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パーカー熱処理工業など、第16回表面改質技術研究会を開催

 パーカー熱処理工業( http://www.pnk.co.jp )主催、日本パーカライジング( http://www.parker.co.jp/ )共催、パーカーS・N工業( http://www.parker-sn.co.jp/ )・日本カニゼン( http://www.kanigen.co.jp/ )協賛の「第16回表面改質技術研究会」が10月12日、東京都千代田区の日本工業倶楽部で開催、約200名が参加した。

 当日は、パーカー熱処理工業の安部壽士社長が「今年を振り返ると、異常とも言える災害の続発だった。6月に発生した大阪府北部地震に始まり、7月の西日本豪雨、8月の災害級である酷暑、9月の台風21号による災害、さらには北海道胆振東部地震、追い打ちをかけるように台風24号の発生などがあり、当社グループにおいても建屋等に被害があった。ご出席の皆様におかれましても被害があったと推察し、心よりお見舞い申し上げる。さて、先週はノーベル医学生理学賞を京都大学の本庶佑特別教授が受賞。5年連続で日本出身者がノーベル賞を受賞したニュースは同じ日本出身の者として感に堪えない。本庶先生のコメントを聞く中で印象に残っている言葉は、“自分の頭で考え、自分の目でものを見る、そして納得する。そこまで諦めない”という言葉だ。この言葉と同様のことを過去の受賞者である研究者の方々も述べられており、まさに基礎研究の神髄を極める言葉だと納得した」と開会の挨拶を述べた後、各講演の概要紹介を行い、以下のとおり講演が行われた。
挨拶する安部社長挨拶する安部社長

「無電解ニッケルめっきにおける設備技術」太田増幸氏(日本カニゼン)…硫酸ニッケル・次亜リン酸ナトリウム・水酸化ナトリウムなどアルカリ溶液を主成分とする無電解ニッケルめっき液の各成分の目的・役割や、硫酸ニッケル濃度・pH、めっき温度を管理・制御して自動補給を行うことで、めっき液の最適な状態を維持する自動分析補給装置(SACP)、めっき槽内のめっき液の撹拌と液中の固体コンタミを除去するための無電解ニッケルめっき専用フィルターポンプ(SFVP)などについて解説した。電動バルブを使用し硝酸パッシベーションやめっき槽の洗浄を自動化する自動硝酸パッシベーション装置などの無電解ニッケルめっき設備を紹介した。

「地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合技術研究所の概要と主要事業について」馬来義弘氏(神奈川県立産業技術総合研究所)…基礎研究から事業化までの一貫した支援の実施と産学公金連携による企業支援ネットワークの構築を通じて、イノベーション創出支援(売れる商品づくり支援)に取り組む同所の概要について紹介したほか、研究開発・技術支援・事業化支援・人材支援・連携交流という五つの主要事業について説明。事業化支援の事例として、「DLCコーティング成膜ピストン」(不二WPC)など多数の例を示した。また、40年以上にわたる自身の研究開発の経験を踏まえて、①研究開発の重要性を改めて認識することが必要、②ニーズ(潜在ニーズ)の把握、③競合他社とのベンチマーキング、④研究開発テーマ&研究開発目標の設定、⑤研究開発実施可否の判断、⑥外部との共同開発の心得、⑦研究開発断念の判断・タイミング、⑧デスバレーに対する留意点・予防方策、⑨目標は高く、明るく、しぶとく達成、⑨体と心の健康に留意といった研究開発における留意点を強調した。                                                                 
「電動化による商品の変革とGame Changeを起こす生産技術」塩飽紀之氏(日産自動車)…CO2規制など自動車を取り巻く環境に対応してEV、e-POWER、パワートレインに求められることとして、EVモーターの高効率化では高回転化が、e-POWERのエンジンでは燃焼効率向上・コンパクト・高出力・静粛性などが、増速機と減速機ではコンパクト化しつつ部品点数が増える中での低フリクション・静粛性などを挙げた。また、エンジンの将来商品技術・生産技術としては内燃機関の効率を向上するフリクション低減技術として水素フリーDLCコーティングと低粘度エンジンオイルとの組み合わせ技術による大幅なμ低減などを紹介した。燃費向上を目的とした軽量化では、シリンダーライナーをなくしつつピストンリングとの良好な摩擦摩耗特性を実現する溶射コーティングボアなどの効果を紹介した。駆動ユニットの将来商品技術・生産技術では、電動化による小型・軽量・高回転化に伴う高負荷化による歯車の破損モードの変化や、高精度歯車(低歪み)の実現、高効率化(フリクション低減)に対応する表面改質技術の貢献について説明。組み合わせ技術による性能向上が今後必要と述べた。さらに商品・生産技術にGame Changeを起こす将来生産技術として、鋳造や鍛造で実現できない構造を早い造形速度で低コストに可能にするアディティブマニュファクチャリング(AM)に着目。商品付加価値を上げつつ量産適用できるAMの確立には、表面改質など周辺技術を含めたコンカレントな取り組みが必要と総括した。
第16回表面改質技術研究会のもよう第16回表面改質技術研究会のもよう