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第2回ナノセルロース展(Nanocellulose Exhibition 2017)が開催

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 第2回ナノセルロース展(Nanocellulose Exhibition 2017)が12月7日~9日、東京都江東区の東京ビッグサイトで、環境とエネルギーの未来展「エコプロ2017」のテーマゾーン・企画として開催された。
17122101CNF

 ナノセルロース展は、植物由来で夢の新素材として注目される「セルロースナノファイバー(CNF)」と「セルロースナノクリスタル(CNC)」の専門展示会。CNFは木材から得られる木材繊維(バルブ)を高度に微細化したバイオマス素材。第2回目の開催となる今回は、以下のとおり各社のCNF関連製品技術が紹介された。

 日本製紙は「cellenpia」のブランドで、パルプにTEMPO触媒を作用させセルロースの1級水酸基(6位)だけを選択的に酸化して機械的に解繊(東京大学・磯貝 明教授らが開発した「TEMPO触媒酸化法」)した「TEMPO酸化CNF」と、セルロースの1級、2級水酸基(2、3、6位)を任意にカルボキシメチル(CM)化して機械的に解繊した「CM化CNF」の二つのCNFを提供できることをアピール。CNFを原料に作製したシートやフィルムでは透明性や空隙率、比表面積などを制御することや、CNFを紙やフィルムなどにコーティングすることでフィルター部材や高ガスバリア包装部材などに適用できること、CNFは水中に分散すると増粘やゲル化、懸濁安定性、乳化安定性などを発現、食品や医薬品、化粧品などの機能性添加剤として適用できることを示した。さらに、京都大学・矢野浩之教授らが開発した「パルプ直接混錬法(京都プロセス)」を用いて軽量化と高強度化を図ったCNF強化樹脂製の自動車向け部材などを展示した。
日本製紙 CNF強化樹脂製の自動車向け部材日本製紙 CNF強化樹脂製の自動車向け部材

 王子ホールディングスは、CNF表面にイオン性官能基であるリン酸基を導入し、CNF同士の静電反発性を高めることでナノ化を容易にする「リン酸エステル化法」によって、三形態のCNFを提供できることを提示。CNFスラリー増粘剤「アウロ・ヴィスコ」は、優れた透明性を持ち、市販の天然増粘剤に比べ粘度が10~100倍と高いため少ない添加量で十分な増粘効果が発揮できると同時に、攪拌によって容易にさらさらになる高チキソ性を有する。また、多様な有機溶剤に分散可能なCNFパウダーは、高透明で高粘度のため、塗料やインキ、各種有機溶剤合成などに応用できるとした。さらにCNF透明シート「アウロ・ヴェール」は、木質原料ながらガラス並みの高い透明度と寸法安定性、高強度、高弾性率、高いフレキシブル性を実現。自由に成形加工できる「アウロ・ヴェール3D」や耐水性を有し高湿環境下で使用できる「アウロ・ヴェールWP」などを参考出品した。
王子ホールディングス「アウロ・ヴィスコ」王子ホールディングス「アウロ・ヴィスコ」

 北越紀州製紙グループは、CNFを多孔質材料とする独自技術によって、0.1%程度のごく少量のCNFで超微粒子を補修でき省エネ効果も期待できる「空気清浄用エアフィルタ濾材」や、触媒担持体や断熱材などに利用できるエアロゲル「低密度多孔質体」を紹介。バルカナイズドファイバーの製造で構築した低エネルギーで簡素化されたプロセスによって、薬品で得たCNFゲルでセルロースを強化したCNF強化材料では、CNFが三次元的に絡まり合った、ほぼセルロースからなるシート状、ブロック状の強化材料が得られることや、セルロース同士を複合化させているため界面のない単一材料に近い構造体となり強度特性に優れていることなどをアピールした。
北越紀州製紙グループ CNFゲルでセルロースを強化したCNF強化材料北越紀州製紙グループ CNFゲルでセルロースを強化したCNF強化材料

 凸版印刷は、TEMPO酸化CNF存在下で銀を還元析出しCNFによって銀ナノ粒子の異方成長を促進して得た、銀ナノプレート/CNF複合体を紹介した。この銀ナノプレート/CNF複合体は複合体中の銀ナノプレートのアスペクト比(平面径/厚み)に依存して可視~近赤外線領域の特定の波長の光を吸収・散乱する特性や光熱変換特性、抗菌性に加え、CNF由来の寸法安定性、酸素バリア性、帯電防止性など様々な特性を有するため、両者の特性を活かした酸素バリア性と光線カット性の包装材料や、寸法安定性の高い光学フィルター、繊維製品への抗菌性と意匠性の付与といった応用例を紹介。分散液やペースト状濃縮物、粉体状、フィルムといった形態でサンプルを提供できることをアピールした。
凸版印刷 銀ナノプレート/CNF複合体凸版印刷 銀ナノプレート/CNF複合体

 三菱鉛筆は第一工業製薬と共同出展、三菱鉛筆が筆記具開発で培った超微粒子顔料分散技術の応用により、極めて細かな繊維であるCNFをインク内に均一に配合し、かつ安定状態を保つ技術を確立し、世界で初めてボールペンインクでの実用化に至った「ユニボール シグノ」を展示。従来のゲルインクボールペンよりも筆記時のインク粘度を約50%低減することに成功したことを謳った。第一工業製薬は、TEMPO触媒酸化に関する研究成果とCMCの製造販売を背景にしたセルロース応用技術を活用することで開発したTEMPO酸化CNF(TOCNF)からなる増粘剤「レオクリスタ」を紹介した。同増粘剤は、「ユニボール シグノ」のインクへの添加剤として採用されている。
第一工業製薬 TEMPO酸化CNFからなる増粘剤「レオクリスタ」第一工業製薬 TEMPO酸化CNFからなる増粘剤「レオクリスタ」

 環境省 ナノセルロース・ヴィークル(NCV)プロジェクトのブースでは、京都大学(代表事業者)をはじめとした大学、研究機関、企業等、計21機関で構成されるサプライチェーンの一気通貫体制のコンソーシアムを形成して、セルロースナノファイバー(CNF)を活用した材料、部材、自動車部品等の製品開発と各段階の性能評価、CO2削減効果の評価・検証に取り組んでいることを紹介。剛性と耐衝撃性を両立したCNF強化ドアトリム基材や、CNFを10%添加した不織布をブロー成形で一体成形し高剛性化したデッキボード、CNF/PA6の発泡部材として軽量・高剛性・耐熱性を持たせたエンジンカバーなどを展示した。同コンソーシアムでは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強度を持つというCNFを活用して、平成31年度に自動車で10%程度の軽量化を目標としている。
環境省 ナノセルロース・ヴィークル(NCV)プロジェクトのブース環境省 ナノセルロース・ヴィークル(NCV)プロジェクトのブース

 今回は展示会との併催で、隣接のステージゾーンでCNF・CNCの最新情報・動向を紹介するセミナー・シンポジウムが実施、それぞれCNF研究の第一人者である、京都大学生存圏研究所生物機能材料分野 教授 矢野 浩之による「パルプ直接混練法"京都プロセス"への道」や、東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 磯貝 明氏による「セルロースナノファイバーに期待される特性と課題解決への対応」などの講演がなされた。