ビクトレックス社(本社:英国ソーントン・クリーブリーズ)は、樹脂ギヤの設計および製造を専業とするKleiss Gears社(米国、以下 Kleiss社)を買収する。この買収によってビクトレックス社はギヤの設計、評価および製造能力を手に入れることになり、金属製ギヤをPEEKポリマーで代替することによって実現する自動車の燃費向上やNVH低減に向けた解決策をより迅速に提供する体制が整うことになるという。
自動車の燃料消費の約7割は動力とはならずに、内部の部品同士の摩擦抵抗等によって失われると言われている。その核となるのはエンジン、トランスミッションやブレーキ内部の機構部品となる金属製ギヤなどの摺動部品。これら摺動部品を樹脂化できれば摩擦係数は小さくなり、摩擦抵抗によるエネルギーロスを低く抑えて大幅な燃費向上が図れる。また金属製ギヤを樹脂化するとNVH(不快なノイズや振動)をおよそ半減できるというメリットもある。
同社のPEEKは、自動車内部の機構部品を金属代替できる数少ない樹脂材料の一つだという。これまでも自動車部品をはじめ、航空宇宙分野やエネルギー分野で金属代替を行った実績がある。ギヤの樹脂化を成功させるには材料特性を最大限に活かし、ギヤの歯が噛み合う際に発生する歯元応力を小さくするための形状設計と、その緻密な評価と検証の繰り返しによる開発作業が欠かせない。
Kleiss社は20年以上にわたって、ビクトレックス社のPEEKをはじめとする高性能ポリマーの特性を最大限に活用した樹脂ギヤで金属代替を行ってきた。今回の買収により、Kleiss社のギヤの高精度設計、試作および製造能力とビクトレックスの材料テクノロジーとグローバル販売体制とが一体になることで、厳しい環境で使用されるギヤの開発に必要なあらゆるソリューションがワンストップで手に入ることになる。