メインコンテンツに移動
mstkouenkai

 

ダイセル・エボニック、燃料多様化対応の低溶出多層燃料チューブを提案

 ダイセル・エボニックは12月1日、東京・西新宿の本社で、CO2排出量低減につながる自動車の軽量化向け高機能ポリマーとして、独エボニック インダストリーズが開発した「新世代型低溶出多層燃料チューブ」を発表した。
燃料チューブ

 当日は、ダイセル・エボニックのアンドレ・ノッペ社長らが列席する中、独エボニックリソースエフィシエンシーの高機能ポリマー・ディレクターのオリビエ・ファージ氏が開発の背景から、開発された低溶出多層燃料チューブの構成や、従来燃料チューブとの性能比較などについて説明した。
オリビエ・ファージ氏(左)とアンドレ・ノッペ社長(右)オリビエ・ファージ氏(左)とアンドレ・ノッペ社長(右)

 燃料システム用途に樹脂チューブを使用する利点としては、ゴム配管や、金属とゴムのハイブリッド配管システムに比べ30~50%の軽量化が図れることや、ゴムホースと比較して占有容積が少なく狭いエンジンルームでの容積の自由度をアップするといった利点がある。このため、1989年に開発を開始して以来、エボニックの高機能ポリマーを用いた燃料チューブは高級車だけでなく量産車にも採用が進んできている。

 しかし近年、地球温暖化対策として、北米、欧州を中心に置き換えが進んできているバイオエタノールを約10%直接混合した含アルコール燃料「E10」を使用すると、従来のガソリン配管では燃料に接触する内壁から溶出物が溶け出すことがあった。近年の内燃機関の効率を上げるために燃料を直接シリンダに噴射する「直噴エンジン」では、こうした燃料中に溶出した成分が、燃料噴射装置の小口径ノズルを目詰まりさせる原因となる場合がある。

 こうした状況から、自動車業界では溶出物を大幅に低減できる新しい燃料チューブの材料への要求が高まってきていた。

 こうしたニーズに対しエボニックでは、ベスタミド®(ポリアミド(PA)612)を最内層に備えた「MLT 4800」など、低溶出の次世代多層チューブ(MLT)3種を開発した。

 金属製コネクタが端部に溶接された樹脂製燃料ホースでは、高速で流動する燃料と樹脂チューブ内壁が接触して摩擦により静電気が発生、良導体である金属製コネクタの存在によってスパークを起こし、火災やラジオノイズなどの静電気障害を発生する恐れがある。そのため、燃料チューブの最内層には静電気を常に逃す工夫が必要となる。

 今回開発された5層からなる低溶出のMLT3種に共通する材料としては、最外層にベスタミド®(PA12)を、燃料の浸透を防ぐ中間のバリヤー層にはエチレンビニルアルコール共重合体を使用しているが、上述の金属コネクタ付き燃料チューブに対応したプレミアムタイプの低溶出チューブ「MLT 7440」では、燃料と接触する最内層のバリヤー層には低溶出とともに帯電防止の機能を持たせるエチレン・四フッ化エチレン系共重合体(EFEP)を使用した。

 また、パフォーマンスタイプの「MLT 4800」では最内層に、実績のある「MLT 4300」で使用しているPA6の代わりに、自動車メーカーの要求に適合するように新たに開発された低溶出タイプのベスタミド®(PA612脂肪族)を採用、ハイパフォーマンスタイプの「MLT 4900」では最内層にベスタミド®(PA612半芳香族)を採用。いずれも、その外側に低溶出のベスタミド®PAベースの接着層を設けた。機械的特性と耐薬品性、透過性は、現在欧州で最もよく使われているMLT 4300と同等レベルを確保している。

 エボニックでは、欧州最大手の自動車メーカーやTier1自動車部品メーカーと共同で、ガソリン溶解性および不溶解性の抽出物の溶出を測定する試験法や試験装置を開発。溶解性溶出の比較では、開発された低溶出MLTは実績のあるMLT 4300の溶出量に対し約1/8に低減、不溶解性溶出の比較では、MLT 4800はMLT 4300の溶出量の約1/2に低減している、

 すでに帯電防止のMLT 7440が量産車での使用が開始されているほか、MLT 4800およびMLT 4900が最終承認段階に突入している。

 日本国内で低溶出の多層チューブ(MLT)を展開していくダイセル・エボニックでは、チューブを構成するポリアミド材料ベスタミド®を提供していくことになるが、独エボニックと同様に低溶出MLTのデザインを自動車メーカーやTier1の部品メーカーなどに提案、チューブメーカーの製品開発の期間短縮に貢献することで、燃料多様化に伴う問題の解決とCO2排出量の低減につなげていく考えだ。