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産総研、CNTをゴムに分散しナノ・マイクロ精度で金型成形

 産業技術総合研究所は、ネットワーク構造の単層カーボンナノチューブ(CNT)をゴムに分散させることで、数百nmやμmの精度で金型成形できる技術を開発した。

今回開発した単層CNT/ゴム複合材料表面のプレス成形加工技術今回開発した単層CNT/ゴム複合材料表面のプレス成形加工技術

 ゴムに代表されるエラストマーを加工する方法としては、従来から金型成形加工や切削加工などが知られている。特に金型成形加工は生産性に優れ、連続生産もでき、大量生産に適しているが、プレス成形中の気泡混入や、成形後のクリープにより、nm、μm単位での高精緻な加工が事実上不可能であった。今回、ネットワーク構造の長尺単層CNTをゴムに分散させることで、ゴム中で自由自在に変形できる支持材としてCNTが働き、ゴムの柔軟性と高精緻な形状維持性を両立した。

 実験では、フッ素ゴムに直径1nmほどの筒状炭素構造物であるCNTを加えた。ゴム中に分散したCNTが支柱の役割を果たし、成形後の変形を抑える。ゴム質量に対して1~2%程度のCNTを混ぜると高精密に成形加工できることを確認した。また、ニトリルゴム、アクリルゴムといったフッ素ゴムよりも柔らかいゴム材料でも同様の効果があったという。

 今回開発した技術を用いると、自由自在にマイクロサイズのゴム表面加工を、数百nmやμm精度で行うことが可能になり、例えば表面加工することにより濡れ性、密着性、光学特性を制御した高機能ゴムへの応用が期待できる。今後は、産業界、特にゴムメーカーに対してニーズ調査を行うとともに、興味を持った企業と連携し、表面構造に起因した特性制御によって高機能化した高精密加工ゴムの新規用途開拓を進めていく。なお、本研究開発は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)の一環として行われた。