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日立ツールなど、密着性50%向上の自動車部品用DLCコーティング技術と基材を開発

 日立ツール( http://www.hitachi-tool.co.jp/ )と日立金属( http://www.hitachi-metals.co.jp )は、日立製作所の協力のもと、自動車部品用DLCコーティングの密着性を高める技術と皮膜の特性を高める自動車部品用基材(母材)を開発した 。DLCコーティングの用途を拡げ、自動車の環境性能向上に貢献する考え。コーティング、基材ともに初年度1億円の売り上げを見込んでいる。

 環境への対応が重要視される中、自動車の低燃費化、排気ガスクリーン化など環境性能への要求がますます高度化している。そのため自動車部品メーカーにも燃焼効率の向上、軽量化、耐久性向上などへの対応が求められている。その中でもエンジンの動弁系や燃料噴射系摺動部品で発生するフリクション(摩擦)低減への対応は重要なテーマの一つだという。また、エンジンに使われる摺動部品は、高温にさらされ苛酷な条件で使用されるため、耐焼き付き性の向上も要求されている。

 フリクション低減と耐焼き付き性向上のため、従来から摺動部品には窒化処理などのコーティングが行われてきた。しかし、要求される性能が高度化する中で従来のコーティングでは十分に対応できない領域があった。そこで最近になってフリクションをさらに低減できるDLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)コーティング技術が注目され普及し始めている。しかし、DLCコーティング技術の課題として密着性の問題があり、用途を拡げるためには改善が必要だった。

 コーティング技術に多くのノウハウを持つ日立ツールと素材技術に定評のある日立金属は、基礎研究力に優れる日立製作所の協力のもと、様々な角度からDLCコーティングによる皮膜の密着性の改善について研究を重ねた。その結果、皮膜の密着性を低下させるコーティングと基材の界面に存在する不純物除去を強化することで、密着性を約50%以上向上(日立金属比)させることに成功し、信頼性を高めたDLCコーティング “L-Frex® ”(エルフレックス)を開発した。併せて皮膜の特性を高める自動車部品用基材(母材)“ASL®555”(エーエスエル555)を開発した。

 2009年10月より、日立ツールが自動車部品用DLCコーティング“L-Frex® ”(エルフレックス)についてサービスを開始し、日立金属が皮膜の特性を高める自動車部品用基材(母材)“ASL®555 ”(エーエスエル555)の販売を開始する。

 主な特徴は以下のとおり。


  1. 自動車部品用DLCコーティング“L-Frex® ”(エルフレックス)シリーズ
    (1)密着性を向上
     皮膜の密着性を低下させるコーティングと基材の界面に存在する不純物除去を強化する
     ことで、従来のDLCコーティングの密着性に比べ50%以上向上(日立金属比)し、信頼
     性をアップした。また、コーティング硬さも向上させた。

    (2)幅広い用途に適用可能
     硬さが異なるDLCコーティング(L-Frex ®S、L-Frex ®M 、L-Frex ®H)をライナップし
    た。

  2. 摩擦係数と皮膜硬さ摩擦係数と皮膜硬さ

  3. 自動車部品用基材“ASL®555 ”(エーエスエル555)
    (1)自動車部品用高信頼性DLCコーティング“L-Frex® ”の密着性をさらにアップ
     高Cr系マルテンサイト鋼をベースとした材料で高い疲労強度、耐食性をバランスよく確保
     するために添加元素の最適化を行っている。自動車部品用高信頼性DLCコーティング
     “L-Frex®”処理時の昇温でも硬さが低下せず高硬度(約60HRC※11)を維持でき、密着
     性もアップする。

    (2)コーティング時間を短縮
     コーティング処理時間を短縮するため、450℃程度まで加熱した場合にも高硬度を維持で
     き密着性を確保することが可能。

    (3)DLCコーティング以外のコーティングの密着性もさらにアップ
     DLCコーティング以外のコーティング(窒化クロム処理※12、窒化チタン処理などの窒
     化処理)の密着性をさらにアップする。