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日本半導体製造装置協会、半導体・FPD製造装置の需要予測を公表、2022年に初の3兆円超えへ

 日本半導体製造装置協会(SEAJ、会長:牛田一雄ニコン会長)は1月14日、2020年~2022年の半導体・フラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置の需要予測をオンラインで発表した。

 開会の挨拶に立った牛田会長は、「2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を背景に、民生電子機器や車載機器の需要が落ち込む一方で、データトラフィック量の急増によりデータセンター需要が力強く、また5G通信の世界的な普及に向けた投資も順調に進んでいる。半導体投資を牽引してきたPCやスマホに加えて、IoTやデータセンター、AI、5G通信技術を加えた重層的な広がりは、この一年で大きく加速された。新しい生活スタイル、新しい産業スタイルが急速に進展、アフターコロナの時代にはニューノーマルとして定着し、さらなる発展が見込まれている。この大きな変化を支えるのが半導体でありFPD。それらの製造装置がもたらす明るい未来を確かなものにしていきたい」と力強く語った。
 

挨拶する牛田SEAJ会長
挨拶する牛田SEAJ会長

 

 SEAJ半導体調査統計専門委員会(メンバー13社)およびFPD調査統計専門委員会(メンバー7社)による需要予測と、SEAJ理事・監事会社20社による市場規模動向調査結果を総合的に議論・判断し、SEAJの総意としてまとめたもの。

 半導体を消費するアプリケーションとして、スマートフォンに代表されるコンシューマー製品や車載、産業機器では、元々大幅な減少が見込まれていた。米中摩擦の影響もあり、中国のスマートフォン最大手は減産幅が大きかったが、これを好機と見た2番手以下の企業が増産を行った結果、全体としての影響は当初の見込みよりも軽減されている。2021年は各社の新端末も出揃い、カバーエリアも広がるため、先進国を中心に5G通信の浸透率は急速に高まってゆくと予想される。

 企業活動におけるテレワークの利用は、COVID-19感染拡大期における一過性の現象とはならずに完全定着し、進化を続けている。巣ごもり需要の増大によって動画を含むデータトラフィック量は爆発的に増加しており、データセンター関連需要は今後も大きな伸びが予想される。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)への取組みの巧拙は、企業にとっては将来の競争力にも影響し、人々の行動様式だけでなく働き方にも変革が求められている。カーボンニュートラルへの世界的な再脚光は、電気自動車へのシフトを加速させ、将来の自動運転Level4/5実用化とも相まって、大きな技術革新が期待されている。

 WSTSの昨年12月の発表によると、2020年の世界半導体市場成長率は5.1%増と見込まれる。2019年の価格下落により落ち込んだメモリーは2020年12.2%増、2021年13.3%増と成長軌道に回帰する。2021年は半導体全体で8.4%増となり、2018年の最高記録を更新する見込みとなっている。

 設備投資については、2019年から続くロジック・ファウンドリーの積極投資が2020年もそのまま高水準で継続され、市場の地域としては中国の存在感が高まった。2021年はデータセンター需要のさらなる増加に向けて、NANDフラッシュ・DRAMともにメモリー投資が復調する見通し。
短期的には米中摩擦による様々な規制の発動、大手ロジックメーカーの微細化後倒しといった不透明感は残るが、中長期的な成長見通しは変わらないと見る。

 半導体製造装置について2020年度の日本製装置販売高は、COVID-19拡大の影響により民生電子機器や車載関連の生産は落ち込んだが、データトラフィック量の急増によりデータセンター需要は力強く、5G通信の世界的な普及に向けた投資も順調に進んでいるため、前年度比12.4%増の2兆3300億円と予測した。2021年度もファウンドリーの投資水準は維持され、さらにメモリーの投資復活が上乗せされるため、7.3%増の2兆5000億円、2022年度は5.2%増の2兆6300億円と予測した。

 FPD産業は、COVID-19感染拡大の影響でPC・タブレット・モニターに使われるITパネルが品薄となり稼働率が急上昇。パネル価格も上昇し、大手パネルメーカーの営業利益率は、2020年1Q(1~3月)を底に回復傾向となっている。元々は韓国を中心に、既存のTV用LCDラインを停止し、新技術を用いたパネルへライン転換する計画であったが、後倒しとなっている。

 FPD製造装置の日本製装置販売高については、海外渡航制限の長期化により装置の現地立上げ調整が困難となった影響を精査し、2020年度は11.7%減の4200億円を予測した。2021年度はG10.5液晶ディスプレイ(LCD)投資の一巡を考慮して4.8%減の4000億円、2022年度は新技術を盛り込んだ投資の復活を期待し7.5%増の4300億円と予測した。

 2022年度の日本製装置販売高はつまり、半導体製造装置が2兆6300億円、FPD製造装置が4300億円で、全体で6.3%増の3兆600億円と予測。3兆円超えはSEAJが統計を開始して以来初となる。