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フェローテックマテリアルテクノロジーズ、石英製品、シリコンパーツでユーザーニーズを先取り

 石英製品やシリコンパーツはともに半導体の製造工程に欠かせない製品で、フェローテックホールディングスの2022年3月期までの中期戦略製品に位置付けられている。

 石英製品は半導体製造の際の高温作業に耐え、半導体を活性ガスとの化学変化から守る高純度のシリカガラス製品で、シリコンパーツは、高純度なポリシリコン材料で構成され微細化高温プロセス向けや真空エッチング装置向けなどで採用されている。

 ここでは、石英製品およびシリコンパーツの技術や特徴、半導体製造装置での各種ニーズとそれらに対応する技術や取組み、今後の展開について、フェローテックホールディングス傘下のフェローテックマテリアルテクノロジーズ 営業本部 アカウント営業部門 第2グループ長 大谷 淳司 氏と営業本部 アカウント営業部門 第1グループ長 石月 寿宏 氏 に話を聞いた。

 

◆製品の特徴と適用例

石英製品の特徴と適用例

大谷 半導体製造プロセスでは高熱処理や化学処理が頻繁に行われる。高純度(純度:99.99%)を誇る石英ガラスは、熱に強く、薬品に侵されにくいという特性があることから、半導体製造工程での高温作業に耐え、活性ガスとの化学変化を起こさない石英製品が活躍している。

 石英製品は火加工品と機械加工品(切削加工品)に大別され、エッチング装置の部品、CVD(化学気相成長)拡散炉中のウェハボート(図1)や炉心管、洗浄槽などの治具、消耗品として用いられる。配線の微細化や高純度化の進む半導体製造プロセスにおいて重要な役割を担っている。

 石英製品は中国杭州工場および東台工場で量産を手掛け、国内では2019年に山形工場を設立、少量~中量の試作評価・製造の拠点として稼働している。いずれも技術レベル・品質レベルともに同等の製品を提供できるため、ワールドワイドに展開している。
石英製品は世界市場1300億円のうち市場シェア15%を獲得、生産体制も拡充し業界2~3位の位置にある。
 

大谷氏
大谷 氏

 

図1 石英製品:ウェハボート
図1 石英製品:ウェハボート

 

シリコンパーツの特徴と適用

石月 シリコンパーツでは、シリコン同士を接合する独自技術「SiFusion」に強みがある。シリコンウェハと同じ熱膨張係数・熱伝導率を有する高純度ポリシリコン材料で構成されるSiFusion製品(図2)は、拡散炉・CVD炉・酸化炉などの微細化高温プロセス向けシリコンボートに採用されている。

 シリコンパーツのもう一つの主要な用途としては、真空エッチング装置向けパーツがある。他社がシリコンインゴットを購入してパーツを生産するのに対して、当社は単結晶インゴット引上げ技術・炉を保有しており、川上から川下までの一貫生産を実現している。中国銀川工場でインゴット引上げを、中国杭州第二工場で加工を手掛けており、低コストで高純度のシリコンパーツは、日本の半導体製造装置メーカーのOEM製品となっているほか、米国の半導体製造装置メーカーでも検討が進んでいる。SiFusionの世界市場10億円のうち市場シェア90%(シリコンパーツの世界市場400億円のうち市場シェア5%)を獲得、今なお市場開拓が進展している。

石月 氏 
石月 氏 

 

図2 シリコンパーツ:インジェクター
図2 シリコンパーツ:インジェクター

 

◆半導体製造プロセスにおけるニーズと取組み

石英製品における取組み

大谷 半導体製造プロセスにおける微細化の進展とともに、石英製品においても加工精度の公差が±0.1mm、さらには±0.01mmと厳しさを増してきている。特に人が組立てを行う火加工品(図3)では、火炎による熱変形もあって対応が難しく、熱変形の解析なども踏まえつつ組立て用治具の工夫・改良などを実施して対応している。ますます進む高精度化の要求に対して、できる工程から自動化を進めるべく検討を始めている。

 一方、新設した山形工場は主に炉メーカーなど日本の顧客を対象に開発品を手掛けている。開発品は短納期対応が要求されるため、拠点新設で技術者同行による打ち合わせの強化や開発品の短納期化が可能になっている。石英製品は前処理工程で使われることが多く、直近で新規設備投資の需要が見込まれることからも、石英製品の試作評価の迅速化に引き続き努めたい。
 

図3 火加工のようす
図3 火加工のようす

 

シリコンパーツにおける取組み


石月 3D-NANDフラッシュメモリーの製作ではエッチングとCVDを何回も繰り返して、積層して電極を形成していくが、3D-NANDフラッシュメモリーの需要増加に伴いエッチング装置の需要が急伸している。一方で微細化の進展からは、チャンバー内のコンタミネーション、特にメタルコンタミをなくしたいとのニーズがあり、従来の酸化アルミニウムや酸化イットリウム等を部材としたパーツから、当社の高純度なシリコンパーツへの切り替えが進んできている。

 また、ウェハの大口径化に伴いシリコンパーツの大口径化への需要が高まってきているが、これに対しても大型単結晶インゴット引上げ炉(図4参照)を保有していることから、550mmまでの大口径化に対応できる。

 さらに、省エネ化を目的とするパワーデバイスの増加などや、ウェハ表面層の結晶欠陥を低減したいとの要求から、炉の高温化が進んでいる。これに対してSiFusionポリシリコンボートは炉の高温化に耐えつつ、パーティクルと結晶欠陥スリップの低減に寄与できる。

 シリコンパーツの生産面においては石英製品と同様に、加工精度向上への要求に対応して、装置間の搬送の自動化や三次元測定の自動化などの取組みを進めている。
 

図4 単結晶インゴット引上げ炉
図4 単結晶インゴット引上げ炉

 

◆今後の展開

大谷 前述のとおり火加工品は人の手に頼るところが大きいことから、上級の職人(職能により7段階に分類)を増やす取組みを強化するとともに、職人による技術の継承を進め、技術力の平準化を図っていく。一方で、徐々にではあるが、高精度品を同等の品質で加工し組み立てる自動化システムを構築していきたい。

石月 顧客のニーズを汲み取って商品の企画・開発を行い、提供していく「マーケットイン」の取組みを引き続き重視していく。顧客である製造装置メーカーの半導体製造プロセスでの装置採用認定(POR:Process of Record)獲得につながるよう、試作品の短納期対応を進め、装置メーカーの開発アウトプットの短縮に貢献したい。

大谷 当社は本年7月、フェローテックセラミックスとアドマップ、さらにはフェローテックが合併し、石英製品、シリコンパーツだけでなく、セラミックス製品、SiCパーツ(CVD-SiC)、真空シールなど半導体製造プロセスに不可欠な製品群を1社で供給できる体制となった。部門間での情報共有を強化しつつ、シナジー効果を高めていきたい。現時点では、それぞれの部門で同じユーザーに製品を提案、供給している例が多いため、営業各員がすべての製品を提案できるよう製品知識を深めつつ情報共有を徹底して、顧客の開発期間短縮といったメリットの拡大につなげていきたい。
 

■フェローテックホールディングスの半導体製造関連事業

 

◆フェローテックマテリアルテクノロジーズの石英製品