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アルプスアルパイン、外販向けIC量産 非接触パネル用など提案
材料相場表/PDFで公開
日本ベアリング工業会、新会長に鵜飼英一NTN社長
日本ベアリング工業会(JBIA)は、市井明俊前会長(日本精工社長)の任期満了に伴い、鵜飼英一NTN社長を新会長に選出した。任期は、2024年6月~2026年6月の同会総会まで。
日本ベアリング工業会は、ベアリング(転がり軸受および同部品)を製造する法人により構成された団体で、技術標準化、不正商品対策、環境対策、中小企業対策などさまざまな課題について、業界として対応している。
鵜飼新会長は、「日本ベアリング工業会の会長として、ベアリング業界全体の健全な発展に向け、取り組みを進めていく」と語っている。
鵜飼新JBIA新会長鵜飼英一氏
1957 年生まれ。1980 年エヌ・テー・エヌ東洋ベアリング(現NTN)入社。入社後は、国内外の製作所において品質保証・製造部門などで経験を積み、2011年に執行役員、2014年より常務執行役員、アセアン・大洋州地区総支配人を経験。2017年に取締役、2021年4月より現職(代表執行役 執行役社長)。
日本トライボロジー学会、トライボロジー会議 2024 春 東京を開催、学会賞受賞者を表彰
日本トライボロジー学会(JAST)は5月27日~29日、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで、「トライボロジー会議 2024 春 東京」(実行委員長:日立製作所・小山田具永氏)を開催、900人強が参加した。
今回は、「機械要素」、「潤滑剤」、「摩擦材料・固体潤滑」、「表面・接触」、「摩擦」、「流体潤滑」、「表面処理・コーティング」、「バイオトライボロジー」、「疲労」、「分析・評価・試験方法」、「境界潤滑」、「摩耗」、「バイオトライボロジー」、「シミュレーション」のテーマによる一般講演と、「トライボロジー技術へのAIの活用」、「トライボロジー界面における最新の計測・解析技術の進展」のテーマによるシンポジウムセッション、技術賞受賞講演と論文賞受賞講演で、全177件の発表が行われた。
28日には特別フォーラムが開かれ、寺田 努氏(神戸大学)が「ウェアラブルデバイスが切り拓く人間とコンピュータの新たな関係」と題して講演を行った。
28日にはまた、「2023年度日本トライボロジー学会賞」表彰式が行われ、ベアリング、潤滑関連では、以下などが表彰された。
論文賞「しゅう動特性に及ぼすHFO冷媒の影響(第1報)―冷媒雰囲気下のしゅう動特性および金属新生面への吸着特性―」設楽裕治氏(ENEOS)、森 誠之氏(岩手大学)…本論文はトライボロジー特性における冷媒分子構造の影響を新生面への吸着特性と分子シミュレーションによって表面化学・トライボ化学の面から検証したもので、工学的に意義深く、冷凍システムや冷凍機油の技術確立への貢献が期待できるとして評価された。
「低フリクションハブベアリングⅢ用グリースの開発」川村隆之氏・関 誠氏・近藤涼太氏(NTN)…本技術はタイヤの回転を支えるハブベアリングの回転トルクを大幅に低減させるために必要なグリース技術で、ハブベアリング以外の一般の転がり軸受にも量産適用可能でありカーボンニュートラル社会への貢献が大いに期待されるとして評価された。
「金属系添加剤非含有のディーゼルエンジン油の開発」清水保典氏・甲嶋宏明氏・葛西杜継氏(出光興産)…金属系添加剤非含有の開発油は、DPF搭載車の燃費悪化の抑制や廃棄物の削減など、省燃費・省資源への貢献が期待できることに加え、運輸業界における運転手不足や高齢化、2024年問題など、急務となっている業務効率化に対し、DPFトラブルに起因する労働環境の悪化の改善による貢献も期待できるとして評価された。
「超高速にトライボロジー現象を解明できるAI分子シミュレータおよび潤滑剤のバーチャルスクリーニング技術」小野寺拓氏・設楽裕治氏・柴田潤一氏・緒方 塁氏(ENEOS)…本技術は従来の不可能を可能にするAI分子シミュレータを世界に先駆けてトライボロジー課題へと適用し、摩擦界面の現象解明に留まらずマテリアルズ・インフォマティクス(MI)による材料スクリーニングへと発展させたもので、実験コストを抑えるとともに迅速な要因解明や材料選定に資することができ、トライボロジー分野だけでなく触媒や電池などMIの適用が盛んな他分野での材料設計にも汎用的に活用できるとして評価された。
「マイクロEHL解析と内部応力解析による表面損傷への影響因子の解明」柳澤穂波氏(日本精工)…本研究は転がり軸受表面に生じる損傷に関わる影響因子の解明を試みたもので、これまで測定が困難であった表面損傷の影響因子が、数値シミュレーション技術により明らかにされた。この成果は軸受長寿命化、エネルギー効率化への取り組みの飛躍的な加速につながる重要な知見と考えられるとして評価された。
「転がりすべり接触下における潤滑剤からの水素発生に及ぼす油種の影響」江波 翔氏(日本精工)…本研究は転がりすべり接触下における潤滑剤からの水素発生の影響因子を調べ、水素発生メカニズムを考察したもので、潤滑剤からの水素発生に関する有益な知見が得られている。本成果は白色組織はく離の対策技術や寿命予測技術の開発に貢献し、軸受の信頼性向上が期待されるとして評価された。
「着色剤による転がり軸受内のグリース挙動の可視化」小畑智彦氏(NTN)…本研究は狭小すきま通過時に分裂する特殊な着色剤微粒子の凝集体をグリースに添加し、軸受運転時の凝集体の微細化に伴うグリース色の変化を利用してグリース挙動を可視化したもので、転がり軸受でのグリース流動およびその時の流動履歴を高精度に推定できる技術である。得られた成果は低トルク化が要求される軸受の内部設計およびグリース開発に貢献すると期待されるとして評価された。
「X線回折環分析装置による転動接触疲労の評価」嘉村直哉氏(NTN)…本研究では、転動接触面から得られるX線回折環の回折強度分布の変化が転動疲労進行と相関することを確認し、これを定量化して疲労度のパラメータとして利用した。従来の手法では疲労が進行した領域で推定精度が低下するが、本手法では疲労度の評価精度を高めることが可能である。本研究成果は、転がり軸受の疲労度推定精度の向上に寄与し、機械のライフサイクル延長の観点で重要な転がり軸受再使用の可否判断といった用途での活用も期待されるとして評価された。
「染谷常雄先生を偲ぶ会」が開催
昨年7月14日に逝去した染谷常雄・東京大学名誉教授を偲ぶ会が5月25日、東京都目黒区のホテル雅叙園東京で、約70名の参列のもと開催された。染谷氏が在職した東京大学および武蔵工業大学(現 東京都市大学)の各研究室OBと、同氏が主宰した「ISO/TC123平軸受国内委員会」、日本機械学会RC分科会が合同で企画・開催したもので、発起人は畔津昭彦氏(東海大学)と飯山明裕氏(山梨大学)、三原雄司氏(東京都市大学)、三田修三氏(東京都市大学)、橋爪 剛氏(オイレス工業)。染谷常雄氏の令室・房子氏と、長男で東京大学副学長の隆夫氏を迎え、橋爪氏が司会進行を務めて、染谷常雄氏の業績やエピソードを語った。
会場のようす司会進行を務める橋爪氏
初めに発起人代表の畔津氏が挨拶に立ち、「染谷先生のご葬儀後に、東大OBを代表して私と、武蔵工大OBを代表して三原雄司先生、ISO/TC123を代表して山本隆司先生が染谷先生のご自宅を訪問してご焼香させていただいた。その際に、染谷先生と深いつながりを持つ多くの方々が集まって思い出を語る『偲ぶ会』を開きたいという話になった。逝去され1年が経過したが、本日無事に開催できることとなり関係各位に厚くお礼申し上げたい。教え子にとって染谷先生は、我々の首根っこを捕まえて“あれをやれ、これをやれ”というタイプの先生ではなく、丁寧にアドバイスはするが、後は自主性に任せる方だった。我々は、自ら研究に没頭する先生の背中を見て研究を続けることができた。ご冥福を祈りたい」と挨拶した。
挨拶する畔津氏染谷氏は1931年、千葉県東葛飾郡鷲野谷という無医村に生まれ、時折やってくる医者の自動車から漏れたガソリンの良い香り(芳香族成分)に魅了され、東京大学工学部機械工学科に入学し内燃機関の研究を始めた。1955年に大学院で川田正秋教授の研究室に入り研究を続けたが、幼少からのドイツへの憧れをばねに交換留学生の試験を受けて合格、同年11月シュトゥットガルト工科大学に留学し、半年後にカールスルーエ工科大学に移って本格的な研究を進めドイツの工学博士号を取得した。帰国後に再度日本でも博士号を取得し1973年に東大工学部教授に就任、1991年3月に東大を定年退官した。その後、同年4月に武蔵工業大学の教授に就任し10年間、研究・教育活動を続けた。その後も研究と社会活動を継続してきたが、2023年7月に逝去した。
メインの研究課題は、カールスルーエ工科大学で始めた滑り軸受に関する研究。滑り軸受の中での軸心の軌跡をコンピュータを駆使して計算して触れ回り運動を明確にする研究を進め、ドイツで博士号を取得した。二番目が、東大に戻って始めた、軸受を2方向から加振する自作の実験装置を用いた、軸受油膜の動特性と回転軸の振動の研究。これにより東大で博士号を取得し、また日本機械学会論文賞を受賞した。三番目が、武蔵工大での三原氏との共同研究となる、エンジン主軸受の油膜圧力分布を測る「薄膜圧力センサ」の研究開発。生涯を通じて滑り軸受からトライボロジー、さらには内燃機関へと研究を進め、集大成として2020年に『滑り軸受』(養賢堂刊)を出版した。一方、燃焼に関する研究も幅広く行い、科学研究費補助金重点領域研究「燃焼機構の解明と制御に関する基礎研究」では、国内の第一線の内燃機関研究者ほぼすべてを束ねてプロジェクトを成功に導き、1993年に成果報告書『Advanced Combustion Science』(Springer社刊)を出版した。
また、研究と並行して多くの社会貢献への取り組みを続けたが、中でも生涯を通じて滑り軸受の国際標準化(ISO/TC123)に努めた。1995年に日本機械学会平軸受調査班班長としてISO規格準拠のJIS原案作成に取り組んだ後、日本をISO/TC123の発言権のあるPメンバーに昇格させて標準化を推進、複数のSCの幹事国を獲得し、さらには親委員会の幹事国となってISO/TC123国際議長に就任し国際標準化を強力に推し進めた。
染谷氏に続きISO/TC123国際議長を務めた山本隆司氏(東京農工大学名誉教授)は献杯の挨拶に立ち、「染谷先生の著書『滑り軸受』の巻頭言に見られる先人の尽力・功績に対して敬意を払う染谷先生の姿勢は、研究者としての高潔な人柄を彷彿とさせるものがある。染谷先生からさまざまな指導をいただいたJIS・ISOなどの標準規格作成活動は、先生の教育・研究分野に並ぶ、大きな活動分野。先生の国際標準活動における業績を偲ぶ際、「飲水思源」という四字熟語が最もふさわしいと思う。染谷先生の先人への敬意を払う姿勢と、標準化に従事した、まさに井戸を掘る取り組みは、軌を一にしている。一方で、染谷先生がご高齢ながら標準化活動に邁進されたことはご家族の支えがあってのことで、皆さまのご協力にも心から感謝を申し上げたい」と語った。
献杯の挨拶を行う山本氏東大OB代表として挨拶した田中 正氏(元大同メタル工業)は、その人柄から染谷氏を偲び、ドイツの著名なDr. Pischingerの名前を間違って発音した際に小声で正確なドイツ語の発音を教えてくれたことや、声楽もたしなんだ染谷氏が名古屋で開催されたOB会で三田氏とともにシューベルト作『美しき水車小屋の娘』を合唱した思い出、さらには奥方の健康面のアドバイスに対し忠実に従うなど家族に対する究極のやさしさなどについて語った。また、研究活動だけでなく国際標準化活動に積極的に従事したことに触れ、2016年のISO/TC123ロンドン国際会議で国際議長退任の挨拶を行った後、ドイツ代表が欧州だけでなくアジアを含め全世界的な視野で推進した染谷氏の国際標準化活動への尽力と成果に対し感謝の言葉が述べられ、参加者全員によるスタンディングオベーションへと展開したエピソードなどを紹介した。
エピソードを語る田中氏武蔵工大OB代表では東京都市大学教授で現在ISO/TC123国際議長を務める三原雄司氏が、染谷氏が東大在籍のころから構想していた薄膜センサの研究を進めるよう念仏のように言われ、中古の成膜装置を東大OBの会社から譲り受けてトラックで運んだことや、研究がうまくいかず大学を辞めるか迷っていた矢先に開発・実験が成功し慌てて博士論文を書いたこと、薄膜圧力センサをようやく開発し薄膜センサの研究で得た基礎技術を共同で特許申請したが、ホンダ、トヨタが連名で特許申請するのは初めてと言われながらも2010年に特許が成立した、といったエピソードを紹介した。染谷氏が強く希望していた薄膜センサ研究から多くの研究成果が生まれ、数々の受賞をして多くの成果を得て、今なお電気自動車や水素エンジンの開発など社会に貢献し続けていることを報告しつつ、染谷氏の指導に対し感謝の意を述べた。
思い出を語る三原氏ISO/TC123からは笠原又一氏(元オイレス工業)が、日本機械学会平軸受調査班でISO規格準拠のJIS原案作成に取り組む中で、ISO規格に承服できない部分があったのを機に、日本がISO/TC123のPメンバーとなり標準化を推進、六つのSCのうち三つのSCの幹事国、さらにはTC123親委員会の幹事国の認証を受けた経緯を語った。また、国内委員会を支援する日本滑り軸受標準化協議会を設立、アジア・太平洋地域8カ国に対し研修会や出張セミナーを実施、熱心な教育者としての本領を発揮してアジアでの標準化への関心を一気に押し上げたことを紹介。2018年のベルリン国際会議の席上で日本をPメンバーに後押しした元DIN軸受担当Herbert Tepper博士が「ISO/TC123が50周年を迎え我々がこうして集まることができたのは滑り軸受と標準化のエキスパートでオーソリティーの染谷先生のお陰」とその功績を讃えたエピソードを語った。
挨拶する笠原氏ISO/TC123からはまた、Kim Choong Hyun博士(Korea Institute of Science and Technology)が、染谷氏のお陰で韓国がISO/TC123のメンバーになれたことに感謝の意を述べつつ、2008年に学士会館で開かれた会合で染谷氏のISO/TC123関連のプロジェクトに関するガイダンスを聞いたのが初顔合わせで、以来、温かく親切に接してもらったことや、Kim氏の担うプロジェクトなどに関して染谷氏が積極的に協力・支援し成功に導いてくれたたことなどの思い出を語った。「染谷先生は、滑り軸受のプロフェッショナルとして世界の滑り軸受産業の発展に寄与し、また、その生涯をかけてISO/TC123の活動を世界的に推進し、発展させてきた」と称賛しつつ、染谷氏の冥福を祈った。
挨拶するKim氏家族代表として挨拶に立った長男・染谷隆夫氏は、父親の背中を追ってきた氏が、2020年に刊行した『滑り軸受』の執筆に関して90歳で200頁を超える執筆をした集中力と根気を目の当たりにしたことや、『滑り軸受』の続巻の執筆に意欲的な構想があったこと、2021年に体調を崩して東大近くの病院に入院することになったが意識がはっきりとしていて海外出張で体調を崩さないよう心配されたことなどを追想。その生前最後の日(逝去日)に遡って従四位の叙位・瑞宝章中綬章叙勲が行われ、同時に位階が授与されたが、功労に関する多くの資料を関係各位が提供してくれたことに触れつつ、「皆さまからの父のエピソードを聞いて、皆さまのお陰で父が研究者として充実した人生を送れたものと実感している」と謝意を述べた。
挨拶する染谷隆夫氏最後に東大OB会の羽山定治氏(羽山技術士事務所)のハーモニカによる伴奏で、参加者全員が『仰げば尊し』を合唱し、偲ぶ会は閉会した。
羽山氏のハーモニカによる伴奏(上)で参加者全員が合唱(下)