トライボコーティング技術研究会( http://www.tribocoati.st )は2月25日、埼玉・和光市の理化学研究所・鈴木梅太郎記念ホールで、「岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)第3回贈呈式」および「第13回『トライボコーティングの現状と将来』シンポジウム」を開催した。
岩木賞は、同研究会とNPO法人精密科学技術ネットワーク(PEN、 http://www.pen.or.jp/j/home.html )などからなる岩木賞表彰委員会が表面改質、トライボコーティング分野で著しい業績を上げた個人、法人、団体を顕彰するもので、当該分野で多くの功績を残した故岩木正哉博士(理化学研究所元主任研究員、トライボコーティング技術研究会前会長)の偉業をたたえ、2008年度より創設された。
挨拶する大森会長 当日は、同研究会大森整会長が開会の挨拶を述べた後、岩木氏と生前に親交が深かった斎藤茂和氏(理化学研究所 社会知創成事業イノベーション推進センター センター長)が「故岩木正哉工学博士への思い」を語り、各賞の贈呈が行われた。贈呈は、PEN理事長代理として東洋大学の神田雄一教授が委員会を代表して行った。
表彰状を受け取る馬渕氏 研究開発業績の技術水準、新規独創性、実用性などの観点から審査され、大賞には今回、業績名「水素フリーDLC膜によるエンジンの超低フリクション化技術」で日産自動車と日本工業大学が受賞した。潤滑油下でのDLC膜中の水素量と摩擦係数の間の相関関係を見いだし、水素フリーDLCにより優れたフリクション低減効果が得られる機構を確立、高面圧下で摺動するエンジンバルブリフターに被覆するとともに、同DLCに適した潤滑油も開発することで、大幅なエンジンフリクションの低減と燃費の向上につながった。すでにオイルポンプリフターに採用済みのほか、今後ピストンリングやピストンピン、さらにはEVの駆動系も視野に入れた市場規模と、さらなる燃費向上による社会的効果などが評価されたもの。
表彰状を受け取る平塚氏 優秀賞には、業績名「ナノ秒パルスレーザ照射を用いた単結晶シリコン機械加工面の表面処理」で閻紀旺氏・厨川常元氏(東北大学)が、また業績名「DLCから進化した高性能膜ICFにおける低温・高硬度水素フリーICF成膜装置の開発」でナノテック、平和電源が受賞した。前者は標記レーザを高速照射することでSiウエハなどの表面をナノレベルに平坦化すると同時に加工欠陥層も完全な単結晶構造に修復し、また切りくずや廃液を出さないクリーンな技術であることが評価、後者は高密度プラズマ生成技術により80℃以下の低温でHV3000以上の高硬度の水素フリーDLC薄膜を形成、300㎜半導体ウエハなど大面積用途や樹脂などへの適用を可能にしたことが評価された。
受賞者と関係者一堂 特別賞には、業績名「ナノ粒子含有薄膜形成用コロイドプリカーサプラズマCVD法の開発」で伴雅人氏(日本工業大学)が受賞。標記成膜法により、優れた光触媒性を持つDLC薄膜やフラーレン溶解液を用いた極低摩擦DLC薄膜など、多様なナノ粒子/薄膜の組合わせで新規材料が創成できることが評価された。
贈呈式に続いて日産自動車・馬渕豊氏、東北大学・閻氏、ナノテック・平塚傑工氏が記念講演を行い、引き続き同研究会会員講演として、以下の講演が行われた。
- マックスコーポレーション・濱田正樹氏「DIARCのDLC機能膜」
- 日本パーカライジング・小西知義氏「塩浴軟窒化と高周波焼入れによる複合表面熱処理技術」
- ナノコート・ティーエス・熊谷泰氏「硬質薄膜の表面電位測定」