前回の授賞式のもよう トライボコーティング技術研究会( http://www.tribocoati.st )、NPO法人精密科学技術ネットワーク(PEN)などからなる岩木賞表彰委員会はこのほど、「岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」第3回受賞者を発表した。
同賞は、表面改質、トライボコーティング分野で著しい業績を上げた個人、法人、団体を顕彰するもの。当該分野で多くの功績を残した故岩木正哉博士(理化学研究所元主任研究員、トライボコーティング技術研究会前会長)の偉業をたたえ、2008年度より創設されたもの。
研究開発業績の技術水準、新規独創性、実用性などの観点から審査され、大賞には今回、業績名「水素フリーDLC膜によるエンジンの超低フリクション化技術」で日産自動車と日本工業大学が受賞した。潤滑油下でのDLC膜中の水素量と摩擦係数の間の相関関係を見いだし、水素フリーDLCにより優れたフリクション低減効果が得られる機構を確立、高面圧下で摺動するエンジンバルブリフターに被覆するとともに、同DLCに適した潤滑油も開発することで、大幅なエンジンフリクションの低減と燃費の向上につながった。すでにオイルポンプリフターに採用済みのほか、今後ピストンリングやピストンピン、さらにはEVの駆動系も視野に入れた市場規模と、さらなる燃費向上による社会的効果などが評価されたもの。
優秀賞には、業績名「ナノ秒パルスレーザ照射を用いた単結晶シリコン機械加工面の表面処理」で閻 紀旺氏・厨川常元氏(東北大学)が、また業績名「DLCから進化した高性能膜ICFにおける低温・高硬度水素フリーICF成膜装置の開発」でナノテック、平和電源が受賞した。前者は標記レーザを高速照射することでSiウエハなどの表面をナノレベルに平坦化すると同時に加工欠陥層も完全な単結晶構造に修復し、また切りくずや廃液を出さないクリーンな技術であることが評価、後者は高密度プラズマ生成技術により80℃以下の低温でHV3000以上の高硬度の水素フリーDLC薄膜を形成、300㎜半導体ウエハなど大面積用途や樹脂などへの適用を可能にしたことが評価された。
特別賞には、業績名「ナノ粒子含有薄膜形成用コロイドプリカーサプラズマCVD法の開発」で伴 雅人氏(日本工業大学)が受賞。標記成膜法により、優れた光触媒性を持つDLC薄膜やフラーレン溶解液を用いた極低摩擦DLC薄膜など、多様なナノ粒子/薄膜の組合わせで新規材料が創成できることが評価された。
贈呈式と受賞業績の記念講演は、2011年2月25日開催の「シンポジウム:第13回トライボコーティングの現状と将来」において行われる予定。