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IPF Japan 2017開催、電動射出成形機を支える機械要素・潤滑・表面改質技術

 IPF Japan 2017 (国際プラスチックフェア)が10月24日~10月28日、千葉市美浜区の幕張メッセで開催された。プラスチック製品を製造する射出成形機のほか、射出成形機の重要な要素技術であるボールねじやスクリュー部品、潤滑システムなどが多数披露された。
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 現場での構築が急がれるIoT対応などの流れを受け、前回にも増して電動式射出成形機の出展が目立つ中で、住友重機械工業は同社の電動式射出成形機をベースとしたIoT(Internet of Things)とM2M(Machine-to-Machine)の構築を提唱した。IoT構築では、射出成形機の故障予防によって突発停止を防止するサービスネットワーク「Tomenai Service」や、世界各地の成形機の生産品質を一括管理するシステム「i-Connect」、製造実行システム「MES」などを紹介した。また、M2M構築では、成形機と取出機、温調機などの周辺機器、型内圧・冷却流量監視システムなど、様々な機器とリンクし効率的で快適な生産を実現できることを謳った。
住友重機械工業のブース住友重機械工業のブース

 また、ファナックのブースでは「ロボショットシリーズ」最大の型締力450tの電動式射出成形機「α-S450iA」を披露した。クラス最大のタイバー間隔、最大型厚によって金型の大型化に対応するほか、成形セルのネットワーク化によって生産情報・品質情報の管理や画面のリモート表示・操作、周辺機器通信による設定値の一括管理などを可能にする。同成形機の高信頼性のキー技術としては、「長寿命ボールねじ」の採用などを掲げた。また、予防保全画面によって、モータ温度や給脂部温度をモニタリングすることで、機械が壊れる前に予防保全につなげていくことで高い稼働率を実現できることをアピールした。
ファナック「α-S450iA」ファナック「α-S450iA」

 こうした射出成形機の動きを受けて、射出成形機向けボールねじで6割以上のシェアを持つ日本精工(NSK)では、電動射出成形機の適用領域拡大と耐久性向上に寄与すべく、独自の高耐久性技術「TF(タフ)化技術」をボールねじ材料に採用し耐荷重性能を従来比1.2倍とし、従来比2.2倍の長寿命化を実現した高負荷駆動用ボールねじ「S-HTFシリーズ」を展示した。同長寿命ボールねじは、高信頼性のキー技術と謳うファナックを含む国内大手5社の出展成形機に採用されているという。そのほか、振動の周波数と軸受運転条件に基づき軸受の稼働状態を自動判定する高機能振動診断器「Bearing Doctor BD-2型」を用いて、ボールねじの損傷状態の変化を診断することで予防保全につなげ、射出成形機の安定稼働に貢献する取組みなどを紹介した。
日本精工「S-HTFシリーズ」日本精工「S-HTFシリーズ」

 リューベでは、ICチップを装着することで残量管理や異常の早期発見などのサービス活動を可能にしつつ環境に配慮した再利用型カートリッジ「RECOG」や、給脂量半減で優れた潤滑性能を実現でき50万ショット時でも給脂に伴う機械周りの汚れを従来の1/10以下に低減し作業環境をクリーンに保てる新グリース、ちょう度No.0~1の圧送性に優れた集中給脂用のため適時・適量給脂を可能にすることで安全・確実に潤滑効果が得られるNSF H1認証取得の成形機械用純正食品グリース「LFL180-H1」など、電動射出成形機を停めないための純正グリース・カートリッジなどを紹介した。さらに、適正な給脂がなされているかを検出し予防保全につなげる末端センサー「End Point Monitor」やLRA分析(リューベリアル油膜状態分析)など、機械を停めない予防保全のサービスと製品を提案した。
リューベ「RECOG」リューベ「RECOG」

 不二越は、来年1月発売予定のフッ素樹脂向け射出成形機用スクリュー部品「NPR-FX25」を披露した。同品は、特に自動車分野での電気自動車(EV)化や安全装備の普及に伴いリチウムイオン電池や車載半導体関連で需要が拡大しているフッ素樹脂部品の射出成形に対応。従来の耐食ニッケル合金の耐食性を維持しつつ、5倍の硬さと2倍の引張強度を確保する高強度耐食ニッケル合金を開発、同合金でスクリュー部品を長寿命化・高強度化することで、フッ素樹脂射出成形時の高圧充填が可能となり、複雑形状のフッ素樹脂部品の量産を実現する。
不二越「NPR-FX25」不二越「NPR-FX25」

 表面改質関連では、ナノコート・ティーエスが金型の離型性向上や型汚れ防止として窒化物セラミック薄膜に撥水処理を施した「セルテスN-S」を紹介。同被膜を被覆することで金型洗浄や除去作業などの保守頻度を減らすことができ、コスト低減と生産性向上を実現するという。これらの裏付けとして樹脂との摩擦係数、純水接触角などの数字を示したほか、実際のコーティングサンプルに水を吹き付けた場合の離型テストを実演するなど分かりやすい展示を行った。同被膜は、微細形状加工ニッケル金型やグリーン樹脂半導体モールド、LEDレンズモールドなどで実績があるという。
ナノコート・ティーエス「離型テストのようす」ナノコート・ティーエス「離型テストのようす」

 ニッチューは、射出成形機などの製造・販売を行う田端機械工業と共同で出展を行い、スクリューの樹脂クリーニングに適したブラスト装置の紹介を行った。同社が展示した直圧式ブラスト装置は、金型洗浄などで培ったノウハウを活かし、プラスチック製の研削材でスクリューを傷つけることなく固着した樹脂を短時間ではく離できる。ブラスト装置はスクリュー用に設計されており、手動で回転移動するタイプと自動で回転移動するタイプを選択することができる。これを田端機械工業が製造する炭化炉と組み合わせて「クリーンショット」としてシステム化。炭化炉では樹脂が固着したスクリューを微量酸素接触下で加熱処理し、樹脂を溶融・炭化させて、炭化炉底部に設けられた回収トレイに落とす。この工程で残った樹脂を前述のブラスト装置で除去する。
 ニッチューのブラスト装置と田端機械工業の炭化炉 ニッチューのブラスト装置と田端機械工業の炭化炉