ミネベアは、ひずみゲージを応用した計測機器を使い、千葉大学大学院医学研究院および千葉大学医学部附属病院、日本IBMと共同で、生体情報モニタリングシステムの開発を視野に実証研究を行った。ミネベアは、本実証研究の結果をもとに、一年以内の製品化を目指す。
この生体情報とは、ベッド上の人の体重、体動および呼吸状態をモニタリングするもととなる①呼吸の有無やその回数推定②呼吸1回あたりの換気量(呼吸の深さ)③呼吸のパターンを指す。事前の実証における生体情報の分析では、日本IBM東京基礎研究所の高度な機械学習技術を活用している。
共同開発者の千葉大学大学院医学研究院麻酔科学の磯野史朗教授は、「ベッド上の呼吸状態は、医療や介護の現場において患者や被介護者の身体状態を見守るため重要な情報で、睡眠時呼吸障害や呼吸不全、心不全などの疾患に伴う症状把握や治療上投与された麻酔薬、鎮痛薬、などの副作用による呼吸抑制症状の把握に非常に有用。特に注意が必要と考えられる場合は体にセンサーを付けモニターするが、入院患者の90%以上では数時間に一回程度のチェックのみで、その間に急変ということも珍しくない。これらの情報を非侵襲で連続的に観察できる本システムは、多くの人命を救う可能性がある」と解説している。
同システムの最大の特徴は、非侵襲、非接触でリアルタイムに生体情報を観察することが可能な点。このため被験者は、モニター装着による活動制限、不快感や違和感によって生ずる不眠などから解放され、快適な入院生活を送りつつ、命を見守られているという安心感を得ることができる。
リアルタイムで定量化したデータが、医療関係者へ情報提供されることは、看護記録(バイタル記録)へ呼吸状態の自動入力・表示や看護師へ呼吸状態悪化の自動送信を可能にする。これは、早期発見・早期治療による医療の安全性を高めるばかりでなく、看護師の夜間患者チェックの回数を減らすことで、看護師の仕事量が軽減され、患者の睡眠の質も改善すると考えられる。
今回の共同研究では、ベッドへ後付け可能な荷重センサーによって、体重のみならず、より小さな体動、さらに呼吸の回数や深さ等の測定に取り組み、成果が見られた。体動と呼吸等の分析で、睡眠・覚醒の区別が可能となり、不眠や夜間認知機能障害などへの早期対応と治療・転倒転落事故の予防も期待できる。従って、これらの生体情報は、不幸にして医療事故が発生した場合にも、詳細な原因究明のための重要な手がかりとなり、将来の医療事故防止に役立つという。
今後、千葉大学医学部附属病院において磯野教授監修のもと、医療現場で臨床研究を実施し、2016年度中の製品化を目指す。