日本ダイカスト協会主催の「2018日本ダイカスト会議・展示会」が11月8日~10日の三日間、横浜市西区のパシフィコ横浜で開催、展示会では昨年の132社から203社と出展企業が増加、展示スペースも50%増と大幅に規模を拡大した。
ダイカストとは、溶融金属を精密な金型に圧入することにより、高精度で鋳肌の優れた鋳物をハイサイクルで大量に生産する鋳造方式の一種。金型などに多く適用されており、それに伴い様々な表面改質技術が採用される分野の一つ。今回の展示会でもブラスト、熱処理、コーティングなどの受託加工を行う企業や装置メーカーが以下のような展示を行った。
RTMは、金型のコーナーR部などのヒートチェック改善にレーザー焼入れとガス軟窒化処理「タイマ処理」を併用する「タイマLH処理」を提案。レーザーを照射する条件をコントロールすることにより母材の強化深さを変化させることができるという。同社が行ったヒートチェック寿命の比較では、他社窒化処理品が15000ショットに対して、タイマ処理で45000ショット、タイマLH処理で60000ショットまで寿命が延長したという。
RTMのブース
オリエンタルエンヂニアリングは、アルミダイカスト金型の諸問題を解決する表面改質技術「ブラックパールナイト」を紹介。この技術は、圧縮残留応力を付与できるセンサ制御されたガス窒化と溶着、溶損、焼付きに効果を発揮する制御された酸化処理の複合処理で、さらに潤滑性を付与できる炭化処理を複合することもある酸炭窒化処理。セラミックコーティング以上の耐溶損性、耐焼付き性、離型性を有するとしており、溶湯金属や固体金属の反応がなく離型剤フリーや窒化処理以上の耐ヒートチェック性向上を図ることができるという。また、工具鋼の焼戻し温度以下の低温処理により変形・変寸がないことも特徴の一つだとPRを行った。
オリエンタルエンヂニアリング「ブラックパールナイトの処理サンプル」
新東工業は、ショットピーニングを施すことで金型表面に圧縮残留応力を付与し耐ヒートチェック性を改善することにより型寿命が2倍以上に向上する「D-CHECK」、冷却孔止まり穴部へのショットピーニングにより冷却孔の応力腐食割れを抑制することで型寿命を3倍以上に向上する「D-SCC」、ダイカスト金型に細かなディンプルを形成することで鋳造時の湯流れを変化させ、溶湯の表層の温度低下、凝固速度の違い、流速の違い、空気の巻き込みによる不良発生を大幅に低減させる「D-FLOW」を紹介した。また、ダイカストマシンの離型剤オイルミスト対策として、ブラスト装置で培った集塵・気流制御技術を応用して開発された集塵機の提案も行った。
新東工業のブース
ニッチューは、ダイカスト製品用のハンガータイプショットブラスト装置「HBNF-156」の実機を展示。同装置は、ブラスト室が2室装備してあり、1室で作業者がワークの着脱をしている間、区切られた別の1室でブラスト処理を行うことができるため、効率的な作業が可能。バリ取り、肌調整用ショットブラスト、打痕のない処理もハンガー型により可能になる。またダイカスト用の投射材として、研削能力に優れバリ取りに適したステンレスカットワイヤー、硬度が高くバリ取りや湯じわ・汚れ除去に適した合金アルミカットワイヤー、硬度が低くダイカスト製品を傷つけることなくブラスト処理ができるためクリーニング用途に適している純アルミカットワイヤーなどの紹介も行った。
ニッチューのブース
ビヨンズは、耐溶損性を向上するアルミダイカスト金型向けの新しい被膜「LELLYON TZ」を提案。下地にイオン窒化を施すことで耐疲労強度を向上し、既存のコーティング(HV3000、耐熱温度800℃)に対してHV3400と耐熱温度900℃に向上したことで過酷な条件下での焼付き・かじり抑制に効果を発揮する。また、成膜時の蒸発源に新方式を採用したことによりアーク法の難点であったドロップレットを大幅に抑制、平滑な表面を形成できるとした。
ビヨンズ「コーティングサンプル」