日本半導体製造装置協会、2020~2022年の半導体・FPD製造装置の需要予測を公表
日本半導体製造装置協会(SEAJ、会長:牛田一雄ニコン会長)は7月2日、2020年~2022年の半導体・FPD製造装置の需要予測を発表した。
開会の挨拶に立った牛田会長は、「テレワーク、オンライン、遠隔操作といった新しい生活様式を背景に、データセンタ向け・通信向け半導体、イメージセンサー、AR・VRなどへの需要がますます高まってきている。暮らし方・働き方など社会が変化する中で、半導体、FPDは重要な役割を示す。社会に貢献しつつ業界の発展につなげていきたい」と語った。
SEAJ半導体調査統計専門委員会(メンバー13社)およびFPD調査統計専門委員会(メンバー7社)による需要予測と、SEAJ理事・監事会社20社による市場規模動向調査結果を総合的に議論・判断し、SEAJの総意としてまとめたもの。
半導体/FPD製造装置の日本製装置販売高の予測では、2020年度は、2019年度に投資を抑制していた大手メモリーメーカーの復調を見込んで10.0%増の7657億円と予測した。2021年度はイメージセンサーやメモリーの需要拡大を背景に8.0%増の8270億円とした。2022年度も堅調な成長を見込み、4.6%増の8650億円を予測した。また、FPD製造装置は中国が投資の8割以上を占める構造は変わらず、同5.5%増の5020億円と予測、全体で同6.7%増の2兆7201億円と予測した。
2021年度は半導体ではメモリー、ロジック・ファウンドリーともに堅調な投資が予想されるため、同10.0%増の2兆4400億円と予測した。FPDは、G10.5 LCD投資の一巡を考慮して同6.4%減の4700億円で、全体で同7%増の2兆9100億円と予測した。
2022年度は、半導体製造装置が4.6%増の2兆5522億円、FPD製造装置が新技術を盛り込んだ投資を期待し4.3%増の4900億円で、全体で同4.5%増の3兆422億円と予測した。3兆円超えはSEAJが統計を開始して以来初となる。
■半導体産業の動向
半導体産業の動向としては、半導体を消費するアプリケーションとして、スマートフォンに代表されるコンシューマー製品や車載、産業機器で大幅な減少が見込まれる一方で、テレワークや巣ごもり需要の増大でデータトラフィック量が爆発的に増加し、データセンタ関連需要が急増している。
世界中の人々の行動様式は変化を迫られ、働き方、製造現場、購買行動、教育・医療には大きな変革が求められている。このような新しい行動様式では、5GやAI、IoT、自動運転などの需要がますます高まるため、半導体需要は中長期的には確実に拡大していくと見てる。
世界半導体市場統計(WSTS)の6月発表によると、2020年の世界半導体市場成長率は、3.3%増と堅調な成長が見込まれている。特に、2019年の価格下落により32.6%減と大きく落ち込んだメモリーが15.0%増と復調する。2021年も半導体全体で6.2%増と継続的な成長が予想されている。
設備投資については、2019年から2020年前半にかけてDRAM、3D-NANDともに低調だったが、2019年後半からロジックメーカーやファウンドリーが積極的に投資した。COVID-19の再拡大や米中摩擦による投資マインドの冷え込みなど見通しに不透明感はあるが、2020年もロジック・ファウンドリーにおいては堅調な投資継続が期待され、2020年後半からは、データセンタ需要の急増を背景としたメモリー投資の回復が見込まれる。
■FPD産業の動向
FPD産業の動向としては、大手パネルメーカーの営業利益率は2017年第2四半期をピークに低下傾向が続いており、2020年第1四半期(1~3月)では、韓国の最大手企業も営業赤字を記録した。韓国を中心に、既存のTV用LCDラインを停止し、中国を含むグループ全体の生産能力の最適化や、新技術を用いたパネルへのライン転換が行われようとしている。
現在、G10.5/G8.6のLCD投資とG6のOLED投資を主体に、投資の8割が中国に集中している。COVID-19の初期感染拡大は中国で起きたため、2020年1~3月は海外渡航制限によって現地での据付・調整・立上げが困難となった。影響は現在まで長期化しており、スリップ分を翌年度に持ち越さず取り戻せるのか、年間を通した販売高の予測が例年に比較して難しくなっている。
2021年度において、G10.5のLCD投資は一巡が予想されるが、SEAJでは、既存のディスプレイとの技術的な差別化を狙った新たな競争軸が生まれてくると予想する。それだけに、2022年度の投資額や投資配分は不透明であるが、先進的な装置メーカーにとっては新たな事業機会と見ている。