第201回 表面改質展2015開催、各種表面改質技術や試験・評価機器が展示される
「表面改質展2015」、「難加工技術展2015」、「VACUUM2015 真空展」が9月8日~10日の三日間、横浜市西区のパシフィコ横浜で開催、約16000人が来場した。主催は表面改質展と難加工技術展が日刊工業新聞社、真空展が日本真空工業会と日本真空学会。表面改質展では、熱処理やドライコーティング、めっきの受託加工の紹介や、関連する装置の展示が行われたほか、真空展においても真空成膜技術やスパッタリング装置などの出展が見られた。ここでは、表面改質展の展示内容を中心に、本サイトに関連の深い製品・技術を紹介する。
装置関連では、IHIハウザーテクノコーティングが、現在注力している金型・工具向けの高速サイクルコーティングに対応するバッチ式のPVDコーティング装置「Flexicoat850」から、装飾用途向けで三次元形状の製品にPVDおよびPACVDコーティングをインラインで成膜できるシステム「Metalliner」を紹介した。さらに次世代のトライボ用途向けとして2014年に開発した、耐摩耗・低摩擦のPVDコーティングを3次元形状部品に成膜できるインラインシステム「Triboliner」を紹介、バッチ式のようにワークを回転させることなく小型の三次元形状部品から大型の部品までをインラインで大量に処理でき、PVD処理の低コスト化が図れることを強調した。
島津製作所は、非球面ガラスレンズ金型の離形膜をメインアプリケーションとしたDLC成膜装置「DLC FADシリーズ」を紹介。この装置はフィルタードアーク蒸着(Filtered Arc Deposition:FAD)法を利用することで、スパッタやイオンプレーティング法に比べてSP3結合比率が高く、高硬度、高密度で表面平滑性と耐摩耗性に優れるta-C(Tetrahedral Amorphous Carbon)膜のコーティングが可能だという。同シリーズは、同社が独自に開発した開放型FADガンソースを採用し、FAD法の課題とされるドロップレットの低減やメンテナンス性の向上を実現した。
コーティングの受託加工では、岩谷マテリアルが非粘着・耐摩耗性に優れた「IMDコーティング」を紹介。この技術は、鉄やアルミ等の金属基材およびCFRP等に溶射を施した後、クロム系のコーティング剤を含浸させ被膜を形成する。被膜厚さは150~200μm、硬さはHV800程度。離形性が良好なため、フィルムや樹脂、不織布などの比較的柔らかい素材を成形する産業機械のロールにおいて適用されることが多いという。
清水電設工業は、潤滑性や耐熱性向上に優れたPVDコーティング「ZERO-1コーティング」を紹介。プレス金型や抜き金型など、過酷な状況下で使用される金型に対して優れた耐摩耗性で長寿命化を実現する。硬度はHV3500で、耐熱性は1100℃を実現しており、焼付きの原因となる冷間鍛造での摩擦熱による酸化や温間鍛造に対応しているという。さらに、応力緩和の技術により高密着性と厚膜化を両立。これにより耐摩耗性を向上させるとともに弾性変形の抑制効果を上げることが可能となった。また、オーエスジーコーティングサービスは、ドライコーティングを施した各種切削工具のサンプルを展示。航空機の軽量化を図る材料として採用が進むCFRPなど難加工材の高効率な加工を実現する高硬度・長寿命のダイヤモンドコーティングを中心に紹介した。
熱処理の受託加工では、大阪で真空熱処理を中心に行っている八田工業が出展し、同社が新たに展開しているプラズマ窒化処理「アクティブスクリーンプラズマ窒化(ASPN)」を紹介した。ASPNは、通常のプラズマ窒化が処理材表面でグロー放電を発生させるのに対し、炉壁とスクリーンの間でグロー放電を発生させるため、従来のプラズマ窒化の欠点である異常放電、エッジ効果などによる窒化層のムラが回避できる。現在、エンジン系部品や伝導装置、工作機械部品、金型・工具等に適用されており、今後も実績を積み上げることで、さらなる受注拡大を期待しているという。
表面試験・評価機器では、レスカがナノレベルの薄膜の密着性を定量的に評価するマイクロスクラッチ試験機「CSR5000」の実機を展示。同品は、1μm以下のサブミクロンの薄膜の評価に主眼を置いた装置で、JIS R 3255(ガラスを基板とした薄膜の付着性試験方法)に準拠した測定が行える。従来のスクラッチ試験機では、膜表面を引っかいた時の破壊点を摩擦力の変化や音響信号で検出したが、膜厚がミクロン以下の薄膜になると破壊の検出が困難となるという。この問題を解決するため、同試験機では薄膜の破壊検出に特化したマイクロスクラッチ法に加え、同社独自の特許技術による高感度破壊検出機構を備え、膜厚が1μm以下の薄膜の密着性を正確に測定できる。液晶ディスプレイの透明電極膜や光学薄膜、DLC膜、磁気ディスクの保護薄膜等の密着性評価に適した試験機として来場者にPRを行った。
一方、展示とともに出展社によるワークショップが行われた。表面改質関連では、9月8日に科学技術交流財団「微粒子ピーニングによる表面改質」、9日にメタルヒート「メタルヒートの真空熱処理技術の紹介」、オーエスジーコーティングサービス「コーティング事例の紹介」、岩谷マテリアル「IMD処理~円滑な表面でも抜群の離形性」、八田工業「ASPNとその応用例」、富士高周波工業「レーザ焼入れの特徴とその活用事例」、旭プレシジョン「めっきを利用した機能性付与技術の紹介」、IHIハウザーテクノコーティング「IHIハウザーのPVDコーティング技術」、メンテナンス・リサーチ「パルスI-PVD技術開発状況」、10日に東京電子「医療デバイスの有機成膜に最適なパルス電源」、キヤノンアネルバ「高密度実装用大型プリント基板対応PVD装置」、アルバック「CMOSへ搭載可能な圧電MEMS用スパッタ技術」、オプトラン「真空薄膜製造装置の新技術実績進展」が行われ、数多くの来場者が参加した。