神戸製鋼所( http://www.kobelco.co.jp )は、製鉄所の競争力強化へ向け、加古川・神戸両製鉄所の溶銑処理能力および加古川製鉄所の厚板熱処理能力をそれぞれ増強する。総投資額は約360億円。これら一連の投資を通じ、鉄鋼事業部門における製品の売上高比率を2015年度を目処に50%に引き上げていく考え。
鋼材の代表的な製品である自動車用高張力鋼板(ハイテン)、スチールコード、軸受鋼などは、一般的な鋼材と比較して高い清浄度が要求されることから、溶銑処理によって硫黄やりんを低減(脱硫・脱りん)する必要がある。また、厚板で今後拡販に注力していく分野の一つであるエネルギー関連向け鋼材(タンク・圧力容器、ラインパイプ向け等)の多くは、同様に脱硫・脱りん処理の必要があると同時に、圧延後の熱処理が必要となる。
今回の一連の投資により、溶銑処理能力および厚板熱処理能力が大幅に向上し、製鉄所の製造体制強化が実現する。一方、溶銑処理能力の増強に伴うコストダウンの観点では、脱硫・脱りん時の反応効率向上により石灰等の副原料使用量が大幅に削減でき、鉄歩留が改善されるという。また、硫黄やりんが比較的多く含まれる低品位原料の使用量増加が可能となることも含め、両製鉄所合計で年間約100億円のコストダウン効果を見込んでいる。
加古川製鉄所の新溶銑処理工場の総投資額は約300億円。2014年6月末に稼働の予定。新たに溶銑処理工場を建設し、脱硫設備および脱りん炉を導入することで、それぞれの処理を独立して高効率に行うプロセスが確立する。これにより、溶銑の全量脱硫・脱りん処理が可能となる。
神戸製鉄所の新溶銑処理設備の総投資額は約20億円。2012年10月末に稼働の予定。新たに脱珪脱硫設備を導入し、現在使用している溶銑処理炉は脱りん処理専用とする。これにより、加古川と同様に、それぞれの処理を独立して高効率に行うプロセスが確立する。
加古川製鉄所の新厚板熱処理炉の総投資額は約40億円。2012年12月末に稼働の予定。新たに熱処理炉1基を導入することで熱処理能力が倍増し、エネルギー関連向けをはじめとする製品の拡販を実現する製造体制が確立するという。