島津製作所は、コンパクトな卓上型の筐体で、樹脂製品、骨や歯、医薬品などのサンプルをキャリブレーション(較正)フリーで素早く簡単に3次元観察できるマイクロフォーカスX線CTシステム「inspeXio SMX-90CT Plus」の販売を開始した。
マイクロフォーカスX線CTシステムとは、微小焦点のX線発生装置とX線検出器の間でサンプルを回転させ、観察したデータを元にサンプル内部の3次元構造を再構成する装置。部品の内部欠陥の観察や、3次元的な繊維配向、形状の計測など、幅広い分野で用いられている。
近年、3Dプリンターが普及しつつあり、通常の加工方法では不可能な3次元内部構造を持った樹脂部品を製作することができるようになっている。しかし、製作された樹脂部品は複雑な内部構造を持つため、その構造が正常かどうかを外部から観察し判断することは困難。サンプルによっては図面の用意も難しく、このような樹脂部品の内部構造や3次元出力したいサンプルを素早く簡単に観察できるマイクロフォーカスX線CT装置が求められているという。また、生体・骨・軟組織の研究分野においては、実験動物を用いた骨粗しょう症、リウマチなどの病気に関連する骨組織の観察や、骨補強材の構造解析にCT撮像が利用されており、今後、生体素材向けのCT装置に対するニーズはさらに高まることが予想されるという。
同品は卓上での使用が可能なコンパクトサイズでありながら、開口部には垂直方向と奥行き方向にそれぞれ200mm以上のスペースがあり、大きなサンプル(最大:直径160mm×高さ100mm)も容易にセッティングできる。サンプルをCTステージへセットした後は、自動較正機能によって、スタートボタンをクリックするだけで、誰でも簡単に美しいCT撮像が可能。また、同社独自の遮へい設計技術に加えて、ドア・インターロック機構を装備しており、X線被ばくへの対策もなされている。
また、最新のHigh Performance Computing(HPC)技術を応用した超高速演算処理システムを標準搭載し、計算処理能力が約20倍(同社従来比)高速化した。スキャン条件次第では、データ収集完了からデータ表示までの時間を340秒(同社従来システム)からおよそ15秒まで短縮できる。さらに、撮像した画像データを、医用画像情報フォーマットの世界標準規格であるDICOMフォーマットに変換することが可能になった。これにより、マイクロフォーカスX線CTで撮像したデータをそのまま他のDICOM対応ソフトウェアでも扱うことが可能になった。