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東北大学、医療用MRIでリチウム電池の内部撮影に成功

 東北大学多元物質科学研究所の河村純一教授、岩井良樹(博士課程大学院生)らのグループは、医療用として身体の内部撮影などに使われるMRI(磁気共鳴断層撮影法)を使い、リチウム電池の内部を断層撮影する事に成功した。

 リチウム電池は、携帯電話やノートパソコンなどに使われ、最近は電気自動車用にも開発が進んでいる。一方で、安全性や劣化の問題が課題となっている。

 河村教授らは、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託により、リチウム電池の破壊や劣化メカニズムを明らかにするために、研究用のMRI顕微鏡を使いリチウム電池内部の様子を調べる研究を行ってきた。

 MRIは強力な磁場の中で物体に電波を当て、原子核のスピンから返される微弱な電波を検出して画像にする。しかし、リチウム電池は金属容器に収められ、内部にも金属を多く含むため電波が透過できず、MRIは使えないとされていた。

 河村教授らは、ガラスやプラスチックを用い、電極の配置などを工夫したリチウム電池を作成し、内部のMRI画像を世界で始めて測定する事に成功した。
医療用のMRIは水素の原子核(プロトン) を検出しているが、河村教授らはプロトンだけでなく、より検出が困難なリチウム・イオンそのもののMRI画像測定にも成功した。プロトンでは、16μmの解像度で6万5,000ピクセル、リチウムでは32μmの解像度で1万6,000ピクセルの画像が得られた。

 この技術を用いて、リチウム電池の中でのリチウムイオンの分布や、充電・放電を繰り返した場合の電解液の分解やガスの発生などを、MRIの画像として検出することができる。これにより、リチウム電池の誤使用による発熱や発火の機構を解明したり、電解液や電極物質の劣化を検出することで、リチウム電池の安全性や劣化防止技術の開発に役立つものと考えられる。

 今後は、「リチウムイオンの動く様子や、電解質の劣化する様子を3次元で動画として測定したいと」としている。