理化学研究所( http://www.riken.jp/ )とダ・ビンチは、朝日から夕陽まで、太陽光の光熱エネルギーをフレネルレンズで効率良く回収し、蓄熱タンクに貯めた水を加温、必要に応じてこの熱を取り出して発電と給湯ができる「熱電併給システム」を考案した。
これは、理研と企業が一体となって研究を進める「産業界との融合的連携研究プログラム」にもとづき、2012年4月に理研社会知創成事業イノベーション推進センター(土肥義治センター長)内に発足した、光熱エネルギー電力化研究チームの東謙治チームリーダー(ダ・ビンチ社長)、大森整副チームリーダーらの成果。
太陽光を利用して発電する代表的なシステムにソーラーパネルがある。その光電変換効率は20%前後だが、天候によって発電量が左右される、蓄電装置のコストが高い、廃棄するときパネル材料に含まれる重金属を分離する技術が未確立、などの課題がある。
研究チームは、効率良くエネルギーを蓄えるため、太陽光に由来する熱エネルギー(光熱エネルギー)に着目し、熱交換器経由で水を温めて蓄熱、その熱エネルギーを必要なときに取り出して発電や給湯できる効率的な熱電併給システムを考案した。
具体的には、朝日から夕陽までどの角度からの太陽光も光熱エネルギーとして回収できるように、同心円状に刻んだ溝で効率良く集光できるパネル型のフレネルレンズを立方体状に組み合わせた。立方体内部にはアルミ合金でできた逆T字型の熱交換器を置き、水平から垂直方向のどの方向からの光熱エネルギーも逃さない構造とした。熱交換器の下には水を満たした蓄熱タンクを設け、温水が持つ熱エネルギーをダ・ビンチ社(奈良県大和高田市)が開発した「ロータリー熱エンジン」に供給し発電するシステム。
このシステムは、高額な太陽光追尾装置や駆動部が不要。また、太陽光という変動の大きい光熱エネルギーをいったん水に蓄熱することで安定的に保存し、必要な時にいつでも使えるようにした。地方自治体などと連携し、遊休地を利用した中小規模の分散電源として活用を図っていく計画で、2013年中に出力1kW(キロワット)の試作機を、2014年には10kWの実証システムの完成を目指している。再生可能エネルギーの新しい可能性をひらく技術として期待できるという。
フレネル・サン・ハウスとロータリー熱エンジン