三菱マテリアル( http://www.mmc.co.jp )の子会社である菱光産業株は、東京大学と永田精機と共同で、世界ではじめてプラズマを使用した注射針の低痛化処理装置を開発した。
注射針の低痛化に関しては、インスリンや人工透析など、同じ患者が長期にわたり継続的に注射での投薬を行うため、痛みの軽減が求められており、医療現場での課題の一つとして、これまでさまざまな技術改良が行われてきました。この痛みを軽減する技術改良の一例として、針の径を可能な限り細くする手法があるが、針を細くし過ぎれば折損の危険性があり、内部を薬液がスムーズに通過しないケースもある。これ以外の低痛化対策としては、針へのシリコーン塗布があるが、シリコーンによるアレルギー発症も長年議論されており、早期の低痛化対策が医療現場の共通課題となっていた。
また、これまで静脈針や経皮針、透析用針などは、そのほとんどを砥石研磨のあと、電解研磨により先端を鋭利化してきた。しかし、電解研磨では形状変更に限界があり、充分な低痛化が図れていなかったという。
今回共同開発した低痛化処理装置では、砥石研磨後にプラズマ処理工程を取り入れたもので、外径の太い針も針先端を凹状に先鋭化できるなど、針先の大幅な形状変更(先鋭化)が可能となり、従来の方法では加工が困難であった形状を実現したもの。この結果、電解研磨法の針に比べ刺通抵抗は45%程度低下し、またシリコーンを塗布した状態と比較しても20%程度の低痛効果が確認されているという。
菱光産業では、すでに国内医療機器メーカーに向けプラズマ処理による注射針の低痛化処理装置の販売を始めているが、今後は医療分野に限らず、プラズマを用いた技術の普及を図っていく。
プラズマ処理前の注射針
プラズマ処理後の注射針