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第03回 アイドリングストップ機構

 日本自動車工業会が謳う「エコドライブ、10のススメ」のうち、アイドリングストップの効果として10分間のアイドリング停止で燃料130ccを節約できるとしている。「アイドリングストップ機構」は、車両側で状況を判断し、自動的にアイドリングストップ/エンジン再始動を行う機構である。

 アイドリングストップ機構は、車速が20km/h程度以下になると動作の準備を始め、 (1)車速が0km/hであること(2)マニュアル・トランスミッション車の場合、ギア位置がニュートラルになっていること(3)オートマチック・トランスミッション車の場合、セレクター位置がPかNであること(4)ブレーキランプが点灯していること(5)その状態が一定時間以上継続していること、といった条件が条件が揃った時に、自動的にエンジンを停止する。アイドリングストップ状態から自動的にエンジンを始動する場合、マニュアル車はクラッチを踏む、オートマ車はセレクターレバーをDの位置に動かすことで、自動的にセルフスタータ・モータが稼働してエンジンを始動する。しかし、セルフスタータとバッテリーの負担増という問題があり、これに対しマツダが開発した「スマートアイドリングストップシステム」を通じて、アイドリングストップ機構を紹介する。

(1) 再始動開始
 4気筒エンジンの場合、4個あるシリンダーは、1個が圧縮行程、1個が膨張行程、残りの2個が吸気/排気行程というサイクルを繰り返している。エンジンを停止させる際、圧縮行程にあるシリンダーと膨張行程にあるシリンダーの空気量が同じになるようにバランスさせておく。ちょうどいいところに止めるためには、減速中にスロットルバルブを繊細に制御しておくことが要求される。狙い通りの位置にピストンを止められたら、圧縮行程にあるシリンダー内部に少量の燃料を噴射しておく。つまり、直噴ガソリンエンジンであることも条件となる。

(2) 逆回転
 エンジン始動モードに入り圧縮行程にあるシリンダーの点火プラグに着火すると、エンジンのクランク軸は逆方向に回転することになる。この時どの程度の角度を逆回転させるかがポイントで、電子制御技術が活躍する。また、この段階で膨張行程にあるシリンダー内部に燃料を噴射しておく。

提供:マツダ(3) 正回転開始
 膨張行程にあるシリンダーの内部は、クランク軸の逆回転によって行程が少し戻り、内部の圧力が少し高まる。その状態で点火プラグに着火すると、シリンダー内部で爆発が起こりクランク軸は正方向に回転を始める。

 これら一連の行程は、約0.3秒の間に行われる。

 しかし、アイドリングストップシステムでは、頻繁に起動・停止が繰り返されることからエンジンベアリングやピストンリングなどの摺動部で潤滑膜が形成されにくく(混合・境界潤滑領域となり)、技術対応がなされている。

 特にエンジンベアリングのうち主軸受に使われるアルミニウム合金軸受では、ベルトテンションにより常に片荷重となり、片あたりによる異常摩耗が生じる場合がある。これに対し大同メタル工業や大豊工業などエンジンベアリングメーカーでは、耐摩耗性に優れるアルミニウム?すず?シリコン系合金(Al-Sn-Si)のSiの粒子径を適切な大きさにコントロール(Siを塊状化)することで相手軸へのアルミニウムの凝着を抑制するなどして、耐摩耗性を向上している。

 ピストンリングでは省燃費化からすでにトップリングで0.8?、オイルリングで1.5?など薄幅・低張力化して低フリクション化を図っているが、TPRやリケン、日本ピストンリングなどのピストンリングメーカーでは、アイドリングストップ時のさらに貧潤滑下での低フリクションを実現するため、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングなど機能性表面改質での対応を行っている。

 また、オートマチックトランスミッション(AT)車や無段変速機(CVT)車ではクラッチ係合のための油圧をエンジン駆動によるポンプで発生させているため、アイドリングストップ時には油圧の低下から、エンジン起動直後の発進時に油圧の応答遅れが変速ショックとなって現れる。これに対しジェイテクトでは、アイドルストップ時の最低限の油圧を維持させるため、低圧での高効率、低騒音、コンパクト化などを実現する内接ギヤ式電動ポンプを開発している。