三菱重工業( http://www.mhi.co.jp )は、タービン入口温度1,600℃級で世界最大・最高効率の「J形ガスタービン」の開発を完了、商用化に着手した。60Hz送電地域向けでは定格単機出力(ISOベース)約32万kW。排ガス熱発電を組み合せたコンバインドサイクル(CC)出力は約46万kWで世界最大容量、熱効率は世界最高水準の60%以上を目指す。2011年中の出荷案件からの商談に対応できる予定。
J形は、既存の1,500℃級G形に比べ100℃の温度上昇に耐えられるよう、遮熱コーティング(低伝導率TBC=Thermal Barrier Coating)技術と冷却効率を改善したほか、改良型三次元設計の採用により空力性能も向上した。圧縮機は圧力比を高めた設計とし、燃焼器はG形で開発した蒸気冷却技術を応用。タービン部はG形の設計をベースに、1,700℃級ガスタービン要素技術の開発を目指す国家プロジェクトにおける研究成果のうち、これまでに実用化のめどが立った技術を採用している。
CCで発電端熱効率60%以上(低位発熱量)は現状世界最高レベル。また、容量でも単機出力で従来の最大容量機であるG形を使ったCCの1.2倍に達するだけでなく、窒素酸化物(NOx)の発生も従来と同等に抑え、地球環境にも配慮されている。
三菱重工は、兵庫県高砂市の高砂研究所、高砂製作所に置いた開発部門、設計部門、工作部門、試験設備でガスタービンの開発設計から実証、製造までを一貫して手掛けている。同製作所敷地内にはCC実証設備を持ち、そこで大型ガスタービン、大型ガスタービン要素技術の実証を入念に行い、商用化に結び付けてきた。
現時点での最新鋭機で全世界で稼動しているG形は、こうした堅実な実証プロセスを通して設計・開発したもの。国内外で62基の販売実績があり、シリーズとしての累積運転時間は70万時間を超える。
三菱重工ではガスタービンの高温高効率化技術の開発に注力しており、1,700℃級国家プロジェクトに参画。この高度技術を適用し、新しい商用機の開発を進めてきた。
ガスタービンにより発電を行い、その排熱を利用して蒸気タービンでも発電するCCは、発電効率が大幅に向上するために、温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量を大幅に低減することが可能で、環境負荷が低い。J形CCは、従来型石炭火力発電に比べ約50%(同社機比)のCO2削減が可能であり、この“日本から発信する新世代ガスタービンJ形”による地球温暖化防止への貢献に期待がかかる。