富士フイルム( http://www.fujifilm.co.jp )では、データストレージメディアの大容量化を図る「バリウムフェライト磁性体(BaFe磁性体)」採用の磁気テープが、30年以上に及ぶ長期保存後も優れた磁気特性を維持し、安定して読み書きができることを実証した。
企業や官公庁などにおいて、長期間のアーカイブが必要なデータの量は年々増加し、大容量で長期保存性に優れたデータストレージメディアが求められている。塗布型の磁気テープは保存時に常に通電しておく必要がないため、駆動装置の消耗によるデータ損失が起こりにくく、保存性に優れたメディアとして使用されている。磁気テープは、記録媒体に磁性体を使用、この磁性体を微粒子化し記録密度を上げることで、記録容量がアップずる。現在は、記録媒体に「メタル磁性体」を使用した磁気テープが主流だが、記録容量を拡大するために磁性体を微粒子化すると、一つ一つの磁性体の磁力の保持が難しくなるため、同社では磁性体をより微粒子化しても高い保磁力を有し、従来のメタル系よりも低ノイズで周波数特性に優れ、長期保存に適した記録媒体としてBaFe磁性体とそれを採用した大容量磁気テープの開発を進めている。
同社では今回、独自の加速温湿度試験において、BaFe磁性体テープの磁化量の変化、摩擦係数の変化、テープ表面の変化を測定した。温度60℃、湿度90%の環境下に、自然経時30年間に相当する30日間置き、磁化量の変化を測定した結果、BaFe磁性体テープでは、自然経時30年後も磁化量に変化は見られず、優れた磁気特性を維持することを実証した。また、実際のドライブで使用されることを想定し、BaFe磁性体テープ表面を、ドライブヘッドを構成する素材と同一素材のAlTiC(アルティック)棒に接触させながら走行させ、摩擦係数を測定した結果、30日間の保存前後で、摩擦係数の計測結果に変化はなかった。これらの試験により、BaFe磁性体テープが30年以上安定して使用可能で保存性に優れたメディアであることが実証されている。