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日本半導体製造装置協会、半導体・FPD製造装置の需要予測を公表、半導体製造装置で初の4兆円超えへ

 日本半導体製造装置協会(SEAJ、会長:河合利樹・東京エレクトロン社長)は7月4日、2024年~2026年の半導体・フラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置の需要予測を発表した。2024年度の日本製装置販売高は、年度後半からのメモリー投資回復を見込み、前年度比15%増の4兆2522億円と予測した。2025年度はロジック・ファウンドリー、メモリー全体で堅調な投資が予想されるため、10%増の4兆6774億円とした。2026年度もAI関連半導体の需要押上げ効果が顕在化することから、10%増の5兆1452億円と予測した。半導体製造装置での4兆円超えは初めてとなる。

 冒頭挨拶に立った河合SEAJ会長は、「昨今の世界情勢はロシアによるウクライナの長期化、イスラエル・ガザ情勢、米朝対立など地政学リスクの高い状況となっている。欧米を中心としたインフレに伴う政策金利の上昇は高のぼりを見せており、国内では依然として歴史的円安が続くなど、マクロ経済の動向にも引き続き注視が必要。半導体業界に目を向けると、昨年は中国企業による設備投資が堅調に推移する一方、全体的には半導体の在庫調整に伴い先端デバイス向けの設備投資が抑制傾向にある。こうした動向を受けWSTS(世界半導体市場統計)によると2023年の世界半導体市場は、前年比8.2%減の5269億ドルとなったが、2024年は16%増の6112億ドルと再拡大が予測されている。1947年のトランジスタの誕生から76年、半導体市場は初めて6000億ドルを超える見込みとなっており、2030年ごろには市場ドルを超える市場となることが予想されている。2006~2021年の15年間に倍になった市場規模が、この約半分の期間でさらに倍になることを示しており、市場拡大の規模は早くなってきている。そのけん引役となるのがAIであり、今後、産業や社会のあらゆる場面でAIの活用が広がり、スマートなライフスタイルを伴いながら、我々の生活は一層便利に発展していくと思われる。半導体に対する技術要求はさらなる大容量、高速、高信頼性、低消費電力など、とどまるところを知らない。そうした半導体を形にする製造装置に対する期待や需要もますます高まっていくことが予測される。半導体産業が拡大していくことに伴い、当協会の役割も重要性を増している。脱炭素社会の実現に向けたネットゼロや、PFASに代表される環境規制物質への対応、地政学やサプライチェーン、そして半導体産業のサステナブルな発展を支える人材育成が、業界として喫緊の課題となっているが、各企業の努力のみならず業界全体が一体となり取り組んでいくことが必要だと感じている。協会としては日本製の半導体・FPD製造装置を取り巻くグローバルな市場環境の変化についてSEMIとも連携して調査分析し、適切な対応を取っていくことで、業界および会員企業の発展につながるよう精一杯務めていく」と語った。

挨拶する河合SEAJ会長 半導体製造装置需要予測2024-2026 MTJP メカニカル・テック社
挨拶する河合SEAJ会長

 

 WSTS(世界半導体市場統計)によれば、2023年の世界半導体市場は、メモリー価格下落の影響から前年比で8.2%減と4年ぶりに減少した。2024年はメモリー市場が単価・数量ともに上昇し、ロジック市場も回復する見通しである。6月の発表では、2024年全体で16.0%増加の6112億米ドルと、過去最高額を更新するとしている。2025年も引き続き12.5%の増加が予想されており、高い成長を見込む。

 メモリー各社の業績は2023年1Q(1~3月)をボトムに4四半期連続で回復傾向となっている。現在までPCやスマートフォンの販売台数そのものに顕著な変化は見られないが、ウェーハ投入数としては減産を終了する動きが出ており、需給関係は改善している。サーバーについては、AIサーバー向けGPUは極めて需要旺盛であり、組合せて用いるHBM(High Bandwidth Memory)は、引き続き需要が急増している。

 今後については、AI機能をサーバーだけでなく、オンデバイス(エッジ・ローカル)という形でPCやスマートフォンに搭載する動きが加速する。AI PCでは従来のCPU、GPUに加えてNPU(Neural Processing Unit)を標準搭載し、高度なAI処理をCPU、GPUの負荷を軽減させつつ最適化し、低消費電力を実現する。スマートフォンでも、6月には最大手企業からAI機能の全面刷新が発表され、大きな話題となった。
CPU、GPUに加えてNPUを同時搭載するには、相対的に集積度を上げるか、ダイ面積を増やす必要がある。発表されたAI PCの最低システム要件は、DRAM「16GB以上」、SSD「256GB以上」が指定され、動画を含め快適に動かすには更なる高容量が推奨される。オンデバイスAIが半導体市場に与える影響は、ロジック、メモリー双方にとってプラスとなる見込みである。加えて2025年10月のWindows10サポート終了に合わせ、エンタープライズ向けのPC買換えも促進される。

 AIサーバー向けには、今後AI機能に最適化した様々な半導体の登場が見込まれる。現在、特定企業に需要が集中するAIサーバー用GPUも、徐々に選択肢が広がると予想する。データセンター投資も、AI用途だけでなく、いずれ汎用サーバーを含めた更新投資に向かうとみられる。
半導体製造装置では、2022年10月の米国による対中規制強化、2023年7月に日本、9月にオランダで輸出管理の厳格化が始まった。結果的には、規制対象外の分野に投資がシフトしたことで、現在まで中国向け装置需要は増加し、現在も堅調である。2024年度は中国以外の国・地域での投資が増加するのに伴い、相対的に中国向けの比率は下がるとみている。

 2024年度はロジック・ファウンドリー、DRAMの投資回復が予想される。2025年にはNANDフラッシュも大きく回復し、加えて各国政府の支援が投資を下支えする。AI技術の浸透は、現在のAIサーバー用GPUとHBMだけにとどまらず、2026年に向けオンデバイスAI PC、AIスマートフォン用半導体の需要を喚起し、端末の買い替え促進でも広範な波及効果をもたらす。更にAR/VR/デジタルツイン、EV/自動運転などの多様なアプリケーションの伸長に支えられた成長が期待される。

 世界半導体市場は2023年の5268億米ドルから2030年には1兆ドルを目指すと言われており、半導体製造装置も同様に中期的な高い成長率が見込まれている。
半導体製造装置・日本製装置販売高予測としては、2024年度は現在続いているメモリー価格の上昇に稼働率の上昇が追い付くタイミングで、DRAM投資が本格的に復活するとみている。中国向けは引き続き堅調であるが、他地域向けの投資拡大に伴い比率は若干下がる傾向となる。これらにより15%増の4兆2522億円と予測した。4兆円を超えるのは、今回が初めてである。

 2025年度はNANDフラッシュが投資回復し、ロジック・ファウンドリーの投資も堅調であることから、10%増の4兆6774億円とした。
2026年度も引き続き順調な伸びが期待されるため、10%増の5兆1452億円を予測した。4兆円から5兆円へは2年で到達することになる。
半導体製造装置・日本市場販売高予測としては、2024年度はメモリー市況の回復に加え政府による補助金効果や、大手ファウンドリーの順調な立ち上がりも手伝い、17%増の1兆3375億円と予想した。2025年は複数の大手ファウンドリー投資が重なり、メモリー投資も大きく復活が期待されることから、30%増の1兆7388億円と予測した。2026年度も引き続き堅調な投資が見込まれるため、7%増の1兆8605億円を予測した。