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神戸大、体内で溶けてなくなる外科手術用クリップを開発

 神戸大学 工学研究科材料物性学研究分野と医学研究科肝胆膵外科分野は、医工連携研究により、外科手術に使用しても安全で、一定期間経過後には分解され体外へ排出される生体内分解性クリップを開発した。

 試作したクリップは生体必須元素を含むマグネシウム合金で構成されている。また、材料の内部結晶組織を改良することにより、クリップに必要とされる締結力や成形性を確保している。

 生体への安全性は動物実験により確認しており、第一には、マウスの皮下へ埋植試験を行い、1~12週にわたり経過観察した結果、分解にともなうガス発生量はほとんどないことおよび周辺細胞組織に炎症反応がないことから、為害性は極めて低いことを確認した。また、12週経過後の血液検査により、血中のマグネシウム濃度や肝機能を表す数値は正常範囲であることから、正常な代謝が行われており、生体安全性が高いことを確認した。一方、埋植したクリップは経時により均一に体積減少し、12週経過後に約半分まで減少することから、一年以内に分解され、体外に排出される可能性が高いことが分かった。

 第二には、ラットについて胆管、門脈、肝動脈、肝静脈を開発したクリップで閉鎖し、肝臓を部分切除した後に経過観察したところ、8週経過後も正常に活動しており、試作クリップの胆管および血管の閉鎖能力に問題はないことを確認している。また、マウス、ラットともにマイクロCTを用いた観察では、クリップが存在することによる画像の乱れは少なく、臓器の観察が可能であることから、医療現場から必要とされている機能を盛り込んだ新しい外科手術用クリップであることが確認できたという。

 現在、外科手術では、腸管の吻合や血管の止血、胆管の閉鎖にチタン製のクリップが用いられている。チタン製のクリップは患部の回復後も体内に残存し、CTやMRIによる患部周辺の精彩な撮影を阻害する要因となるため、手術後の画像診断に支障をきたしている。また、胆管内迷入などの合併症を引き起こす可能性も指摘されている。