日立造船は、フィルム基板対応の反射防止膜(AR膜)と防汚膜(AF膜)一体型のロールtoロール成膜装置「HARD-F series」の販売を開始する。同装置でコーティングされた膜は、デジタル端末などのディスプレイ、各種インストルメントパネルなどに用いられ、反射防止、撥水効果、指紋などによる汚れの防止効果の向上を図る。二つの機能を備える一体型装置の開発により、耐久性・防汚性能の向上、製造ラインのコンパクト化、製造時間の短縮化、コスト削減を可能にするという。
主な特徴は以下のとおり。
- フィルム基板上への連続成膜が可能
同装置はフィルム基板上に連続的にAR膜とAF膜の成膜を行い、でき上がったフィルム基板をさまざまな形状の基材に貼り合わせすることができる。 - 従来品と比して耐久性・防汚性能が向上
AR膜にはスパッタリング法、AF膜には面蒸着法を転用したインライン蒸着法を採用(両方法とも同社の独自開発技術)。結果として防汚耐久性が従来品と比べて2倍以上に向上した。 - 製造ラインを効率化
従来品は乾燥工程が必要で、製造ラインが約20m程度あったが、二つの装置を一つに、さらに蒸着法の採用で乾燥工程が不要なため10m以下までコンパクト化が可能。 - 製造時間の短縮化
従来、AF膜はウエット工程+乾燥工程が必要だったが、AF膜をインライン蒸着法でコンパクトな設計とし、これまで時間を要した乾燥時間をなくすことで製造時間を2/3相当に短縮した。
同社は2008年より、フィルムなどのフレキシブル基材に真空状態で高機能膜を成膜する「ロール to ロール成膜装置」を販売している。近年、モバイル端末やインストルメントパネルなどに用いられるフレキシブルなフィルムやガラスの高度化に伴い、高機能膜へのニーズが高まっている。従来は、AR膜とAF膜で成膜プロセスが分かれていたが、それぞれが製造ラインスペースの確保を必要とすること、乾燥工程が欠かせず製造時間短縮と電力消費削減が困難であることが課題だった。