山陽特殊製鋼( http://www.sanyo-steel.co.jp/ )は、耐摩耗性や耐焼付き性に優れた窒化粉末ハイス「SPM X 4N」を開発した。耐摩耗性は同社従来材(汎用粉末ハイス)の4倍以上を実現したことから、過酷な環境で使用される金型・打ち抜きパンチ・スリッター等をターゲットとしている。
同品は金属粉末の状態で、鋼中に窒素を高濃度に含有させることで、鋼中の炭化物の一部を炭窒化物に変えている。炭窒化物は、炭化物よりも鋼中に微細分散するため、耐欠損性に寄与する靱性も改善するという。また、炭窒化物には摩耗係数が小さいという特長があり、耐摩耗性・耐焼付き性で優れた特性を発揮する。
炭窒化物分布状況比較
同品は、この窒化された金属粉末を高温で成形し、丸棒・平角・管形状に製造される。その結果、表面のみならず鋼材全体が窒化された鋼となり、材料全体で、硬度と靱性、耐摩耗性、耐焼付き性に優れた特性が得られるという。
近年、塑性加工技術の進歩によるニアネットシェイプ化や被加工材の高強度化が進み、成形用金型や打ち抜きパンチの使用環境は過酷になっている。こうした中、特に過酷な環境で使用される金型やパンチの素材には、通常の溶製ハイスよりもさらに高靭性・高硬度が得られる粉末ハイスが用いられているという。これらよりもさらに高い耐摩耗性・耐焼付き性が必要な場合には、この粉末ハイス製金型・パンチの表面に窒化処理を施すことで、耐摩耗性を上げている。同品は、こうした表面改質の手間を省く商品として開発された。