JFEスチールは、自動車外板パネル向けに開発した440MPa級高張力GA(合金化溶融亜鉛めっき)鋼板「ユニハイテン」がいすゞ自動車でフードパネルに採用されたと発表した。同品は本年1月、440MPa級冷延鋼板として自動車ドアパネルに採用されたが、今回は440MPa級高張力GA鋼板として自動車フードパネルへの国内メーカー向け初採用となる。
自動車外板パネル部品の軽量化(薄肉化)には、「くぼみ」のような永久変形を防ぐ強度(耐デント性)とプレス成形時に発生する局所的なゆがみの抑制(耐面ひずみ性)の両立が求められる。今回採用された高張力鋼板「ユニハイテン」は、冷延鋼板・GA鋼板ともに、一般的な鋼材の一つである軟鋼と同じ組織(フェライト)の中に微細な硬質組織(マルテンサイト)を均一に分散させることにより、従来自動車用外板に広く用いられている340MPa級鋼板よりも強度の高い440MPa級の引張強さを実現した複合組織型高張力鋼板。
鋼板の製造段階では引張強さを強化しつつ、降伏強さの上昇を抑制することにより、パネル部品のプレス成形時に均一かつ広範囲での変形を可能とし、高張力鋼板の適用に際し課題であったプレス成形時の耐面ひずみ性の向上を実現した。これにより、鋼板のハイテン化に伴う成形パネル部品の面品質の確保を容易にした。
また、プレス加工による加工硬化と、その後の塗装焼付け工程での鋼板温度上昇に伴って得られる焼付け硬化によるパネルの降伏強さの上昇量を、従来の340MPa級BH(焼付け硬化型)鋼板に比べ50MPa以上向上させ、パネル部品の耐デント性を大幅に改善し、外板パネルの薄肉化や補強部品の省略による軽量化を可能にした。
同社では同品の冷延鋼板およびGA鋼板の量産体制を確立し、今後も引き続き、ドア、フードなど外板パネル部品への採用範囲の拡大を図るとともに、さらなる高性能な高張力鋼板の開発に努めていく。
一般鋼組織とユニハイテン組織の比較(例:両者の顕微鏡写真)