日本粉末冶金工業会、平成29年度工業会賞を発表
日本粉末冶金工業会はこのほど、「平成29年度日本粉末冶金工業会賞」を発表した。同賞は、1979年度に粉末冶金工業普及事業の一環として創設、2017年度で39回目となる。
同賞は、工業会事業に貢献した個人を表彰する「業界功労賞」と優れた粉末冶金製品を表彰する「新製品賞」、優れた原料粉末を表彰する「原料賞」、優れた製造設備を表彰する「設備開発賞」からなる。「新製品賞」は、さらに「デザイン部門」、「材質部門」、「製法開発部門」に分けて審査、2003年度から、選考委員会で特に優れた受賞案件とされたものに「工業会大賞」を授与している。また、賞の対象にならなかった応募の中から、特徴のあるものを「奨励賞」として表彰している。
今回は新製品賞・デザイン部門、新製品賞・材質部門、奨励賞から受賞企業が選出された。受賞一覧は以下のとおり。
新製品賞・デザイン部門
・トヨタ自動車「低コスト焼結ラビニヨキャリアの開発」…成形、焼結、ロウ付け、加工、検査を1ラインで実施し、かつラビニヨキャリアのサイズ(大型部品)は業界に対する貢献度は大きい。焼結材と溶製材の接合はさらなる複雑形状製品開発への可能性が広げた点が評価された。また、省人化や各装置の低コスト化も十分考慮され、今後の業界への影響も大きいことも評価された。
・住友電気工業「複雑形状を有する高精度非円形プーリーの開発」…新しい形状の製品で外径が100mmと、そのサイズにもかかわらず高精度化(直角度、輪郭度)を達成している点や、欧州を中心にした非円形プーリーで採用(10千個/月)されていることが評価された。従来工程の製造条件でも最適化によって、さらに複雑で高精度の焼結部品が製造できることを本製品は示している。
・ダイヤメット「低燃費ATオイルポンプ用スプロケットドライブの開発」…薄肉形状の製品かつ割れや変形の起こりやすい高周波焼入れ後に追加加工なしで、平面度0.05mmを達成した点や、15~20%のコストダウンにより板金ではなく焼結品が採用された点が評価された。
新製品賞・材質部門
・ファインシンター「高い耐摩耗性を有する高速車用Fe系焼結合金すり板」…従来品に対して約4割の高寿命化を実現し、かつ相手部品のトロリ線の摩耗を抑えるなど、画期的な高性能化を実現した点が評価された。現状ではほぼ粉末冶金法しかこの特性が達成できないため、他工法への切り替えが難しいという点からも業界への貢献が認められた。
耐高面圧性と耐摩耗性に優れる鉄銅系焼結含油軸受
・ダイヤメット「耐高面圧性と耐摩耗性に優れる鉄銅系焼結含油軸受」…鉄-銅系と従来の材料であるものの、要求を満足するために、組織を制御し、目的とする特性を持つ材料を開発した点が評価された。特に銅を増やすと寸法制御が難しくなる点を原料の選択や焼結条件を変えて最適化したことは、多くの試行錯誤が予想される。それらを制御した点、また今後、適用用途の拡大見込まれる点も評価された。
奨励賞
・住友電気工業「ガソリン直噴機構部品ガイドリフターの開発」…鋳造から焼結品への切り替えた点、およびグローバル生産でも問題なく対応できるように現行技術の組み合わせによって要求仕様を満足している点が評価された。日本では作れるが海外では作れない先端製品の開発も必要だが、海外で日本と同等品が作れないという問題も多くある。本開発のように最初からグローバル生産を見越した技術開発も今後重要になるとして、評価された。
・ダイヤメット「サイジングレス薄肉スプロケットの開発」…板金に対し15~20%のコスト低減により焼結化できたことが評価された。近年全数検査など品質管理のため検査コストが増加する傾向にあるが、100mmを超える大径かつ肉薄製品についてサイジングレスかつ磁探レスを達成した点が、今後他の製品の手本となる開発として評価された。