおり。
業界功労賞園田修三JPMA前会長(福田金属箔粉工業会長)
園田修三JPMA前会長新製品賞・デザイン部門「利便性・快適性を求めた自動車シート用電磁弁部品の焼結化」ポーライト
本製品は、自動車シートのリフレッシュ機能に用いられる電磁弁を構成するプランジャーおよびコアで、従来の鋼材切削品を焼結部品へ置き換えることで小型化、軽量化、コスト低減を実現した。磁気特性を確保するため材料には純鉄を採用し、粉末冶金工法の形状自由度を活用して、空気の流路となる1mm未満の溝や穴を金型で一体成形することにより、追加加工を不要としたほか、ニアネットシェイプ成形によって材料ロスを抑制した。防錆処理には、封孔処理を伴うめっきに代えてスチーム処理を採用し、要求特性と量産性を両立した。高密度化に伴う金型破損や薄肉部の欠けに対しては、金型の材質・形状、成形体強度の高い原料粉および金型表面性状を最適化し、成形体の離型性を改善した。さらに、再圧縮工程を活用して、作動性および自動組付性を向上させるテーパー形状を高精度に付与し、生産性の向上と安定した量産体制を確立した。これらにより、磁束密度、引張強度および作動精度に関する顧客要求を満足するとともに、従来工法比50%以上のコスト低減を達成した。
「1ユニット15個採用を実現したパワーシート用高性能焼結含油軸受の開発」ダイヤメット
本製品は、高機能パワーシートの各種動作を制御するアクチュエータに用いられる焼結含油軸受。前後スライド、リクライニング、上下調整およびランバーサポートなどの機能を一つのモータで制御する機構に対応するため、高い静粛性、耐荷重性、低摩擦摺動性およびコスト競争力が求められた。軸受材料には鉄銅系材料を採用し、銅およびSnの添加量を最適化するとともに、空孔径を制御するポアコントロール技術とエステル系潤滑油を組み合わせることで、低速域でも安定した油膜形成を実現した。多箇所に使用する軸受には、X方向とY方向の両方に二面幅を設けた回り止め形状を採用し、組付方向に依存せず共通使用できる構造としました。また、薄肉フランジを有する3製品については、金型の撓み解析をもとに各部の変形量差を抑える設計を行い、クラックや寸法不良を防止する量産技術を確立した。さらに、顧客とのデザインイン活動を通じて使用条件と機能要求を整理し、当初最大15種類必要と想定された軸受を4種類に集約した。この部品共通化により、開発コストを70%削減し、開発期間の短縮と量産性の向上を実現したほか、1ユニット当たり合計15個の採用を実現した。
「センサーリング向けステンレス代替材の開発」住友電気工業
本材料は、自動車用ABSセンサーリング向けに開発したFe-Mo-C系合金材料。従来のCr含有ステンレス材は、優れた機械的特性と耐食性を有する一方、Crが特定国への依存度が高いレアメタルで地政学的リスクや環境規制の変化によって調達や価格が不安定になりやすいという課題があった。そこで、Crを使用せず、従来ステンレス材と同等以上の機械的特性および耐食性を実現できるステンレス代替材を開発した。強度面では、MoとCの固溶強化を活用することで高強度化を実現した。耐食面では、Zn・Alを主成分とするジオメット処理との組み合わせを前提に、母材との電蝕リスクを考慮して合金元素を選定した。Fe-Cu-C系材料との比較から、Znとの電位差が小さいMoを選択するとともに、MoのFeへの固溶による組織自体の耐食性向上も図った。その結果、ステンレス材と同等以上の引張強度を実現するとともに、ジオメット処理との組み合わせによりステンレス材と同等レベルの耐食性能を実現した。さらに、従来のステンレス材を用いた場合と比較して、製造原価を従来比29%まで大幅に低減した。
「高温耐久性能と寸法精度を向上させたHEV向けリアクトル用圧粉コア」住友電気工業
本製法は、リアクトルの小型化に伴い求められる高い寸法精度と磁気特性の安定化を実現した圧粉コアの製法技術。圧粉コアは、小型化およびコスト低減を目的としてコア間のギャップ板を省略したことで、圧粉コアの寸法精度が磁気特性に直接影響するようになった。そこで、寸法ばらつきの安定化を目的に、金型の偏りを抑制できる2個同時成形を採用した。一方、この成形方法では金型との摺動による絶縁被膜の損傷と、それに伴う鉄損の増大が課題となった。これに対し、製品の各面に接する金型を二段階で非同時に作動させ、金型摺動による被膜損傷を抑制した。さらに、高周波域での低鉄損化を目的に微細化した鉄粉を用いると、成形時に残存した空気が熱処理時に抜けることで寸法ばらつきが生じるため、脱潤滑剤工程の条件を最適化し、成形体内の空気を適正な速度で脱気することで、寸法変化を抑制した。これらの製法技術を組み合せることで、寸法ばらつきを従来比60%低減するとともに磁気特性のばらつきを抑制した。さらに、純鉄粉の採用と2個同時成形により原料および製造コストを低減し、次世代リアクトル用圧粉コアの製造技術を確立した。
「電動車向けワイヤレス充電器冷却ファンモータ用静音軸受の開発」ポーライト
本製品は、スマートフォン向け車載ワイヤレス充電器の冷却ファンモータに用いられる焼結含油軸受。自動車のEV化に伴ってワイヤレス充電器の搭載が進み、充電の高出力化による発熱への対応として冷却ファンモータの重要性が高まる中、軸受には静音性、耐振動性、長寿命および低温起動性の両立が求められた。材料面では、原料粉末の粒子径と粒度分布を最適化して内径油孔を微細に制御し、Fe・Cuの配合比とSn添加量を調整することで、安定した油膜形成と振動下での摩耗抑制を両立した。含浸油には、特殊シリコーン油と特殊合成炭化水素を組み合わせたハイブリッド合成油を採用し、低温時の流動性、高温時の粘度維持、蒸発抑制および摺動特性を確保した。さらに、軸受両端面の内径側にオイルポケットを設け、外径溝と放射溝を組み合わせた油保持・循環構造を構築することで、油の減少を抑制した。これら材料、含浸油および軸受形状の組み合わせにより、-40℃から85℃までの広い温度域で静音性と耐振動性を両立し、高温環境下における長寿命化を実現した。その結果、車載ワイヤレス充電器用冷却ファンモータ向け軸受として採用された。
NTN、工作機械主軸用軸受向け高速・長寿命グリースを開発
NTNは、工作機械主軸用軸受向け高速・長寿命グリース「SP-1」の量産を本年11月より開始する。量産化により、顧客による実機評価に必要な数量を安定的に供給できる体制を構築し、正式採用に向けた評価・提案活動を進める。
本商品は、高速回転時にも安定した潤滑性能を維持し、工作機械主軸用軸受の高速回転と長寿命化を両立する。SP-1を封入した軸受は、実機を想定した当社試験において、dmn値230万という業界最速の高速回転領域での運転を実現した。また、実際の使用環境を上回る厳しい条件で行ったdmn値140万の高速回転耐久試験では、18000時間を超える運転を継続しており、高速回転環境における優れた耐久性を確認。これにより、高速加工による生産性向上や設備の安定稼働、保守工数の削減に貢献する。さらに、高速回転領域におけるグリース潤滑の適用拡大を通じて、潤滑システムの簡素化や省エネルギー化にも貢献する。
近年、EV や半導体、航空宇宙分野を中心に、高精度部品の加工需要が拡大しており、工作機械にはさらなる高速化や高精度化が求められている。また、人手不足を背景に、設備の安定稼働や保守工数の削減へのニーズも高まっている。工作機械主軸用軸受の高速回転領域では、エアオイル潤滑が広く採用されているが、給油装置などの付帯設備が必要となることから、設備構成の簡素化や省エネルギー化につながるグリース潤滑への期待が高まっている。一方、高速回転時には、グリースの劣化や潤滑油不足による寿命の低下が課題となっていた。
こうした課題に対し、NTNは長年培ってきた潤滑技術を活用し、高速回転下でも安定した潤滑性能を実現するグリース「SP-1」を開発した。基油、増ちょう剤および添加剤の組み合わせを最適化することで潤滑油の供給性能を向上させ、高速回転下でも安定した潤滑状態を維持する。これにより、工作機械主軸用軸受の高速回転と長寿命化を実現している。
2024 年の開発発表以降、国内外の工作機械メーカーを中心に引き合いがあり、一部のユーザーと実機評価に向けた準備を進めている。こうした市場ニーズを踏まえ、SP-1 を封入した軸受をユーザーに提供する準備を整えた。SP-1 は本年11月より量産を開始する。今後はJIMTOF2026 への出展を通じて提案活動を強化し、中国をはじめとするアジア地域を重点市場として展開していく。
左:SP-1 ラベル、中央:高速・長寿命グリース、右:工作機械主軸用軸受
NTN、工作機械主軸用センサー内蔵軸受ユニットの受注活動を開始
NTNは、工作機械の主軸内部で温度や振動・荷重を計測できる「工作機械主軸用センサー内蔵軸受ユニット」の受注活動を、本年10月26日から開催される「第33回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2026)」への出展を機に開始する。
本商品は、工作機械主軸軸受に隣接する間座に温度・振動・荷重センサーを組み込んだもので、主軸の外部にセンサーを設ける従来の方法よりも高精度に主軸軸受や加工状態を監視できるソリューション。設備の予知保全に加え、加工状態の見える化による品質・生産性向上や、設備・加工状態のデータ活用を通じて、スマートファクトリー化を支援する。
工作機械主軸用センサー内蔵軸受ユニット
近年、製造現場においてはスマートファクトリー化の進展を背景に、設備状態や加工状態をリアルタイムに把握し、生産性や品質の向上につなげるニーズが高まっている。
一方で、従来の状態監視用センサーは工作機械の主軸外部に取り付けられるため、主軸軸受の異常予兆や加工状態を正確に把握することが難しいという課題があった。
NTNは、こうした課題に対応するため、2018 年に本商品の初期モデルを開発し、ワイヤレス化や荷重センサーの追加、高感度化などの改良を重ねてきた。
開発当初は設備異常の検知や予知保全への活用が主な目的だったが、試験を重ねる中で、主軸軸受部で計測した温度・振動・荷重のデータが加工状態の把握にも活用できる可能性があることを確認した。そこで、今回は荷重センサーの高感度化を図り、従来は捉えにくかった軽切削時の荷重変化も検出できるようにすることで、軸受の状態監視に加え、加工状態の高精度な監視も可能となった。
実証実験では「これまで把握できなかった工具と加工物の接触状態を検知できる」「加工対象物の異常を検知できる」といった評価を得ており、加工異常の早期検知や加工条件の最適化に活用できる可能性を確認している。
開発品の特長は以下のとおり。
1. 主軸内部で直接センシングし、高精度な状態監視を実現:温度・振動・荷重センサーを軸受間の間座に内蔵。軸受付近の状態を計測できるため、従来よりも高精度な状態監視が可能
2. 軸受異常の予兆を早期に検知:軸受の予圧荷重の変化を高感度に検出。焼付きなどの未然防止に貢献
3. 加工品質向上と生産性向上を支援:主軸の状態や加工状態を監視することで、加工異常を早期に把握。不良品の流出防止に加え、工具交換時期の最適化などを通じて、コスト削減と生産性向上に貢献
4. 配線不要のワイヤレス設計:主軸の回転を利用した自己発電技術と無線通信技術を採用し、設計自由度の向上に貢献
用途は、工作機械主軸(マシニングセンタ、旋盤、複合加工機)など。
日本精工、びびり振動抑制で重切削加工の効率を高めるMC向け新型スピンドルを開発
日本精工(NSK)は、マシニングセンタ(MC)向け新型スピンドルを開発した。開発品は、「高速ビルトインモータスピンドルシリーズ 高剛性・高出力タイプ」をもとに開発、切削時に発生する異常な振動「びびり振動」を抑制することで、重切削加工における加工効率の向上に貢献する。
左:開発品、右:マシニングセンタにおける本開発品の搭載箇所
マシニングセンタは工具を自動で交換しながら金属などの材料を削る工作機械で、自動車部品や航空機部品、産業機械部品等を製造する際に広く使用されている。近年、製造業では人手不足や生産コスト上昇を背景に、生産性向上への要求が高まっているほか、航空機や自動車などの分野では、燃費向上や環境負荷低減を目的としてチタン合金など加工が難しい高機能材料の使用が増えている。そのため、マシニングセンタに対して、これらの材料を高効率に加工する性能の向上が求められている。
高効率に加工するためには、一度に多くの材料を削る重切削加工が有効だが、加工中の異常な振動「びびり振動」が発生しやすくなる。びびり振動の発生は、加工面品質の劣化や工具寿命の低下を招くため、高効率加工を実現させる上で大きな課題となっている。
スピンドルはマシニングセンタの工具を高速回転させる主軸で、その性能は加工効率や品質に大きく影響する。こうした背景から、スピンドルに対して、びびり振動を抑制し、安定した高効率加工を実現することが求められている。
こうした要求に対する開発品の特長は、以下のとおり。
1.びびり振動の抑制:同社従来品(高速ビルトインモータスピンドルシリーズ 高剛性・高出力タイプ)と同等の出力、最高回転数、静剛性を維持しつつ、減衰性能に優れた軸受を搭載することで、スピンドルの動剛性向上に寄与し、加工時に発生するびびり振動を抑制。これにより、安定した重切削加工に貢献
2.重切削加工への貢献:開発品は、びびり振動を抑制することで、重切削加工における①加工時間の短縮による生産性向上、②加工面品質の向上、③工具寿命の延長によるコスト低減、④加工の信頼性向上に貢献
3.びびり振動の抑制に貢献する軸受の採用:スピンドルは軸受を使用したユニット製品で、軸受は構成部品の中で最も大きな負荷を受ける、スピンドル性能を左右する重要部品のため、開発品では、同社従来軸受「ロバストベーシックシリーズ Hタイプ」に対し減衰性能が約30%向上し荷重負荷能力が15%向上した同社の工作機械主軸用軸受「ロバストダイナ™シリーズ Jタイプ」を採用。同軸受の優れた減衰性能により開発品の動剛性向上に寄与し、びびり振動を抑制
右:開発品における「ロバストダイナ™シリーズ Jタイプ」搭載箇所