三菱重工業は、クラス最速の22秒で加工でき、また、2種の異なるワーク(加工対象物)を同時に加工できる2頭式ヘリカルブローチ盤「BH50-17」を開発した。
同品は、2012年4月に買収した米国フェデラル・ブローチ社(Federal Broach Holdings, LLC)が持つ先進技術を活用したもので、機械の高さを5mに抑えることで日本を含むアジア市場の標準的な工場に適したコンパクトサイズを実現している。日本国内およびアジア市場を中心に、自動車の変速機などに使われる内歯車の一種であるヘリカルリングギヤの製造向けニーズをブローチ工具との一括供給により開拓する。
ヘリカルブローチ盤は、内側に斜めの歯すじを持つリング形状の歯車(インターナルヘリカルギヤ:内はすば歯車)を加工する工作機械。長い棒状切削工具のヘリカルブローチがワークに対して回転しながら引き抜き加工を行い、斜めの歯すじを形成する。
開発品は、フェデラル・ブローチ社が米国の大手自動車メーカーなどに多数の納入実績を持つ機種をベースに、日本やアジアでの使用条件に合うよう開発したもの。52kWの高出力モーターを搭載することで1軸当たり25トンの引き抜き力を実現し、また、直線軸に摺動面を採用することで機械剛性を高め、高速・高精度な加工を可能とした。
さらに、2台のテーブルを個別のサーボモーターで独立制御するため、異なるワークの2頭同時加工が可能。また、機械をコンパクト化したことでピットなしでの設置が容易になった。このほか、2種類の工具交換用クレーンの搭載による工具交換の円滑化や、万全の切粉処理などメンテナンス性も高めているという。
ヘリカルリングギヤは、遊星歯車の外輪となるもので、乗用車の自動変速機、ハイブリッド車のギヤボックス、無段変速機(連続可変トランスミッション)などの複雑化や増産の流れを受けて、需要の増大が見込まれている。
同社によると、ヘリカルブローチ加工は、内歯車の高速・大量生産に適し、かつ品質管理が容易である特長を持っているが、ヘリカルブローチ工具の精度や製造ノウハウ、ブローチ盤との適合性などがワークの仕上がりを大きく左右するため、ブローチ工具とブローチ盤を一括で供給できる企業が、市場競争で高い優位性を発揮できる、としている。
フェデラル・ブローチ社は、ブローチ工具とブローチ盤の世界的メーカーで、北米および欧州での売り上げが約80%を占めている。中国をはじめとする東南アジア市場の開拓余地が大きいことから、三菱重工業 工作機械事業部の本工場(滋賀県栗東市)にフェデラル・ブローチ社の技術を移転し、増産・拡販に向けた体制整備を進めており、同品の製品化はその第一弾となるもの。