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東京理科大学・佐々木研究室、第22回トライボサロンをハイブリッド開催

1年 1ヶ月 ago
東京理科大学・佐々木研究室、第22回トライボサロンをハイブリッド開催

 東京理科大学・佐々木研究室(主宰:佐々木信也 教授)が主催する「トライボサロン」(https://tribo-science.com/salon)の第22回目が7月27日、東京都葛飾区の葛飾キャンパスでのオンサイト参加とオンライン参加からなる、ハイブリッド形式によって開催された。

開催のようす

 

 トライボサロンは、トライボロジーに関係する情報・意見交換の場として、毎月1回のペースで開催されている。もともとは佐々木研究室の博士課程学生の勉強会として発足し研究成果の発表や最新の研究動向などに関する意見や情報交換を重ねてきたが、2022年9月からは佐々木研究室に限らず広く参加の戸を開き、関係者のネットワーク作りも目的の一つとして活動している。トライボロジーに関する情報交換、人材交流等を通し、関連技術の向上と発展に資することを目的に、次の活動を円滑に行えるよう運営に努めている。

 第22回目となる今回のトライボサロンでは、「高強度鋼の転がり疲れにおけるき裂形成」のタイトルで、横浜国立大学・梅澤 修氏を講師に話題提供が行われた。

 講演では、転がり軸受の高サイクルの転がり接触疲労におけるき裂の形成過程や、浸炭歯車におけるピッチング疲労におけるき裂形成過程(トライボフィルムの形成・寄与をまじえて)、さらには、電気自動車(EV)などで求められる高速回転・高面圧・高静粛性を実現するための歯車の疲労強度向上で要求される、鋼の窒化処理・浸炭窒化処理への期待と課題などについて紹介した。

 なお、トライボサロンに関心のある方は、以下のURLを参照されたい。
 https://tribo-science.com/salon

kat 2024年7月29日 (月曜日)
kat

NTN EUROPE、新本社社屋起工式を開催

1年 1ヶ月 ago
NTN EUROPE、新本社社屋起工式を開催kat 2024年07日29日(月) in

 NTNの連結子会社で、欧州地域で軸受などの開発、製造、販売を行うNTN EUROPEは7月10日にフランス・オートサヴォア県・アヌシー市の新本社社屋建設予定地で起工式を執り行った。新社屋は2026年3月に完成する予定で、欧州事業の中核拠点として地域戦略に向けた事業推進体制を強化していく。

 今回の新社屋建設は市の都市開発を機に決定したもので、起工式には、オートサヴォア県のイヴ・ルブルトン知事、アヌシー市のフランソワ・アストーグ市長をはじめとする自治体関係者のほか、NTNグループからはNTNのCEO・鵜飼英一氏、欧州地区担当執行役の山本正明氏、NTN EUROPE 社長のドミニク・ラヴィラ氏など、約60名が出席した。

 ルブルトン知事からは、地域雇用の創出や今後の発展への期待を込めた言葉が寄せられ、鵜飼CEO は、「新社屋で新しい技術や技能を開発し、将来の変化に対応していく」と挨拶した。

 その後、次の100年も地域とともにNTN EUROPEおよびNTNグループが成長していくことを願って、ルブルトン知事ら来賓とともに桜の植樹を行った。

 NTN EUROPE は、2008 年にNTNグループに加わり、欧州事業の中核拠点として自動車や航空機、鉄道車両、各種産業機械向けベアリング(軸受)の開発、製造、販売を行ってきた。2023年には社名をNTN-SNR ROULEMENTS からNTN EUROPE に変更し、NTNの欧州戦略における役割を高めており、今後も事業推進体制を強化するとともに、脱炭素化をはじめとする市場ニーズへの対応力の強化を通じて欧州地域における販売拡大やNTNブランドの浸透に取り組んでいく。

挨拶する鵜飼CEO

 

桜の植樹(写真左より、サディエ議長、ルブルトン知事、鵜飼CEO)

 

NTN EUROPE 本社新社屋完成予想図

 

kat

木村洋行、直接潤滑方式LEGスラスト油膜軸受の適用を拡大

1年 1ヶ月 ago
木村洋行、直接潤滑方式LEGスラスト油膜軸受の適用を拡大kat 2024年07日29日(月) in in

 1898年にキングスベリー博士はオズボーン・レイノルズの潤滑理論をもとにセンターピボット式スラスト軸受の第1号を完成させ、この独自設計の軸受を実用化、1910年には米国政府よりキングスベリー・スラスト軸受に関する特許が承認され、1912年にキングスベリー社(当時キングスベリー・マシーンワークス社)を設立した。以降キングスベリー社では着実な成長を遂げ、新しい軸受を設計しながら軸受の性能を向上させ、さらに厳しい運転条件での要求を満たす軸受の設計技術と製造技術を習得してきた。

 油膜軸受にはスラスト軸受とジャーナル軸受があるが、その中でもティルティングパッド式スラスト軸受の代表格としてはキングスベリー博士の考案したキングスベリータイプとミッチェル博士の考案したミッチェルタイプに大別される。また、潤滑方式としては100年以上前から確立されている油槽式と1980年代から登場した直接潤滑方式がある。

 ここでは、木村洋行が日本総代理店を務めるキングスベリー社の直接潤滑方式のスラスト軸受「LEG(Leading Edge Groove)スラスト軸受」について、その特長と適用によるメリットを中心に紹介する。

LEGスラスト軸受の構成および機能

 LEGスラスト軸受は、主にティルティングパッド(またはシュー)、ベースリング、オイルフィードチューブ、レベリングプレートから構成される(図1)。

 パッドは、低炭素鋼表面に、スズを主成分とするホワイトメタル合金を鋳込んだものが標準材質となる。表面温度が160℃付近に達するとホワイトメタルが溶出し始め、軸受としての機能が損なわれるため、LEGスラスト軸受では運転時のパッド表面の最高温度が120℃以下となるよう、撹拌抵抗の低減や低温油膜の形成につながる、さまざまな工夫がなされている。また、パッド本体に温度センサを取り付けてパッド表面温度を常時モニタリングし、閾値を超えた際にアラームを出す予兆保全システムが組まれることも少なくない。

 LEGスラスト軸受は一方向回転での使用を前提に設計されているため、パッドそれぞれの前縁部に給油溝(LEG)を設けることで、給油溝から直接パッド表面を潤滑できる機能を有する。また、キングスベリーのパッド底面にはピボットと呼ばれる球面形状の支点を設けており、これにより各パッドが自動でティルティング(調心)し、均等に荷重を受けようとする。通常はパッド有効長の50%の位置にピボットが設けられている(センターピボット)が、LEGの場合は一方向回転を前提としているため、パッド有効長の60%の位置にピボット(オフセットピボット)が設けられている。これによって、スラストカラーとパッドの間に「くさび型の油膜」が、より形成されやすくなる。

 ベースリングは、パッドとレベリングプレートを適切な位置で保持し、ベースリング背面の環状の給油溝とパッド表面のLEG溝を接続するオイルフィードチューブによって、ベースリング側からパッド表面に潤滑油を直接給油する。

 上下2 段のレベリングプレートは、ロータにミスアライメントがある場合でも軸方向に動作してパッドの軸方向位置を補正するため、後述するイコライジング機能をベアリングに持たせることができる。

 こうした独自の構成要素と後述する機能によって、従来の油槽式と比較してLEGスラスト軸受は以下の特長を有する。

・最も高温になりやすいパッドの75%/75%位置の表面温度が、荷重と回転スピードに応じて、油層式よりも8~28℃低下

・負荷能力が15~35%向上

・潤滑油量が最大60%低下するため、損失馬力も45%低減
 

図1 LEGスラスト軸受の構成LEGスラスト軸受適用のメリット イコライジング機能

 キングスベリー型スラスト軸受の最大の特長は「イコライジング機能」を持つことである。ミスアライメントが原因でスラスト軸受の各パッドに掛かる荷重に差異が生じた場合でも、上下2 段のレベリングプレートが動作することでパッドの軸方向位置を調整し、各パッドにかかる荷重を平均化して、パッドの片当りを防止する機能のことをイコライジング機能と呼んでいる(図2)。

 実際の回転機械では、横軸ロータのたわみや、スラストカラーとハウジングとのミスアライメントをゼロにはできない。

 このため、イコライジング機能を持たないミッチェル型スラスト軸受の場合はレベリングプレートがないため軸方向の厚さ寸法を抑えられるものの、理論上はスラスト軸受全体として許容可能な荷重でも、片当たりによって特定のパッドに荷重が集中すると、このスラスト軸受は過負荷によって損傷する可能性がある。

 これに対してキングスベリー型は、構成部品に上下2段のレベリングプレートを含むため軸方向の厚さ寸法は増すものの、レベリングプレートによるイコライジング機能の効果によって特定のパッドに荷重が集中せず、すべてのパッドの負荷レベルを平均化できるメリットがある。このイコライジング機構とティルティングパッドの機能が相まって、0.13°までのミスアライメントが許容可能となっている。
 

図2 上下2段のレベリングプレートによるイコライジング機能LEG方式

 油槽式軸受では、軸受箱内を潤滑油で満たすことで油膜を形成させているが、油膜部分以外にも油膜軸受の機能としては不要な部分にまで過剰な油量が必要とされ、また高速回転時の撹拌ロスが大きく、損失馬力が大きい。

 これに対しキングスベリー社では、さらなる高速化を図り損失馬力を低減した高効率な回転機械を実現すべく、スラストカラーとパッドの間に必要量の潤滑油のみを給油する直接潤滑方式「LEG方式」を開発している。

 このLEG軸受では、低温の潤滑油がパッド前縁側のLEG溝から直接給油され、回転とともにスラストカラーとパッドの間に均一に効率的に油膜が形成される(図3)。このため、油槽式に比べ給油量が少なくて済み、また、撹拌抵抗を小さくできるため損失馬力を大幅に低減できる。油槽式と異なりオイルシールリングも不要で、ここでも撹拌抵抗を低減している。

 軸受ハウジング下部に設けられた大きな直径の排油口からパッド後縁部の高温の残留油を積極的に排出するとともに、LEG溝からは冷却された低温の潤滑油が直接供給されるため、パッドの温度を低下させることができる。その結果、パッド温度が低くなる分だけ軸受の許容荷重を増やすことが可能となっている。

 直接潤滑方式としては欧州で開発されたスプレー式もあるが、オリフィスの機能を持ったスプレーノズルによってスラストカラーに対して潤滑油を吹き付け、パッドとの間に潤滑油膜を形成する方式をとる。給油量の削減やメカロスの低減については効果が見込めるが、スプレーノズルから低温の油が供給されてもパッド後縁部の高温の残留油によってパッドの表面温度が下がりにくくなる可能性がある。また、スプレー方式ではノズル穴がオリフィスの機能を持つためにノズルの穴径が小さく、潤滑油の管理レベル次第では油中の異物による目詰まりの発生が懸念される。

 これに対して、LEG方式では軸受ハウジングの外部にオリフィスを設けて油量を調整しているほか、オイルフィードチューブの径が大きいため目詰まりが発生することもない。

 従来の油槽式の軸受をLEGスラスト軸受に交換することで、同じ軸受サイズのままでも給油量と損失馬力の低減、メタル温度の低下を実現でき、結果的に軸受負荷能力を飛躍的に向上できる。回転機械の効率化による省エネルギー性能の向上とランニングコスト低減など、回転機械の付加価値向上が図れる。こうした軸受の油槽式からLEG直接潤滑式へのアップグレードによって、既存の回転機械の性能向上を図ることも有効である。

図3 LEG直接潤滑方式高速性能

 センターピボットのキングスベリー製を含む油槽式軸受やスプレー式の直接潤滑軸受が両方向回転に対応しているのに対し、LEGスラスト軸受は一方向回転での使用を前提に設計している(軸受速度によっては正回転の許容荷重の約60%で逆回転運転にも対応)。しかし、オフセットピボットを用いて正回転一方向の用途に特化したLEGスラスト軸受は、撹拌抵抗が極めて小さくパッド温度を低く抑えることが可能なことなどから、特に高速回転向けの用途で高い優位性を示す(図4)。

 図4に示すように、周速が上がるにつれて、油槽式軸受(図中のFLOODED)ではスラストカラーとパッド間の油膜部分から生じる機械的ロス(Film Shear)に、撹拌抵抗など荷重支持に必要のない機械的ロス(Parasitic Loss、図5参照)が加わり、損失馬力が大きくなる。これに対し機械的ロスが荷重支持に必要なFilm Shear のみとなるLEGスラスト軸受は、高速回転時の損失馬力が小さい。直接潤滑方式のメリットは、油膜とは関係のない無駄な機械的ロスと言えるParasitic Lossを大幅に減らせることにある。

図4 高周速時のLEGスラスト軸受と油槽式軸受との損失馬力の比較

 

図5 Parasitic Lossが発生する油槽式軸受の各部位LEGスラスト軸受の適用拡大:エチレンプラント向けの採用が増加

 LEGスラスト軸受を含むキングスベリーの軸受製品は、発電所関連のガスタービンや蒸気タービン、ポンプ、コンプレッサ、減速機、掘削機、船舶用タービンといったように、広範囲に適用されている。しかしながら我が国の「2050年カーボンニュートラル実現」に向けた取り組みの中で、長期的には脱炭素化に向けた開発が進む火力発電向けガスタービンではあるものの、現状は新規受注が減る中で火力発電向けのLEGスラスト軸受の採用が減少する傾向にある。

 一方で近年、エチレンプラントの蒸気タービンやコンプレッサ向けに、直接潤滑式LEGスラスト軸受の引き合いが増えてきている。エチレンプラントでは通常、分離ガス用、エチレンガス用、プロピレンガス用の3種類のコンプレッサトレイン(コンプレッサ複数台とそれらを駆動させる蒸気タービンが連結されたシステム)が稼働している(図6)。エチレンプラントでは近年プラントの大型化が進められ、大容量化に伴う荷重の増大や定格回転数のさらなる高速化と、蒸気タービンへの要求性能が厳しさを増しているが、油膜軸受で最も採用実績が多く、高速性能に優れ信頼性の高いLEGスラスト軸受が有力視されている。油膜軸受ではパッドの温度を下げることによって高荷重を支持できることから、パッドの裏金材(Shoe body)として、熱伝導性の良好なクロム銅を使用している。エチレンプラントの心臓部である一軸多段圧縮機タイプのコンプレッサもまた、極めて大型で高馬力のものが使用されるが、蒸気タービンほどの高荷重がかからないことから、通常の低炭素鋼製の裏金材を用いたLEGスラスト軸受が採用されている。

 シェールガス由来の低価格天然ガスを原料とする米国でのエチレンプラントの大規模な新設・増設や長期にわたる原油高などを背景として、中国や韓国の石油化学業界では自国内のエチレンプラントを新設・増設する動きが相次いでおり、中国や韓国のエチレンプラントの蒸気タービン・コンプレッサ向けを中心に、LEGスラスト軸受の採用の検討が進んできている。

 LEGスラスト軸受のさらなる用途拡大にあたっては、面圧を上げたい、同じサイズで性能を高めたい、同じ性能でコンパクト化を図りたいといった各種のユーザーニーズに対応する必要があるが、パッド表面の標準材質となるホワイトメタルの温度上限(120℃前後)によって、軸受の運転温度条件が制約されてしまう。そのため、使用条件に応じてポリイミド(PI)樹脂など耐熱性の高いスーパーエンプラを表面に用いたパッドや、耐食性の高いステンレス製のパッドなど、ユーザーのカスタマイズの要求に対応している。現在もさらに、より耐熱性の高いスーパーエンプラ・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂製のパッドをトライするなど、パッドの耐熱温度の向上に取り組んでいる。
 

図6 エチレンプラントの一例(提供:荏原製作所)今後の展開

 木村洋行ではキングスベリー社からの技術支援も得ながら、サービス面においても長年にわたり綿密なサポートを行っている。キングスベリー社では面圧、周速、シャフト径といった運転条件に基づく軸受性能の計算データを蓄積し、当社を通じてユーザーに提供しているが、キングスベリー社内の豊富な設備による実験・検証によって計算プログラムをアップデートしており、ユーザーにおいて、LEGスラスト軸受の採用前に、実際の運転結果に近い精度の高いシミュレーションが可能になっている。

 木村洋行では引き続き、高速・高荷重対応などの高性能の油膜軸受製品を紹介するとともに、より良いサービスを提供していくことで、タービン・コンプレッサなど回転機械のメーカーにおける、高効率製品の開発に貢献していく。
 

kat