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第64回自動車技術会賞発表、安達 美智雄氏(デンソー)らが技術貢献賞を受賞

表彰される安達氏表彰される安達氏 自動車技術会は、自動車工学および自動車技術の向上発展を奨励することを目的に1951年より毎年実施されている「自動車技術会賞(第64回)」の受賞者を発表、22日に横浜・みなとみらいのパシフィコ横浜で授賞式を開催した。技術貢献賞では「可変動弁技術の開発と実用化への貢献」で安達 美智雄氏(デンソー)、論文賞では「自動車用ハイポイドギヤの高効率化」で斎木康平氏(富士重工業)ら5名、技術開発賞では福原恵美氏(日産自動車)ら5名が受賞するなど合計26件、79名が賞状・記念品を授与された。受賞理由などは以下のとおり。

 「可変動弁技術の開発と実用化への貢献」安達 美智雄氏(デンソー)……位相可変型可変動弁システムは、エンジン性能の向上に貢献する重要な要素であり、現在のガソリンエンジン車の高効率・高性能化とクリーン化に不可欠の標準的なシステムとなっている。安達氏は、本システムの開発初期から関わり、現在の標準方式となっているベーン式可変動弁システムを世界で始めて量産化するに当たって、初期の設計から品質向上とグローバル生産の実現などに多大な貢献をした。さらに、革新的なフィードバック機能付きディーゼルコモンレールシステム、空調連携型アイドルストップシステム、次世代直噴ガソリン噴射システム等の世界初の多くの製品の市場投入にも尽力した。

 「自動車用ハイポイドギヤの高効率化」……斎木康平氏(富士重工業)、渡辺 健氏(同)、白木 啓一郎氏(同)、深町俊介氏(同)、飛澤 圭一郎氏(富士テクノサービス)……ハイポイドギヤは高強度で静粛性にも優れているため、自動車の最終減速装置に広く用いられているが、はすば歯車等に比べすべりが大きく、伝達効率が低い。斎木氏らはハイポイドギヤの伝達ロスが測定できる実験装置を作製し、ギヤ噛合い効率は負荷トルクに関係なく一定であることを示した。その結果から導出されたギヤ噛合い効率計算式をもとに、ハイポイドギヤの高効率化には小オフセット化と弱ねじれ角化が有効であることを検証した。この解析手法を用いて、はすば歯車と同等の高効率ハイポイドギヤを新型変速機に採用し、省エネルギー化を達成したことは、今後の歯車研究の発展に大きく寄与するもので、高く評価された。

 「世界初1.2GPa級高成形性ハイテン材の開発」 福原恵美氏(日産自動車)、石内 健太郎氏(同)、岩崎 剛氏(同)、吉田 健氏(同)、徳光偉央氏(同)……車体の軽量化を目的に強度の高い高張力鋼板の適用が拡大しているが、一般に高強度化するとプレス成形性や衝突性能に影響する延性が低下し、またスポット溶接強度を確保しにくいという問題があり、冷間プレス用の車体構造部材には980MPa級ハイテン材の適用が限界とされていた。福原氏らは、材料の組織を極限まで微細化させ、かつ硬質層と軟質層の比率が最適な複合組織とすることにより、高強度化と高延性化を同時に実現できる材料を開発した。さらに、開発材に最適な制御となるスポット溶接技術、成形解析精度向上により既存プレス設備で成形を可能とした成形技術の開発を進め、1.2GPa級ハイテン材の冷間プレス車体構造部材への実用化を達成した。今後の軽量化技術として高く評価された。

 受賞者・業績一覧は以下のとおり。

学術貢献賞


・安部正人氏(神奈川工科大学)「自動車の運動力学と運動制御の学術的発展への貢献」
・飯田訓正氏(慶應義塾大学)「内燃機関の高効率燃焼および排出ガス低減への貢献」

技術貢献賞

・安達美智雄氏(デンソー)「可変動弁技術の開発と実用化への貢献」
・清水康夫氏(本田技術研究所)「操舵装置の電子制御化技術による自動車の進歩発展への貢献」

浅原賞学術奨励賞

・岩崎宏明氏(トヨタ自動車)「目視検査作業の定量値化を目指した人の検査メカニズムのモデル化」
・秋元賢治氏(本田技術研究所)「Development of Pattern Recognition Knock Detection System using Short-time Fourier Transform」
・ポンサトーン・ラクシンチャラーンサク氏(東京農工大学)「無信号交差点における歩行者事故防止のための危険予測運転ドライバモデルの構築」

浅原賞技術功労賞

・水谷良治氏(トヨタ自動車)「自動車駆動用モータの進歩発展への寄与」
・齋藤俊博氏(本田技術研究所)「パワートレイン摺動部挙動解析技術の進歩発展への寄与」

論文賞

・小島昭和氏(デンソー)、竹内克彦氏(同)、内山 賢氏(同)「ディーゼル噴射系の進化 ―超高圧噴射が拓く世界―」
・隅田祐介氏(早稲田大学)、紙屋雄史氏(同)、大聖泰弘氏(同)「各種電動車両に搭載したリチウムイオン蓄電池の許容劣化度に関する検討」
・皆川正明氏(Dynamic Research, Inc.)「車両運動特性上の後軸横力特性の役割」
・林 朋博氏(デンソー)、鈴木雅幸氏(同)、馬﨑政俊氏(同)、池本雅里氏(トヨタ自動車)「等倍モデルによるディーゼルノズル内流れと噴霧燃焼の可視化解析」
・西垣佳臣氏(トヨタ紡織)、川野健二氏(同)「着座姿勢の個人差を表現するマネキンモデルの開発」
・斎木康平氏(富士重工業)、渡辺 健氏(同)、白木 啓一郎氏(同)、深町俊介氏(同)飛澤 圭一郎氏(富士テクノサービス)「自動車用ハイポイドギヤの高効率化」
・吉村友志氏(堀場製作所)、浅野一朗氏(同)、宮井 優氏(同)、中村博司(同)「加熱NDIR分析計を用いた過渡EGR率計測とEGRガス濃度応答時間の解析」
・稲垣英人氏(豊田中央研究所)、勝見則和氏(同)、山田智久氏(同)、野沢 右氏(同)、川合清行氏(TPR)「ピストンリング諸元が吸気管負圧時のオイル上がりにおよぼす影響」
・平岡敏洋氏(京都大学)、髙田翔太氏(西日本高速道路エンジニアリング関西)、川上浩司氏(京都大学)、野崎敬太氏(同)「自発的な行動変容を促す安全運転評価システム(第1報)(第2報)」

技術開発賞

・片岡 準氏(スズキ)淡川拓郁氏(同)、小島洋幸氏(同)、内山雅仁氏(同)「リチウムイオン二次電池を用いた減速エネルギー回生システムの開発」
・片岡一司氏(マツダ)、鐵野雅之氏(同)、林原 寛氏(同)、山田 薫氏(同)、旗生篤宏氏(同)「走る歓びと環境性能を両立する新世代クリーンディーゼルエンジン」
・大塩洋彦氏(小糸製作所)、堀 宇司氏(同)、望月清隆氏(同)、毛利文彦氏(トヨタ自動車)、中川享俊氏(同)「配光可変ヘッドランプの研究開発と商品化」
・久保川 範規氏(日産自動車)、楢崎拓也氏(同)、蔡 佑文氏(同)、中山 大氏(同)、菅原直人氏(同)「転舵角と操舵力を独立制御可能な操舵システムの開発」
・中村哲男氏(カルソニックカンセイ)、小野田 剛氏(同)、寿原雅也氏(日産自動車)、徳毛 一晃氏(同)、石井 郁氏(同)「超薄肉射出成形インストルメントパネル表皮技術の開発」
・島田裕央氏(本田技術研究所)、樋口成智氏(同)、仁木 学氏(同)、田中正志氏(同)、細田正晴氏(同)「優れた燃費性能と力強く滑らかな加速を両立した新2モータハイブリッドシステムの開発」
・福原恵美氏(日産自動車)、石内 健太郎氏(同)、岩崎 剛氏(同)、吉田 健氏(同)、徳光偉央氏(同)「世界初1.2GPa級高成形性ハイテン材の開発」
・細谷 満氏(日野自動車)、木村昌裕氏(同)、大井 寛氏(同)、佐藤信也氏(同)、平林 浩氏(同)「尿素水を必要としないNOx、PM同時低減システムの開発」