産業技術総合研究所は、グラフェンおよびそれに関連する材料の開発およびそれらの実用化や付加価値づくりの連携の場として「グラフェンコンソーシアム」を設立した。
グラフェンはグラファイトのハニカム格子1枚の炭素膜として定義され、電気伝導性、熱伝導性、ガスバリア性、機械的強度、その他において、「グラファイトを超える新炭素材料」と言える優れた特性を有している。さらにそれらの特性から、金属、セラミックス、プラスチックなど既存材料にはない魅力を有しており、他の物質では実現不可能な機能を発現しうる物質として期待されている。
一方、グラフェンのこれら革新的特性は、主としてミクロンサイズの微結晶での確認に留まっていることから、グラフェンを工業材料として利用するため、グラフェンに関するあらゆる基礎研究の推進と応用先を念頭とした特性を実用サイズで発現させる必要性があり、世界中で開発競争が激化してきている。
産総研によると、「日本は炭素繊維の創出、ダイヤモンド薄膜のCVD合成技術開発、高分子焼成法による高品質グラファイトフィルムの発明、さらにはカーボンナノチューブの発見と応用開発など、炭素材料創成と実用化開発において世界をリードする実績と豊富な知見の蓄積がある。これらを土台として、グラフェン研究においてもいち逸早く実用化に到達し、トップランナーとなることを念頭に、高品質・高機能グラフェンの合成と物性解明を目指した基礎的研究から新たな価値創造に向けたアプリケーションの開発が急務となっている。」という。
産業技術総合研究所では2009年以降、グラフェンの工業的大量合成技術開発に取り組んでおり、合成方法、はく離方法、フィルム化、応用等の検討を進めている。しかし、グラフェンの実用化においては、一組織だけでは乗り越えらない共通の基盤的、技術的、経済的課題が山積みとなっており、それらの課題を世界に先駆けて克服するため、グラフェンに興味を持っている研究機関、行政・支援機関及び企業の連携が必須となっており、多くの分野・業種のものづくりの英知を結集し、オープンイノベーション思想の下、コンソーシアムを設立した。