ロボット関連3団体、2024新年賀詞交歓会を開催
日本ロボット工業会、製造科学技術センターと日本ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)のロボット関連3団体は1月12日、東京都港区の東京プリンスホテルで「2024年ロボット関連団体新年賀詞交歓会」を開催した。
当日は代表して日本ロボット工業会の山口賢治会長(ファナック社長)が挨拶に立ち、「2023国際ロボット展は主点者数が過去最大だったほか、来場者も14万8000人と過去最高になり盛大に開催でき、当工業会の2024年に向けた力強い応援となった。経済環境は長引くロシア・ウクライナ情勢、中東情勢のほか、地政学的リスクもあり不安定化がさらに進んできている。国際経済もこれらに加え、中国の経済減速や欧米でのインフレ圧力の増加などから減少傾向にある。直近の国際通貨基金における世界経済の見通しでは、2022年が3.5%の伸びだったのに対し、2023年は3.02%増、今年は2.9%増にまで減速するなど、さまざまな懸念の中で新年を迎えた。こうした状況の中、2023年の我が国ロボット産業は中国市場の悪化や世界経済低迷による投資の先送りなどから、受注額で対前年度比23.6%減の約8490億円、生産額では11.2%減の約9060億円と、当初見通しを大幅に下回ることが見込まれている。今年のロボット市場においては、世界的な経済に不透明感はあるものの、国際ロボット展で改めて感じた自動化への高まる要求に鑑み、年度後半に向けて拡大する自動化需要を取り込むことで、受注額は対前年度比6%増の9000億円を期待するとともに、生産額も9000億円を見込んでいる」と挨拶した。
山口会長は続いて3団体の2023年の活動計画について報告。
日本ロボット工業会の活動としては、業界活性化のさらなる推進に向け、以下の3点を重点分野として取り組む。
・市場拡大に向けた取組み:同会は2023年から、経済産業省の実施する「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」の補助金交付執行団体事務局として、「施設管理」と「食品」の2分野におけるロボットフレンドリーな環境の構築に必要な研究開発の支援事業に参画しており、本年も引き続き進めていく。また、政府では中小企業等の生産性向上や売上高拡大などに向けた投資促進を図るため、2023年度補正事業において「中小企業省力化投資補助事業」、「中小企業生産性革命推進事業」の施策を推進することとしており、同会としてもそれら施策を通じたロボットの利活用拡大に努めるほか、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会およびSIer協会との連携を通じロボットの一層の使用拡大に努めていく
・イノベーションの加速化に向けた産学連携の推進:グローバル市場での日本の優位性確保や潜在市場の顕在化に加え、さまざまな社会課題解決に向けての、ロボット技術のイノベーションの加速は急務で、日本ロボット学会などの関係学会や関連業界との連携に努める
・国際標準化の推進と国際協調・協力の推進:国際標準化は欧米が市場獲得の手段として戦略的に取り組んでいるが、日本も官民挙げての取り組みが重要。特にロボットの国際標準化について審議しているISO TC299で本年5月に大阪府の池田市で五つのWGを開催する。ロボットのリーディングカントリーとして国際標準活動に引き続き積極的に取り組むとともに、国際ロボット連盟を通じた活動と国際交流を積極的に推進していく
2024年はまた、6月12日~14日開催の「第25回 実装プロセステクノロジー展」、9月18日~20日には「Japan Robot Week 2024」の二つの展示会を東京ビッグサイトで開催する。両展を通じて技術情報の発信とともに、さまざまな分野へのロボット利活用拡大への意欲を喚起することに加え、市場調査、技術深耕等の事業を意欲的に展開する。
製造科学技術センターでは、ロボット、IoT、ものづくりなどにおける製造科学技術全般の調査・研究や標準化に取り組んでおり、2024年は以下のとおり活動する。
・ロボットとものづくり関連の取り組み:人とロボットの力や情報の相互作用を加味する革新的な協業形態である「合業」を提唱し新たな生産手法の確立を目指しているほか、将来のロボットのエンドエフェクタの国際標準化の在り方について検討を進めている
・オートメーション関連の取組み:企業間を含めた生産システムの連携手法、経営情報、現場情報に加え、脱炭素情報を含めた「製造の見える化・モデル化」、さらにはクラウドを活用した中小企業における工場のIoT化促進などの活動を実施している。1月31日~2月2日にはこれまでの成果を発表する「IAFフォーラム」に出展する
・標準化活動:スマートマニュファクチャリングおよびDXに関する産業データの標準化を扱うISO/TC 184/SC 4では、三次元CADデータの流通・活用の高度化を進めるための規格などの、またSC5では、デジタルツイン、ソフトウェアシステムの連携や製品に関するデジタルデータの流通・活用の促進に関する規格の開発など、日本から合計4件の提案を行っている。日本主導によって合計3規格の国際標準文書の発行のめどが立っている。引き続き標準化活動を強化し産業界に寄与していく
製造科学技術センターは日本のものづくりの横断的な課題に応えつつ、ものづくり企業の競争力と活力の創成に努めていく。
SIer協会は2018年に日本ロボット工業会の特別委員会として設立、2023年に5周年を機に一般社団法人化を行った。設立以来、①SIerを中心としたFA・ロボット業界ネットワークの構築、②SIerの事業基盤の強化、③システムインテグレーションに対する専門性の高度化の三つのキーワードを掲げ活動を行ってきたが、一般社団法人化を機に①ロボットSIerを若者があこがれる職業へ、②SI業界の発展のみならず自動化業界(ロボット業界)全体の発展の牽引者へ、③サイバーフィジカルシステムで日本を世界一の自動化大国へ、のキーワードを追加した。本年は各種展示会への出展、ロボットアイデア甲子園の開催、全国各地10カ所でのSIer’s Dayの開催、地方行政との連携、技術セミナーの開催、各種講座の開催、ロボットSI検定の実施などの活動を引き続き行う。また、2023年から開始したロボット教育におけるデジタル活用の推進(デジタル教育機器を用いたロボット操作など)に注力していく。生徒・学生へのロボット教育普及を目指し、これまでロボットシステムインテグレーションを行う上で必要な知識の習得レベル・技術の修熟レベルを測定するための検定試験「ロボットSI検定4級」を追加する検討を開始する。さらに、ロボットSI検定3級をタイで本年から実施するなど、ロボットSI検定の国際化の第一歩を踏み出す。
SIer協会は引き続き、ロボット産業およびSI産業の発展のために活動を行っていく。