NTNは、操舵システムの電子制御を可能にするステアバイワイヤ操舵システムの技術を応用した「後輪独立転舵システム」の構造を改良することで、より優れた応答性能と小型軽量化を実現した。
自動車の後輪転舵は、高速走行時における車両安定や、中・低速走行時のコーナリング性能を向上させる機構で、後輪転舵の駆動には、電動アクチュエータが用いられる。一つのアクチュエータで転舵する左右一体型は左右トー角独立制御の機能がなく、左右それぞれにアクチュエータを配置して転舵を行う左右独立型は、ばね下重量の増加による走行性能の低下が課題だった。
同社の後輪独立転舵システムは、左右一体型でありながら左右トー角独立制御が可能で、アクチュエータを車両側に設置することで、ばね下重量の増加もない。さらに、今回の開発品はタイヤの最大転舵速度を10度/秒(従来品:6度/秒)に向上させ、高速走行時や緊急回避を必要とする場面などにおいて、車両挙動の応答性能を改善した。また、タイヤの最大転舵角を±2.5度と広い転舵領域を実現したことで、最小回転半径が小さくなり、駐車時などの運転負荷軽減や将来の自動運転技術にも寄与することが期待される。
さらに、従来品と同等の剛性を維持しつつ、体積を約60%削減することで、質量も約30%の軽量化を達成し、車両への搭載性を向上させた。加えて、開発品は左右一体の駆動方式で車両側に設置するため、ばね下重量の増加がなく、乗り心地への影響もないという。
後輪独立転舵システム